春秋航空日本が2016年12月期決算(第5期)を公表しました。売上高51億円で、前期比倍増の成績を残しました。営業損失は38億円で、前期に比べて約20%の縮小。国内LCC最後発となる春秋航空日本で経営改善が進んでいると考えていいのでしょうか。
売上高はジェットスターの1割
春秋航空日本は、2012年9月に設立された日本の格安航空会社LCCです。中国春秋航空の関連会社で、成田空港を拠点とし、2014年に広島、高松、佐賀の各路線に就航しました。現在運航している国内LCCとしては4番目で、最後発です。
運航初年度となる2014年12月期決算の売上高はわずか8億円。初めての通期運航となった2015年12月期決算でも、売上高は25億円にとどまりました。今回発表された2016年3月期決算は、通期運航開始後2回目の決算で、売上高が51.62億円。LCC最大手のジェットスター・ジャパンの522億円の1割にすぎませんが、前期比では倍増を達成しています。
利益面では、前期は48億円の営業赤字を計上していたのに対し、今期の営業損失は38.17億円とやや改善。純損失は37.91億円(前期49億円)として、前期に比べて2割程度の改善となりました。
バニラエアより、ちょっと優秀?
売上高51億円に対し営業赤字38億円というのは褒められた数字ではありませんが、春秋航空日本は、ボーイング737を4機保有するだけの航空会社です。現在の規模ならば、この決算も仕方がない、ともいえます。
参考までに、LCC3位のバニラエアは、第3期(2014年3月期)で売上高65億円に対し営業損失56億円でしたので、それに比べれば、数字上はちょっとだけ優秀かもしれません。
累損は152億円
問題は、来期に経営改善が見込めるか、という点でしょう。前述したように、春秋航空日本の現有機は4機にすぎず、黒字化するにはもう少し規模が必要でしょう。
国内線は、佐賀線と広島線のほかに、新千歳線と関西線に参入しましたが、いずれも競争の激しい路線です。現在の国内線路線網だけでは、黒字化は難しいのではないか、という気がします。
しかし、黒字化は急務です。春秋航空日本の今期の累積赤字は152億円にも及んでおり、バニラエアの第3期(累損97億円)を大きく上回ります。親会社の春秋航空としても、これ以上の損失は勘弁して欲しいところでしょう。
中国本土路線がカギ
改善のポイントは国際線です。春秋航空日本は、重慶、武漢、天津、ハルピンに国際線を飛ばし始めました。ホームグラウンドである中国本土の国際線への路線で利益を挙げられるかが、黒字化のカギになりそうです。国内の他LCCも、国際線で収益を上げるようになってから経営状況が改善されましたし、LCCにとって国際線は重要です。
バニラエアは、第5期(2016年3月期)に、売上高217億円で14億円の営業利益を計上し黒字化を達成しました。同じ時間軸なら、春秋航空日本も、2期後の2018年12月期の黒字化を狙う、ということになりそうです。
春秋航空日本は、JAL、ANA両者の資本が入っていない唯一の国内LCCです。最後発のうえに、大手系列LCCの挟撃で状況は厳しそうですが、ぜひ黒字化を達成し、生き残ってほしいところです。(鎌倉淳)