タイから日本への新規航空路線の開設や増便が全面的に停止されるそうです。このため、2015年3月29日以降のノックスクートのバンコク~成田路線が中止され、5月に就航予定だったタイ・エアアジアXのバンコク~新千歳線の開設も不可能になったようです。いったい、何が起きているのでしょうか。
不十分な審査で運航許可
この事態に至った理由は、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が、タイの航空当局に対し、「重大な安全上の懸念(SSC)」指定をするためです。具体的には、不十分な審査体制で当局が航空会社に運航許可を与えていたとのこと。これにより、ノックスクートは3月末の成田国際空港への就航を延期すると決めました。
運航ができないのは、タイの航空会社による日本への新規就航または増便、新たなチャーター便の就航です。既存の定期便路線は継続運航できます。また、日本の航空会社はこの影響を受けず、タイへの新規路線開設などは可能です。
長引けばEUでブラックリスト入りも
日本経済新聞によりますと、ICAOは2015年1月にタイ航空当局への安全監査を実施し、上記の判断に至り、タイ政府に改善を求めたそうです。これに対し、タイ政府は3月に是正措置を報告したそうですが、ICAOはなお問題が残るとしてこれを受け入れませんでした。
ICAOの決定を受け、日本やアメリカ、EU諸国など加盟各国でタイの航空会社の新規就航や増便、新たなチャーター便の乗り入れなどができなくなります。期限はICAOが問題が解消されたと判断するまでです。
ICAOの「重大な安全上の懸念(SSC)」の影響は、非常に大きいです。たとえば、2009年にフィリピンが指定された際には、それに基づきEUがフィリピンのすべての航空会社について、域内乗り入れを禁止するブラックリストに加えています。
これにより、フィリピンの航空会社はEU乗り入れが禁止されました。この例にならうなら、問題が長引いた場合、タイの航空会社のヨーロッパ乗り入れも禁止される可能性があります。
日本ではSSCによるフィリピンの航空会社の乗り入れ禁止はありませんでしたが、増便や新路線への制限は行われ、2013年にSSCが解除されるまで続きました。
タイがダメなら、他の国は?
個人的な感想ですが、今回の決定が衝撃なのは、対象が「タイ」であることです。
私たちは航空会社の安全度を、その国の発展度や民度で判断することがあります。その意味ではタイは中進国であり、それなりに安全なイメージがありました。実際、フラッグシップキャリアのタイ国際航空には、近年、大きな事故がありません。
つまり、「タイがダメなら、じゃあ他の国はどうなのよ」と思わずにいられないから、衝撃的なのです。
大丈夫?というような航空会社もあった
筆者はこの問題について詳しくはありませんが、一人の旅行者として、心当たりはあります。というのも、最近、チャーター便を主とするタイの航空会社が増えているのですが、そうした航空会社のなかには、あまりにも古い機体を使用していて、「大丈夫かいな」と思うようなものがあったからです。正直、「こんなのがよく認可されるな」というようなものもありました。
全くの想像ですが、そうした会社が認可されているあたりに、今回の問題の背景があるのかもしれません。