JR西日本が「WESTERポイント全線フリーきっぷ」を発売します。購入方法や、購入のためのポイントの貯め方について、裏技も含めて調べてみました。
全ポイント版と一部ポイント版
JR西日本はが発売するのは、「WESTERポイント全線フリーきっぷ(全ポイント)」「WESTERポイント全線フリーきっぷ(一部ポイント)」の2種類です。
いずれもJR西日本と智頭急行の全線が利用できるフリーきっぷで、JR西日本の新幹線や特急列車も普通車自由席が乗り放題です。普通車指定席も利用できます。
「WESTERポイント全線フリーきっぷ(全ポイント)」は3日間有効、「WESTERポイント全線フリーきっぷ(一部ポイント)」は1日間有効です。
購入には「WESTERポイント」が必要です。JR西日本インターネット予約「e5489」での限定発売です。
「WESTERポイント全線フリーきっぷ」の概要
「WESTERポイント全線フリーきっぷ」の概要は以下の通りです。
■「WESTERポイント全線フリーきっぷ(全ポイント)」
・発売期間:7月5日(金)~9月11日(水)
※利用開始日当日まで発売
・利用期間:7月20日(土)~9月13日(金)
※9月11日利用開始分まで発売
・有効期間:3日間
・価格:大人9,000ポイント・子ども4,500ポイント
・普通車指定席交付回数:制限なし
■「WESTERポイント全線フリーきっぷ(一部ポイント)」
・発売期間:7月5日(金)~9月10日(火)
※利用開始日3日前まで発売
・利用期間:7月20日(土)~9月13日(金)
※8/9(金)~18(日)は利用不可
・有効期間:1日間
・価格:大人1,000ポイント+14,000円・子ども1,000ポイント+7,000円
・普通車指定席交付回数:6回
※いずれも子どもは大人と同時の発売・利用のみ。
購入に使えるポイントですが、JR西日本の商品説明サイトによると、「全ポイント版」は「WESTERポイント(基本)」と記されています。「一部ポイント版」は、「WESTERポイント」とのみ記されています。
ただ、おそらくは、「一部ポイント版」も基本ポイントのみ利用可能とみられます。
青春18もびっくりの「神きっぷ」
「全ポイント版」は3日間有効で、必要ポイント数は9,000ポイント。1円1ポイントと換算すれば9,000円です。9,000円相当でJR西日本が新幹線を含めて3日間乗り放題となるわけです。
1日あたりなら3,000円相当で、青春18きっぷもびっくりの「神きっぷ」でしょう。「どれだけ乗ったらお得か」なんて計算するのも野暮な破格きっぷです。
「一部ポイント版」は1日間有効で、必要ポイント数は1,000ポイント。別途14,000円が必要です。つまり実質15,000円相当で、JR西日本が新幹線を含めて1日乗り放題です。
こちらもお得には違いありませんが、「神きっぷ」とまでは言えません。新大阪から広島へ往復すれば十分元が取れる、という程度です。
となると、利用者としては、「全ポイント版」が狙い目となりますが、9,000ポイントはかなりのハードルです。発売期間は7月5日から9月10日までなので、十分なポイントがない方は、今すぐポイントを貯めないと間に合いません。
9,000ポイントを貯めるのに必要なのは?
では、WESTERポイントを貯めるにはどうしたらいいのでしょうか。
WESTERポイントは、JR西日本グループ共通のポイントサービスです。IDを取得して、JR西日本のきっぷを購入したりすれば、ポイントが貯まります。基本的な積算率は1%、つまり、100円=1ポイントです。9,000ポイントを貯めるには、単純計算で90万円が必要です。
とはいえ、いまから夏休みに向けて、90万円を使ってポイントを貯めるのは困難でしょう。したがって、地道にポイントを貯めて「全ポイント版」を購入するのは、現実的ではありません。
「WESTERポイント」を貯めるには
現実的にポイントを貯めるには、J-WESTカードに入会して、カードによるポイントの積算を狙うことでしょう。現在はキャンペーンを実施中で、J-WESTカードに入会すれば、4,000ポイントが付与されます。
さらに3カ月目までに9万円以上を利用すれば4,000ポイントが付与されます。ただし、ポイント付与は11月なので間に合いません。となると、残りの5000ポイントのために、50万円を使う必要があり、これも難しいです。
なお、J-WESTカードは初年度年会費無料で、翌年度以降も年1度以上利用すれば年会費無料です。
ポイント制度は複雑で
J-WESTカードの場合、ポイント付与のタイミングは、「前月16日から当月15日に利用した金額に対して、当月の26日頃」とされています。
ゴールドカードなら、入会で6,000ポイントなので、あと3,000ポイントです。ただし、ゴールドカードは、審査に時間がかかることが多いです。
いずれにせよ、カードを申し込んでから使えるまでの時間や、ポイント付与のタイミングについて、筆者にはわかりかねる部分もあります。
また、ポイント制度や付与率、キャンペーンの適用条件は複雑で、エントリーの必要性など、いろんな落とし穴があります。とくに、 ポイントは「基本」と「チャージ専用」の2種類があり、キャンペーンでどちらが付与されるのかわかりにくいです。上記の申し込みをする場合も、ご自身でご確認のうえ、自己責任にてお願いします。
「ひょうご夏の体験デジタルパス」は使える?
