東北・北海道新幹線が苦心の「統合ダイヤ」。ミニ新幹線と北海道接続を優先

速達タイプは激減

JR東日本が、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう新しい運転計画と時刻表を発表しました。東北・北海道新幹線は「はやぶさ」「やまびこ」「なすの」を区間ごとに統合する形でダイヤを組み替えます。在来線を走る山形・秋田のミニ新幹線と、北海道接続の影響を最小限にとどめるため、苦心のダイヤとなりました。

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日中の「なすの」は運転取りやめ

JR東日本は、新型コロナウイルス感染拡大にともない、指定席発売を見合わせてきた2020年5月28日以降の新幹線の運転計画と時刻表を発表しました。新幹線全体では約6割運転の減便ダイヤとなります。

東北・北海道新幹線では、「はやぶさ」が仙台以北で各駅停車の列車を増やし「やまびこ」と統合。「やまびこ」を仙台止まりとして全駅停車の列車を増やし「なすの」と統合。日中の「なすの」の運転を取りやめます。

在来線に直通するミニ新幹線である山形新幹線「つばさ」、秋田新幹線「こまち」に関しては、それぞれの在来線区間では現状ダイヤを維持し、列車本数を削減します。北海道新幹線も現状ダイヤをおおむね維持する形で列車本数を削減し、新函館北斗で特急「北斗」との接続に配慮しています。

E5系

「はやぶさ」ダイヤ

具体例で見てみましょう。減便ダイヤで東京駅09時48分発は、本来は「やまびこ177号」のスジですが、減便ダイヤでは「はやぶさ217号」となります。

「はやぶさ217号」は、大宮まで本来の「やまびこ177号」のスジをたどり、大宮~仙台がノンストップ、仙台~盛岡間が各駅停車という臨時ダイヤになります。盛岡~新青森間は本来の「はやぶさ17号」とまったく同じスジで新青森に到着します。

東北新幹線減便ダイヤ
画像:JR東日本プレスリリース

減便ダイヤでは、「やまびこ」の多くが仙台止まりになるので、仙台~盛岡間は「はやぶさ」を各駅に停車させることで救済しているわけです。一方で盛岡以北は本来の「はやぶさ」のダイヤを活かしています。

次に、減便ダイヤで東京駅11時48分発は、本来は「かがやき527号」のスジです。減便ダイヤでは「はやぶさ223号」が大宮まで使用し、大宮~仙台間がノンストップ、仙台~盛岡間が各駅停車、盛岡~新函館北斗が「はやぶさ23号」のスジをたどります。

ただし、本来ダイヤでは通過となっている奥津軽いまべつに停車します。同駅の本数確保のためとみられます。本来ダイヤより3分遅く16時33分に新函館北斗駅に到着しますが、連絡する「北斗17号」は16時55分発なので、接続に影響が生じない範囲です。

東北・北海道新幹線の盛岡以北は、本来のダイヤを活かしながら本数を絞っていて、一部で停車タイプと通過タイプを新青森で統合する形になっています。

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「やまびこ」ダイヤ

「やまびこ」を見てみると、午前10時発の「やまびこ・つばさ133号」は本来ダイヤと減便ダイヤが全く同じです。

午前11時発の「やまびこ435号」は、本来の「やまびこ135号」と発車時刻は同じですが、仙台まで全駅停車になっているのが異なります。これは、後続の11時08分発「なすの257号」を運休させた救済とみられます。つまり、「なすの257号」と「やまびこ135号」を統合したのが「やまびこ435号」といえます。

減便ダイヤでは、「やまびこ」で小山、那須塩原、新白河通過の速達タイプも残しています。需要の多い時間帯のほか、13時台のように「はやぶさ」を運休した代替としての役割も持たせている場合もあるようです。

山形・秋田新幹線は、基本的には本来のダイヤをそのまま活かし、列車本数だけを削減しています。

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毎時1本程度を確保

まとめてみると、東北・北海道新幹線の減便ダイヤでは、函館線連絡のある北海道新幹線と、ミニ新幹線で単線区間もある山形・秋田新幹線のダイヤを維持することを優先しているようです。そのため、これらの区間では、現状ダイヤを間引く形にとどまり、時刻や停車駅の変更は最小限です。

一方で、東北新幹線本体である東京~新青森間では、速達タイプの列車と停車タイプの列車を統合して輸送の効率化を図っており、大がかりなダイヤ変更となっています。これにあわせて、東北線や大船渡線、釜石線など、新幹線に接続する在来線の普通列車でも時刻変更が生じています。

こうした施策により、東北・北海道・秋田・山形新幹線では、利用者の比較的多い駅では毎時1本程度、少ない駅で2~3時間に1本程度の列車本数を確保しています。一方で、仙台~盛岡間ノンストップの「はやぶさ」の運転本数が減少するなど、速達性が犠牲になっています。

ただ、「かがやき」がなくなった北陸新幹線に比べると、東京~仙台間で「はやぶさ」がおおむね毎時1本程度運転されるので、ある程度の速達性は維持されたと見ることもできます。

また、東京~大宮間では、本来は上越・北陸新幹線で使用されているスジが東北新幹線に転用されています。つまり、両新幹線系統をあわせた減便ダイヤ体系になっています。多くの路線が枝分かれする、JR東日本の新幹線特有の事情を反映した、苦心の統合ダイヤといえそうです。

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