東武スカイツリーラインの有楽町線直通計画について、東武鉄道は決算説明資料の図に「東武日光」の文字を入れ込みました。東武日光直通の特急列車を、豊洲まで乗り入れる構想にも感じられます。
東武スカイツリーラインの有楽町線直通計画
東武鉄道は、2025年3月期の決算説明資料を公表しました。そのなかで、長期経営ビジョンに向けた取り組みのひとつとして、「東京メトロ有楽町線との新たな相互直通運転実施」を挙げました。
建設中の有楽町線支線(豊洲~住吉間)に、東武スカイツリーラインが乗り入れる計画です。
決算資料に記された「東武日光」
この直通計画については、東武鉄道と東京メトロが、2025年4月17日に正式発表しています。その点では既報の内容です。
気になるのは、決算説明資料に示された直通計画の図において、東武スカイツリーラインの春日部の先に「至 久喜・南栗橋・東武日光」と記されたことです。
4月17日の報道発表には、直通先の具体名は記されておらず、地図にも「至」はありません。直通区間については、「今後検討」と表記されていました。
ところが、決算説明資料には、久喜、南栗橋、東武日光の3駅が、具体的に記されているわけです。
特急の豊洲乗り入れを検討?
たんなる方面として書くのであれば、たとえば「伊勢崎」が入ってもいいはずですが、記されていません。こうした重要な資料に、何の意味もなく駅名を記すはずはありませんので、「久喜、南栗橋、東武日光」の3駅には、意味があるはずです。
久喜、南栗橋については、現状の東武線の都心直通列車(急行)の運行区間の北限です。したがって、豊洲からの急行が、久喜と南栗橋まで運転することを想定しているのでしょう。
いっぽう、東武日光については、現時点で都内からの直通列車は特急のみです。豊洲直通計画の地図に「東武日光」の文字を入れたのであれば、豊洲から特急を運転し、東武日光まで直通することを検討している可能性がありそうです。
新型特急車両も導入
東武は、決算資料で「新型特急車両の設計・導入」も掲げています。詳細は定かではありませんが、その車両を地下鉄対応にすれば、豊洲に乗り入れさせることはできます。
新型特急の導入時期は2030年代半ばで、有楽町線直通開始とタイミングが合います。となると、新型車両による「豊洲日光特急」を運転することは可能でしょう。
「日光エリアの事業拡張」
東武鉄道は、長期経営ビジョンに向けた主要プロジェクトとして「日光エリアの事業拡張」を掲げています。
明智平ロープウェイリニューアル、中禅寺温泉バスターミナルの機能強化が具体策として決算資料に記されているほか、栃木県では、いろは坂に新ロープウェイを建設する構想も打ち出しています。
つまり、日光は、大開発時代を迎えているわけです。
東武鉄道として日光への投資を増やすなら、来客も増やさなければなりません。そのためには都心からのアクセス改善が重要で、とくにインバウンド輸送の拡充が求められます。
豊洲は外国人観光客に人気の観光エリアであり、後背地の臨海副都心には、国際展示場、ホテルなどがひしめいています。「豊洲日光特急」が運転されるのであれば、こうしたエリアを訪れた外国人観光客をダイレクトに日光に運ぶ役割が期待されるでしょう。
「スペーシア」は上野に乗り入れへ
おりしも、2025年秋の臨時列車で、東武特急スペーシアがJR上野駅に乗り入れることが発表されました。「スペーシア上野日光」として、上野~東武日光間を走ります。
「スペーシア上野日光」は、将来的に、上野東京ラインを走って、たとえば品川まで延伸することも可能でしょう。そうすれば、東京駅や品川駅エリアから、日光へのアクセスが改善します。
都心主要エリアに東武特急が?
「スペーシア上野日光」が品川まで運転して定着し、「豊洲日光特急」も登場すれば、東武日光への直通列車が、既存の浅草、新宿に加え、品川、豊洲から発着することになります。
東京東部(浅草)、都心部(上野東京)、東京西部(新宿)、臨海部(豊洲)と、東武特急が都心主要エリアで揃うわけです。有楽町線の市ヶ谷での折り返し設備を使えば、「豊洲日光特急」は、銀座一丁目や永田町を経由することもできます。
都心各所から日光へのアクセスを容易にすることで、日光エリアの事業拡張を支える大構想といえるでしょう。
もちろん、現時点で、東武鉄道は何も発表しておらず、ここまで書いてきたことは、想像の域を出ません。ただ、「スペーシア上野日光」の運転とあわせて考えれば、「豊洲日光特急」は、あながち荒唐無稽でもなさそうな気がします。(鎌倉淳)