イギリスのヴァージン・アトランティック航空が、エコノミークラスの座席を3階層とする運賃区分を導入することを発表しました。最低価格帯の運賃では手荷物を預けることができず、LCC的な位置づけになります。こうした取り組みは世界に広まるのでしょうか。
最低価格「エコノミー・ライト」が登場
ヴァージン航空が導入するのは、「エコノミー・デライト」「エコノミー・クラシック」「エコノミー・ライト」の3種類の運賃区分です。
最上位となる「エコノミー・デライト」は、座席間隔が34インチ(約86センチ)の広めのシートに座れ、チェックインとボーディングでも優先されます。
中間の「エコノミー・クラシック」は、座席間隔は31インチ(約79センチ)と、一般的な広さ。チェックインやボーディングでの優先はなく、これまで通りのエコノミークラスと考えてよさそうです。
この両者は、事前座席指定が可能で、23kgまでの手荷物を預けられます。
最低価格の「エコノミー・ライト」は、座席間隔が31インチで「エコノミー・クラシック」と同じ座席を割り振られます。ただし、座席は事前指定できず、チェックイン時に割り振られ、手荷物を預けることはできません。
いずれのクラスも機内持込手荷物として10kgまでの手荷物持ち込みが可能。食事や飲み物、エンタメなどの機内サービスは、運賃区分にかかわらず提供されます。
PYは「プレミアムクラス」に改称
ヴァージン航空には、さらに上級クラスとして「プレミアム・エコノミークラス」がありますが、これからは「プレミアムクラス」に改称されます。
ビジネスクラスに相当する「アッパークラス」では、名称変更はありません。これにより、ヴァージン航空は、5階層の座席クラスで構成されることになります。
長距離LCC対策
ヴァージン航空がこうした「エコノミークラスの細分化」に踏み切った理由は、LCC対策です。
これまで、欧米のLCC各社は、短中距離路線に力を入れてきました。しかし、最近、ノルウェージャンやウエストジェット航空が、長距離路線である大西洋線に相次いで参入。大手航空会社の乗客を奪い始めています。
こうしたLCC勢に対抗するため、ヨーロッパの大手航空会社は、長距離路線でのLCC対策に本腰を入れており、ヴァージン航空もエコノミーの階層分化による「一部席LCC化」に踏み切ったわけです。
ヴァージンのライバルであるブリティッシュ・エアウェイズも、2018年4月より、「ベーシック」という新運賃を大西洋線に導入します。これは、機内サービス類はそのままで、受託手荷物なしの場合、10~20%価格が安くなるというものです。
身軽な旅行者のは朗報
実際のところ、大西洋路線のような長距離線で、手荷物を預けない旅客がどの程度いるのかは、わかりません。
ただ、身軽な旅行者にとっては、LCCにはない運航安定性のあるレガシーキャリアに、割安に乗る方法が生まれるわけで、朗報といえます。
利用者が多ければ、こうした「一部席LCC化」が世界に広まる可能性はあり、日本の空にも影響を及ぼすかもしれません。(鎌倉淳)