ロシア・ウラジオストクが「自由港」になり、アライバルビザが登場する--。この情報が飛び込んできたのは、2015年秋のこと。2016年9月には、プーチン大統領が自ら極東を訪れ、ウラジオストクの自由港化を宣言しました。
それから半年。いまだにアライバルビザは登場していません。10月施行、1月開始、などとも報じられてきましたが、結局、2016年7月1日に実施が目標となっているようです。
空港と港での入国者が対象
アライバルビザは、飛行機で到着したときに、空港の入国審査時またはその直前に取得できる入国ビザのことを指します。2015年10月に施行されたウラジオストク自由港化法では、外国人に対し8日間有効のアライバルビザが設定されるとのことでした。
その実施がいつからなのか? 少し古い報道なので既知の方もいるでしょうが、英字紙シベリアンタイムス2016年1月31日付によりますと、2016年7月1日より実施されるとのことです。
同紙によりますと、ロシアのガルシカ極東開発相は、「簡易化されたビザ制度を2016年7月1日に導入するのが目標。ウラジオストク国際空港と、ウラジオストク港旅客ターミナルから入国した人が対象になる」と述べたとのことです。
ロシアの他地域へ移動も可能
入国者は、到着3日前までに電子申請をして登録しなければなりません。当局の承認が得られれば、オンライン上で8日間滞在のビザが与えられます。
オンライン上でビザ代を支払う必要があるようで、そのうえで、電子文書としてビザが発給されます。入国時には、この電子ビザをプリントアウトして提示します。なお、別の現地紙の報道では、無料との情報もあるようです。
このビザはウラジオストクのみの滞在ではなく、ロシアの他のエリアにも行くことができます。したがって、シベリア鉄道に乗ってイルクーツクあたりを目指すことも可能になります。
ただ、出国時は、「来たときの方向へ」向かわなければならないとのことで、第三国へ向かうことはできません。
電子渡航認証の一種?
以上が、シベリアンタイムスの記事の要約ですが、これが事実なら、アライバルビザというよりは、電子渡航認証とでもいうべき仕組みです。アメリカの「ESTA」に部分的に似ている気もします。
ロシアのことなので、また延期になるかもしれませんし、制度設計が変わるかもしれません。ただ、「アライバルビザ」という言葉から想像されるような、事前手続きなしで無条件にビザがもらえる、という制度にはならないようです。
このビザを実際に使う場合、ウラジオストク行きの航空券を購入後、すみやかに電子申請し、取得しておかなければならないでしょう。ロシアのことですから、3日前ではぎりぎりすぎて不安です。
シベリア鉄道でモスクワに行くには足りない
文字通りの「アライバルビザ」を期待していた方には、電子認証は面倒に感じられるかもしれません。とはいえ、これまでのロシアビザ申請の煩雑さに比べれば、魔法のようにカンタンにはなりそうです。
残念なのは8日間という長さ。シベリア鉄道でモスクワまで行くには時間が足りません。ウラジオストク~モスクワは鉄道で6泊7日かかりますので、8日間のビザでは間に合いません。でも、ウラジオストクを楽しむだけなら十分な期間ですし、バイカル湖あたりまでなら行けそうなので、シベリア鉄道を半分楽しむのにも使える制度になりそうです。
なお、実施は延期されるかもしれませんし、上記のような制度になると当局から正式発表があったわけでもありません。渡航の際は、必ず事前にご自身でお確かめください。(鎌倉淳)