MRJ=スペースジェットの事業化凍結へ。国産ジェット旅客機計画は失敗に終わるのか

1兆円を投じたが

三菱重工業は、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット」の事業化を凍結する方針を固めました。かつて「MRJ」と呼ばれた初の国産ジェット旅客機計画は失敗に終わる可能性が高くなりました。

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1兆円規模の開発費

スペースジェットは経済産業省が事業者を公募し、これに応じた三菱重工が2008年に事業化を決定。当初は「MRJ=三菱リージョナルジェット」と呼ばれていました。

初号機の納入は当初2013年を予定し、初の国産ジェット旅客機開発として大きな注目を集めました。しかし、設計変更などで完成時期を6度延期。開発費は1兆円規模になっているとみられますが、いまだに型式認証の取得ができていません。

2020年5月には、70席クラスの開発を凍結。当面は90席クラスに絞り型式証明の取得を目指していました。受注数は約300機で、ANAが25機、JALが32機です。しかし、新型コロナの影響が拡大するなか、航空各社から契約キャンセルが出る可能性も高くなっていました。

そのため、これ以上投資を続けても、当面は採算が見通せないとして、いったん事業化を凍結することになったようです。

スペースジェット
画像:三菱重工業

型式証明取得は継続

現時点では、スペースジェットのプロジェクトが完全終了するわけではなく、型式証明の取得に向けた開発研究は規模を大幅に縮小したうえで継続するようです。ただし、量産など事業化のための準備は行わず、事実上の凍結となります。

型式証明を取得して、航空需要が回復した場合は、凍結を解除する可能性もあるようですが、実際にそうなるかはかなり不透明といわざるを得ません。

それにしても、YS-11以来半世紀ぶりの国産旅客機開発と沸き立ったのも、いまは昔。プロジェクトは「失敗」と言われても仕方のない状況になってしまいました。国家も支援したプロジェクトが実用化に至らず挫折してしまうのだとすれば、日本は旅客機を作ることができないという現実を知らされたようで、とても残念です。

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