航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が値上がりします。JALが10月分より1段階引き上げることを明らかにしました。ただ、年末に向け、落ち着いた動きになっていて、依然として近年では底値圏です。
10-11月分を発表
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2025年10~11月発券分で、価格を引き上げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、8-9月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、2025年6月から7月の市況価格が85.96米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル145.63円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は12,518円となりました。
欧米往復42,000円に
8-9月発券分は、市況価格79.60米ドル、為替144.57円で、基準金額は11,507円でした。この2ヵ月で、燃油相場は8%値上がりし、為替は約1%円安に振れ、その積である基準金額は、9%程度値上がりしています。
これにより、JALでは2025年10月1日発券分から燃油サーチャージの価格を値上げします。10-11月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが25,000円に、ハワイ・インドなどが16,000円に、タイ・シンガポールなどが13,000円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが50,000円に、ハワイ・インドなどが32,000円に、タイ・シンガポールなどが26,000円となります。
トランプ関税ショックで
最近の燃油サーチャージは、4-5月発券分を天井として、6-7月発券分からは下落に転じていました。値上がりは3期ぶりで、8-9月分が底となった形です。
6月以降の燃油サーチャージ下落の大きな原因は、いわゆる「トランプ関税ショック」です。4月にトランプ大統領が新たな関税を発表したことでドル安となり、景気後退懸念から原油価格が大幅に下落したことから、燃油サーチャージも値下がりしたわけです。
ただ、トランプショックも落ち着いて、燃油価格もドルも底を打ちました。そのため、燃油サーチャージも底打ちをしたわけです。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。(配信先で表が崩れる場合はこちらをご覧ください)
路線 | 24年 10-11月 |
24-25年 12-1月 |
25年 2-3月 |
25年 4-5月 |
25年 6-7月 |
25年 8-9月 |
25年 10-11月 |
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北米・欧州・中東・オセアニア | 35,000 | 25,000 | 29,000 | 33,000 | 29,000 | 21,000 | 25,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 22,500 | 16,000 | 18,500 | 21,000 | 18,500 | 13,500 | 16,000 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 18,500 | 13,000 | 15,500 | 18,000 | 15,500 | 10,500 | 13,000 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 12,000 | 8,000 | 9,500 | 11,000 | 9,500 | 6,500 | 8,000 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 9,200 | 6,200 | 7,400 | 8,500 | 7,400 | 5,000 | 6,200 |
韓国 | 4,000 | 2,500 | 3,000 | 3,500 | 3,000 | 2,000 | 2,500 |
※片道あたり、発券日基準。
適用条件「ゾーンG」に
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンG」に該当します。「ゾーンG」になるのは、24-25年の12-1月以来、10か月ぶりです。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 |
---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 16,000円 |
E | 10,000円~11,000円 | 18,500円 |
F | 11,000円~12,000円 | 21,000円 |
G | 12,000円~13,000円 | 25,000円 |
H | 13,000円~14,000円 | 29,000円 |
I | 14,000円~15,000円 | 33,000円 |
J | 15,000円~16,000円 | 35,000円 |
K | 16,000円~17,000円 | 38,000円 |
L | 17,000円~18,000円 | 41,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 44,000円 |
N | 19,000円~20,000円 | 47,000円 |
O | 20,000円~21,000円 | 50,000円 |
今後の見通しは?
直近では、燃油価格は落ち着いています。基準となるシンガポールケロシンの市況価格は86ドル程度で、今回の市況価格平均の85.96ドルとほぼ同じです。
為替相場はややドル高に触れていて、147ドル程度の値動きになっています。今回の為替平均145.63ドルに比べると、1%程度のドル高になりそうです。
このままの状況で推移すれば、燃油価格の上昇はあるものの、為替相場水準に動きが小さいので、次回の基準価格は据え置きとなる可能性が高いでしょう。
現状の相場が続けば、次回(12-1月発券分)の燃油サーチャージの基準価格は、今回と同じ12,000円台になりそうです。つまり、今回と同じ「ゾーンG」が続く可能性が高そうです。
ただ、中東情勢やウクライナの戦争に終結の見通しが出れば、燃油価格や為替相場も大きく動くでしょう。そうした先行きを見通すのは困難です。とはいえ、燃油サーチャージは、年末に向け、落ち着いた動きとなりそうです。(鎌倉淳)