伯備線特急「やくも」の新型車両273系のデザインが発表されました。ブロンズ色の斬新なデザインが目を引きます。わかっている概要をまとめてみました。
基調色はブロンズ
「やくも」は、岡山~出雲市間を結ぶ特急列車です。1982年の伯備線電化以来、振り子式の381系車両を使用してきました。これを置き換えるため、2024年春以降に、新型車両として273系特急形直流電車を導入することが決まっています。
その273系の外観と内装のデザインについて、JR西日本が10月26日に概要を発表しました。
まずは外観です。前面形状は最近のJR西日本の特急車両のデザインにならっていますが、ブロンズの基調色が斬新です。大山の朝日や宍道湖の夕日、石州瓦の赤褐色などをイメージしたそうです。
「やくも」のシンボルマークはこれまで通り「雲」をイメージしていて、流れるような躍動感が特徴です。
「やくも」のフォントは、現行ヘッドマークのフォントを引き継いでいるようです。273系にはいわゆる「ヘッドマーク」はありませんが、デザインで先頭に掲出するわけです。
グリーン車
次に、内装です。
まず、グリーン車は横3列(2席+1席)のゆったりした仕様です。黄色を基調色として、明るく広い室内空間を演出しました。
座席には亀の甲羅をイメージした「積石亀甲」模様をあしらっています。山陰地方には亀にまつわる伝説や地名が多いことから、その文化・風土を取り入れたそうです。
普通車
普通車は、横4列の標準的なシートで、緑色を基調色としています。沿線の山々をイメージしたそうです。
座席のあしらいは「麻の葉」模様。古来から神事に用いられ、人を守る魔除けの意味もあるそうです。
普通車のシートピッチは1,040mm。381系の970mmより拡大し、居住性を改善します。
グループ席
273系で新たに設けられるのがグループ席です。横3列のボックスシート(2人用+4人用)で、向かい合える座席構成です。シートはフラットにすることができます。
座席間に大型テーブルを設置し、緩やかな仕切りを設けて適度なプライベート空間としています。窓も大きくとって、車窓を楽しみやすくしています。
公表された画像を見る限り、グループ席は1両の一部を充てるようです。グリーン車とグループ席をそれぞれ半室とするのかもしれません。
Wi-Fi、コンセント装備
客室内にはWi-Fiを装備し、全席コンセント付き。大型荷物スペースも設置しています。車椅子スペースを拡大し、多目的室も設置するなど、現行の381系と比べるとアコモデーションは飛躍的に改善します。
最近の標準装備となりつつある空気清浄機も搭載し、抗菌・抗ウイルス加工もおこないます。防犯カメラも設置して、車内セキュリティを向上します。
振り子式も進化
「やくも」の特徴である振り子式も進化します。
381系は「自然振り子式」という、カーブを通過する際に遠心力を利用して車体を傾ける仕組みを採用していました。カーブでの高速走行が可能になりますが、車体を傾ける際の揺れが大きいため、乗り物酔いを誘発しやすく、乗り心地には難がありました。
これに対し、273系では、「車上型の制御付自然振り子方式」を採用します。
車上型の制御付自然振り子式とは、路線の曲線データを車上の指令制御装置にあらかじめ入力しておき、列車の走行地点と連続的に照合しつつ、適切なタイミングで車体を傾けるものです。これにより、乗り心地が大きく改善する見通しです。
最高速度はこれまでと同じ120km/hです。新型振り子により所要時間が短縮されるかは不明ですが、振り子式を継承したことで、少なくともこれまでと同程度の所要時間は維持できそうです。
44両を導入
旅客から目に見えない部分としては、車体の衝突対策や機器の二重系化といった安全性向上も施します。VVVF制御装置やLED照明などによる省エネ仕様も備えます。
車体は近畿車両が製造します。デザイン監修は、株式会社イチバンセンと近畿車輛株式会社デザイン室です。
4両11編成の計44両を導入します。4両編成はいまの基本編成と変わりませんが、総車両数は現状の66両に比べ3分の2に減ることになります。地上設備も含めた投資額は約160億円を見込みます。
運行区間は岡山~出雲市間で、現行と変わりません。2024年春以降に、順次営業を開始する予定です。おおいに楽しみです。(鎌倉淳)