航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が、3年ぶりの安値圏に下落します。JALが8月分より2段階引き下げることを明らかにしました。旅行のチャンス到来ですが、安値は長続きせず、秋には値上がりする可能性が高そうです。
8-9月分を発表
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2025年8~9月発券分で、価格を引き下げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、8-9月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、2025年4月から5月の市況価格が79.60米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル144.57円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は11,507円となりました。
欧米往復42,000円に
6-7月発券分は、市況価格88.25米ドル、為替150.49円で、基準金額は13,281円でした。この2ヵ月で、燃油相場は10%値下がりし、為替は約4%円高に振れ、その積である基準金額は大きく値下がりしたわけです。
これにより、JALでは2025年8月1日発券分から燃油サーチャージの価格を値下げします。8-9月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが21,000円に、ハワイ・インドなどが13,500円に、タイ・シンガポールなどが10,500円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが42,000円に、ハワイ・インドなどが27,000円に、タイ・シンガポールなどが21,000円となります。
トランプ関税ショックで
最近の燃油サーチャージは、4-5月発券分を天井として、6-7月発券分かは下落に転じていました。8-9月分は、さらに大きく下落することになります。
燃油サーチャージ下落の大きな原因は、いわゆる「トランプ関税ショック」です。4月にトランプ大統領が新たな関税を発表したことでドル安となり、景気後退懸念から原油価格が大幅に下落したことから、燃油サーチャージも値下がりしたわけです。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。(配信先で表が崩れる場合はこちらをご覧ください)
路線 | 24年 8-9月 |
24年 10-11月 |
24-25年 12-1月 |
25年 2-3月 |
25年 4-5月 |
25年 6-7月 |
25年 8-9月 |
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北米・欧州・中東・オセアニア | 35,000 | 35,000 | 25,000 | 29,000 | 33,000 | 29,000 | 21,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 22,500 | 22,500 | 16,000 | 18,500 | 21,000 | 18,500 | 13,500 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 18,500 | 18,500 | 13,000 | 15,500 | 18,000 | 15,500 | 10,500 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 12,000 | 12,000 | 8,000 | 9,500 | 11,000 | 9,500 | 6,500 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 9,200 | 9,200 | 6,200 | 7,400 | 8,500 | 7,400 | 5,000 |
韓国 | 4,000 | 4,000 | 2,500 | 3,000 | 3,500 | 3,000 | 2,000 |
※片道あたり、発券日基準。
適用条件「ゾーンF」に
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンF」に該当します。適用価格表のゾーンが「F」以下になるのは、2022年4-5月の「E」以来、3年ぶりとなります。つまり、今回は、3年ぶりとなる安値圏に下がったことになります。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 |
---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 16,000円 |
E | 10,000円~11,000円 | 18,500円 |
F | 11,000円~12,000円 | 21,000円 |
G | 12,000円~13,000円 | 25,000円 |
H | 13,000円~14,000円 | 29,000円 |
I | 14,000円~15,000円 | 33,000円 |
J | 15,000円~16,000円 | 35,000円 |
K | 16,000円~17,000円 | 38,000円 |
L | 17,000円~18,000円 | 41,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 44,000円 |
N | 19,000円~20,000円 | 47,000円 |
O | 20,000円~21,000円 | 50,000円 |
今後の見通しは?
直近では、中東の紛争を受け、燃油価格は上昇しています。基準となるシンガポールケロシンの市況価格は97ドル程度で、今回の基準価格79.60ドルから13%程度、値上がりしています。
為替相場は、紛争を受けいったん円安に振れましたが、揺り戻して144ドル程度の値動きになっています。
このままの状況で推移すれば、為替相場水準は前期と変わらないものの、燃油価格の上昇の影響を受け、次回の基準価格は上昇する可能性が高いでしょう。
現状の相場が続けば、次回(8-9月発券分)の燃油サーチャージの基準価格は14,000円前後になりそうです。ゾーンでいうと、今回から2ランク上がって「H」か、さらに上がって「I」になるかもしれません。欧米往復は「H」で58,000円、「I」で66,000円です。
中東情勢は流動的で、ウクライナの戦争も続いています。そのため、燃油価格や為替相場の先行きを見通すのは困難です。
とはいえ、燃油サーチャージが10月に大きく値上がりする可能性は高そうです。秋以降の旅行を検討の方は、8月と9月が購入のチャンスですので、早めにチケットを押さえておいてもよさそうです。(鎌倉淳)