9,000ポイントを貯める裏技として、ネットで話題になっているのが、「ひょうご夏の体験デジタルパス」の活用です。5,500円で兵庫県内のほか、京阪神エリアや北近畿が乗り放題になるというきっぷです。
このきっぷの特徴は、ICOCAを利用して乗車し、自由周遊区間内でいったん運賃を支払うものの、後でWESTERポイントで還元する、というしくみを取っていることです。この還元ポイントが「基本ポイント」なのです。
つまり、兵庫エリアでJR西日本に9,000円分乗車すれば、後日、WESTERポイント(基本)が9,000ポイント付与されます。付与日は翌月末ですので、パスを利用して、7月中に自由周遊区間(フリーエリア)のJR線を9,000円分乗車すれば、8月下旬から9月上旬に9,000ポイントを使用できます。実質負担はパスの5,500円と支払い済み運賃9,000円のみです。
大阪-城崎間の運賃が3,410円です。大阪-姫時間は1,520円です。つまり、「ひょうご夏の体験デジタルパス」に5,500円を支払って、城崎と姫路に普通・快速列車で往復旅行をすれば、そのポイントで「WESTERポイント全線フリーきっぷ(全ポイント)」が購入できるわけです。
14,500円で、3日間×2エリアの乗り放題
ややわかりにくいかもしれませんが、端的に書くと、5,500円で兵庫県内を乗り放題したら、さらに9,000円の実質負担で、JR西日本の新幹線・特急3日間乗り放題ができる、ということです。14,500円で、2エリア合計6日間の乗り放題です。
「ひょうご夏の体験デジタルパス」は兵庫県内のほか、大阪近郊区間や京都北部なども自由周遊区間に入ります。有効期間は3日間ありますので、京阪神エリアを3日間にわたり列車に乗り回っても9,000円を超えることは可能でしょう。
同様のチケットとして、「神戸・姫路夏の体験デジタルパス」もあります。こちらは、さらに安く、2日間3,300円です。
ただし、フリーエリアが主に大阪~姫路間に限られるので、9,000円分乗るには、ひたすら往復することになります。大阪~姫路は片道1,520円なので、3往復で9,000ポイントがたまります。
大阪~姫路間の場合、片道約1時間なので、3往復なら6時間、待ち時間を含めると7時間程度かかります。それだと苦行なので、「ひょうご夏の体験デジタルパス」のほうが、広いエリアで旅を楽しみながら貯めやすいと思います。
いずれにしろ、こうした「修行」をする旅行者も多数出てきそうです。したがって、「デジタルパス」のポイントが付与される8月下旬以降、9月上旬にかけて、「全線フリーきっぷ」を使った旅行者が西日本にあふれる可能性もあります。
なお、「ひょうご夏の体験デジタルパス」や「神戸・姫路夏の体験デジタルパス」を使った「WESTERポイント全線フリーきっぷ」購入方法は、ネットで流れていたアイデアを、筆者が整理したものですが、こちらも間違いや落とし穴があるかもしれません。またデジタルパスの付与ポイントがチャージ専用に変更される可能性もないとはいえません。
いずれにせよ、実行される場合、ご自身で最新の制度をお調べのうえ、ご自身の責任でご利用くださるようお願いします。
「和歌山満喫」はチャージ専用ポイント
似たきっぷに「和歌山満喫わくわくパス」がありますが、こちらはチャージ専用のポイント還元です。「和歌山」は「KANSAI MaaS」アプリ専用、「ひょうご」は「tabiwa by WESTER」専用で、使用アプリの違いが還元ポイントの違いになっているのかもしれません。
したがって、「和歌山満喫わくわくパス」で得られたポイントで「WESTERポイント全線フリーきっぷ(全ポイント)」は購入できません。
「神戸・姫路」は、両アプリに対応していますが、基本ポイントが貯まるのはtabiwa版だけです。
1,000ポイントを貯めるには
「一部ポイント版」に関しては、1,000ポイントと14,000円で購入できます。1,000ポイントを貯めるためには、10万円程度、JR西日本グループを利用する必要があります。
上記の通り、J-WESTカードに入会すれば、入会キャンペーンの4,000ポイントだけでまかなえます。
他のキャンペーンでも、たとえばWESTERアプリを新規ダウンロードしてログインすれば500ポイントを得られますし、さらにWESTERアプリから新幹線を予約すれば追加で200ポイントといったプログラムもあります。その他、さまざまなキャンペーンがありますので、その気になれば、1,000ポイントのハードルはそれほど高くはありません。
8月下旬から9月上旬は、ポイントを貯めた利用者が急増する恐れがありますので、早めに1,000ポイントを貯めて、8月中旬までに「WESTERポイント全線フリーきっぷ(一部ポイント)」で使ってしまうというのも、考え方としてはありでしょう。
JR西日本としては、とにかくWESTERポイントやアプリを普及させようという試みなのでしょう。利用者としてはチャンスなので、ぜひキャンペーンを活用しつつ、西日本の旅に出てみたいものです。(鎌倉淳)