東京でタクシーの初乗りの距離を短縮する実証実験が開始されました。2016年8月5日~9月15日まで、都内4カ所に専用乗り場を設け、約1kmまで410円で利用できるというものです。現行は2km730円ですが、短距離なら4割も安く利用できることになります。
海外に比べて、初乗りが割高とされる日本のタクシー運賃。これをきっかけに、初乗り運賃の短距離化は定着するのでしょうか。
「流し」には対応せず
この実証実験に参加するのは日本交通(東京・千代田)など23社で、専用のタクシーを40台配備します。専用乗り場はJR新橋駅東口、東武浅草駅前、JR新宿駅東口、東大病院前の4カ所。この40台のタクシーは、利用者が街中でタクシーを拾う「流し」には対応せず、乗客を降ろした後は専用乗り場に戻ります。
都内タクシーの初乗り短距離化を巡っては、日本交通が2016年4月5日に運賃の変更申請を国交省に提出。これに他社が追随し、7月4日までに審査開始の基準となる7割を超えたのを受け、国交省が審査を始めました。早ければ年内にも運賃体系が変わる見通しです。
今回の実験では約1kmまで410円で利用でき、1kmを超えると237mごとに80円を加えます。9月15日まで都内4カ所に専用乗り場を設けて、利用者の声を探ります。国土交通省は今回の実証実験を通じて、お年寄りや外国人旅行者など、短い距離でタクシーを利用したいという需要がどれほどあるのか調べたいとしているそうです。
価格だけの問題ではない
この実験結果を受けて、実際にタクシーの初乗り運賃が引き下げられるのかは何ともいえません。とはいえ多くのタクシー会社が運賃の変更申請を出している以上、初乗り1km化は定着しそうです。
ただ、2km730円の現在ですら、タクシーに初乗り運賃で降りると、運転手にあまりいい顔をされないことがあるのも事実です。もちろん、そんな運転手ばかりではありませんが、タクシー運転手にしてみれば、たとえば駅で長時間客待ちして410円の売り上げではやってられないのではないか、と同情しなくもありません。
今回のように、短距離専用の乗り場があるならいいですが、そうでないなら、タクシー乗り場で待っていたタクシーに410円で乗ると、「運転手に嫌な顔されそう」と思ってしまいます。そうなると、利用者にはやっぱり「短距離でタクシは使いにくい」ままになってしまうかもしれません。つまり、価格だけの問題ではない、ということです。
日本のタクシーの初乗りは諸外国に比べても割高でしたし、1㎞化は悪くない施策だとは思います。とくに、旅行者にとっては、駅に着いて、ほんの数百メートル先のホテルにタクシーで行きたい、と感じることもあるのですから。そのとき、気遣いなく利用できるよう、短距離専用のタクシー乗り場の拡充も進めてほしいところです。(鎌倉淳)