航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)に、大幅下落の気配が漂っています。JALが6月分より1段階引き下げることを明らかにしましたが、円高・原油安で、8月分からはさらに安くなる可能性があります。
6-7月分を発表
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2025年6~7月発券分で、価格を引き下げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、6-7月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、2025年2月から3月の市況価格が88.25米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル150.49円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は13,281円となりました。
欧米往復58,000円
4-5月発券分は、市況価格90.96米ドル、為替155.03円、基準価格14,103円でした。この2ヵ月で燃料相場は2ドルの小幅な値下がり、為替は5円程度の円安に振れています。原油安と円安により、基準価格はやや下落しました。
これにより、JALでは2025年6月1日発券分から燃油サーチャージの価格を値下げします。6-7月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが29,000円に、ハワイ・インドなどが18,500円に、タイ・シンガポールなどが15,500円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが58,000円に、ハワイ・インドなどが37,000円に、タイ・シンガポールなどが31,000円となります。
燃油価格は落ち着くも
最近の燃油サーチャージは、2024年6月から11月まで6ヶ月連続で据え置かれ、12-1月分で大幅に下落。その後はじり高になっていました。
ところが、アメリカでトランプ大統領が就任し、輸入品に関税をかける政策を進めたことから、ドルが下落。景気後退懸念から燃油価格も下落し、今回は値下がりとなりました。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。(配信先で表が崩れる場合はこちらをご覧ください)
路線 | 24年 6-7月 |
24年 8-9月 |
24年 10-11月 |
24-25年 12-1月 |
25年 2-3月 |
25年 4-5月 |
25年 6-7月 |
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北米・欧州・中東・オセアニア | 35,000 | 35,000 | 35,000 | 25,000 | 29,000 | 33,000 | 29,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 22,500 | 22,500 | 22,500 | 16,000 | 18,500 | 21,000 | 18,500 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 18,500 | 18,500 | 18,500 | 13,000 | 15,500 | 18,000 | 15,500 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 12,000 | 12,000 | 12,000 | 8,000 | 9,500 | 11,000 | 9,500 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 9,200 | 9,200 | 9,200 | 6,200 | 7,400 | 8,500 | 7,400 |
韓国 | 4,000 | 4,000 | 4,000 | 2,500 | 3,000 | 3,500 | 3,000 |
※片道あたり、発券日基準。
適用条件「ゾーンH」に
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンF」に該当します。2ヶ月前の2025年2-3月と同ランクです。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 |
---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 16,000円 |
E | 10,000円~11,000円 | 18,500円 |
F | 11,000円~12,000円 | 21,000円 |
G | 12,000円~13,000円 | 25,000円 |
H | 13,000円~14,000円 | 29,000円 |
I | 14,000円~15,000円 | 33,000円 |
J | 15,000円~16,000円 | 35,000円 |
K | 16,000円~17,000円 | 38,000円 |
L | 17,000円~18,000円 | 41,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 44,000円 |
N | 19,000円~20,000円 | 47,000円 |
O | 20,000円~21,000円 | 50,000円 |
今後の見通しは?
直近では、燃油価格は下落傾向に転じています。基準となるシンガポールケロシンの市況価格は85ドル程度で、今回の基準価格88.25ドルから3%程度値下がりしています。
為替相場は、4月の上旬に150円前後で推移していましたが、トランプ大統領が「相互関税」の詳細を発表して以降、大幅な円高に振れていて、140円前後にまで達しています。今回の基準価格の150.49円と比べると、7%程度の大幅な円高です。
このままの状況で推移すれば、燃油価格の下落と円高が重なって、次回の基準価格は大幅に下落する可能性が高いでしょう。現状の相場が続けば、次回(8-9月発券分)の燃油サーチャージのゾーンは、今回から2ランク下がって「F」になりそうです。その場合、欧米往復は42,000円です。
ただ、トランプ大統領の政策は予測不能で、先行きを見通すことは困難です。景気は低迷しそうなので、燃油価格が大幅に値上がりすることはなさそうですが、為替動向は見通せません。
とはいえ、燃油サーチャージが8月に値下がりすることは間違いなさそうなので、秋以降に向けて航空券の購入を検討の方は、様子をみてもよさそうです。(鎌倉淳)