メトロセブン・エイトライナー

葛西臨海公園~赤羽~田園調布

メトロセブン・エイトライナーは、環七と環八という環状道路の地下に鉄道を通そうという計画です。葛西臨海公園-亀有-赤羽-荻窪-田園調布の約60kmを結びます。

国土交通省では、両路線をあわせて「区部周辺部環状公共交通」という名称で呼んでいます。開業予定時期は未定です。

メトロセブン・エイトライナーの概要

メトロセブンとエイトライナーは、東京都心から約10km圏を走る環状鉄道計画です。メトロセブンが「環七」、エイトライナーが「環八」の地下を走り、両線は赤羽で接続します。導入空間の道路が異なるため「セブン」「エイト」と別の名称になっていますが、実質的に同一路線に近いと言えます。総距離は約60kmです。

メトロセブンは、葛西臨海公園(JR京葉線)-葛西(メトロ東西線)-一之江(都営新宿線)-東新小岩(JR総武線新駅)-青砥(京成本線)-亀有(JR常磐線)-六町(つくばエクスプレス)-西新井(東武伊勢崎線)-赤羽(JR東北線)を結びます。全長は約29kmです。

エイトライナーは、赤羽(JR東北線)-志村三丁目(都営三田線)-東武練馬(東武東上線)-平和台(メトロ有楽町線)-練馬春日町(都営大江戸線)-練馬高野台(西武池袋線)-井荻(西武新宿線)-荻窪(JR中央線)-高井戸(京王井の頭線)-八幡山(京王線)-千歳船橋(小田急線)-二子玉川(東急田園都市線)-等々力(東急大井町線)-田園調布(東急東横線)の約31kmです。

メトロセブン・エイトライナー
画像:エイトライナー促進協議会資料(2022年度)より

エイトライナーは、さらに蒲田を経て羽田空港に至るという構想もあります。田園調布-羽田空港間は、東急多摩川線、蒲蒲線(計画中)、京急空港線が担うことになりますが、それを含めれば、葛西臨海公園-羽田空港の総延長74kmという壮大な鉄道路線になります。


 

そもそもエイトライナーとメトロセブンは、それぞれの沿線自治体が推進する別の計画でしたが、1997年に両促進協議会が連携することを確認。「エイトライナー・メトロセブン合同促進大会」を開くなどして、協力して建設を推進しています。そのため、導入空間の道路名が違うだけで、実質的には一つの路線です。国土交通省の交通政策審議会答申第198号でも、両路線をまとめて「区部周辺部環状公共交通」と呼んでいます。

答申198号では「事業性に課題」としたうえで、「需要等も見極めつつ中量軌道等の導入や整備効果の高い区間の優先整備など整備方策について、検討が行われることを期待」としています。

これを受け、沿線自治体では、整備方法や需要予測について調査を継続しており、次期答申(30年ごろ)への記載を目指しています。

需要予測についていえば、2011、2012年度の調査では、エイトライナーの世田谷区、杉並区区間では1日80,000人を超える利用者が見込めるいっぽう、メトロセブンの多くの区間では40,000人以下にとどまっています。

メトロセブン、エイトライナー需要調査
画像:エイトライナー促進協議会資料(2017年度)より


 

当初は、東急多摩川線への乗り入れも考慮して普通鉄道の計画が基本でしたが、事業費が高額になりすぎることと、輸送力が過剰なため、より小規模な輸送機関(中量輸送機関)が検討の軸になっています。スマートリニアメトロのほか、モノレール、新交通システム、LRT、BRTが検討されています。

これまでの調査によりますと、事業費は地下鉄の場合で約1.1兆~1.5兆円。スマートリニアメトロで8,133~9,823億円、モノレールで1兆5,379~1兆8,475億円、新交通システムで1兆3,931~1兆6,816億円、LRTで3,110億円、BRTで1,230億円と概算されています。

メトロセブン、エイトライナーとも事業化はされておらず、開業予定時期などは未定です。2030年ごろに予定されている次期交通政策審議会答申へ向けて、調査が継続されています。

メトロセブン、エイトライナーの沿革

エイトライナー構想の出発点は、1986年5月に大田区、世田谷区、杉並区によって発表された「新交通システム」計画です。その後、練馬区、板橋区、北区も加わって、1993年に「エイトライナー構想」として結実しました。1994年には、エイトライナー促進協議会を設立しています。

メトロセブン構想の出発点はよくわかりませんが、同じく1994年に、足立区、葛飾区、江戸川区の3区により環七高速鉄道(メトロセブン)促進協議会が設立されました。

1997年に、メトロセブン、エイトライナーの両促進協議会は連携することを宣言。赤羽駅を結節点として周辺部環状鉄道として建設を推進していくことになりました。

2000年の運輸政策審議会答申第18号では、葛西臨海公園-赤羽-田園調布間が「今後整備について検討すべき路線」とされました。

2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として盛り込まれました。その後、沿線自治体で構成するメトロセブン促進協議会とエイトライナー促進協議会とが、合同で調査を継続しています。

メトロセブン、エイトライナーデータ

メトロセブン、エイトライナーデータ
営業構想事業者 未定
整備構想事業者 未定
路線名 未定
区間・駅 葛西臨海公園~赤羽(メトロセブン)
赤羽~田園調布(エイトライナー)
距離 約60km
想定輸送密度
総事業費 8,133~9,823億円(スマートリニアメトロ)
費用便益比
累積資金収支
種別 未定
種類 未定
軌間 未定
電化方式 未定
単線・複線 未定
開業予定時期 未定
備考 未定

※総事業費などはエイトライナー促進協議会資料(令和5年度)より

メトロセブン、エイトライナーの今後の見通し

答申第198号では、「事業性に課題があるため(中略)事業計画について十分な検討が行われることを期待」としたうえで、「需要等も見極めつつ中量軌道等の導入や整備効果の高い区間の優先整備など整備方策について、検討が行われることを期待」と記されました。

すぐに着工できるような条件が整っているような表現ではありませんが、優先的な整備区間を見極めて事業性を整えれば、着工の可能性はありそうです。

その優先整備区間についてですが、利用者数を重視するなら、田園調布駅-荻窪駅間が最も優勢で、次に荻窪駅-赤羽駅間、赤羽駅-亀有駅間、亀有駅-葛西臨海公園駅間という順序になります。要するに、田園調布から時計回りに整備していく形になります。

それでも採算面で課題があるため、答申でも指摘された「中量軌道等の導入」が検討されています。中量軌道等としては、リニアメトロのほか、モノレールや新交通システムも候補に挙がっています。

道路幅員の関係から、地上に建設する場合は用地買収が必要になる区間が多いです。そのため、用地買収の少ない地下系のほうが費用は安上がりで、基本的にはリニアメトロを軸に検討が進みそうです。

ただし、メトロセブン区間では、道路幅員が広いほか、海抜ゼロメートル区間を走るという点から、高架系も検討されそうです。調査ではLRTやBRTも候補に挙がっていますが、環七、環八という主要幹線であることから、道路用地を軌道や専用道にすることは難しいでしょう。

メトロセブン、エイトライナーが全区間同一のシステムで整備されるとも限りません。エイトライナーはリニアメトロ(地下鉄)、メトロセブンはモノレール、葛西近辺はLRTなどといった形での検討もあり得るでしょう。

何しろ約60kmにも及ぶ長大路線のため、着工から全面開業までの道のりは遠いものがあります。実現するにしても、数十年先を見据えたプロジェクトになることでしょう。