スカイマーク「FDAとの連携」は成立するか? 鈴与が共通株主に

インテグラルから株式譲受

スカイマークの筆頭株主が鈴与ホールディングスにかわります。鈴与はフジドリームエアラインズ(FDA)の100%株主で、スカイマークとの連携が注目されています。

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鈴与が13%を保有へ

スカイマークの筆頭株主である投資ファンドのインテグラルは、保有するスカイマーク株の一部を鈴与ホールディングス(HD)に売却すると発表しました。鈴与HDはスカイマークの発行済み株式の13.01%を保有する筆頭株主となります。インテグラルの保有比率は16.58%から4.86%に低下し、第5位株主となります。

鈴与はフジドリームズエアライン(FDA)の株を100%保有する完全親会社です。したがって、今後、鈴与グループは、完全子会社のFDAと、筆頭株主のスカイマークという二つの航空会社を抱えることになります。

鈴与のスカイマークへの議決権比率は13%にとどまりますので、FDAに対するような絶対的な影響力は行使できません。とはいえ、筆頭株主ですので役員は派遣するでしょうし、代表権のあるポストを得る可能性もあります。スカイマークの経営に対して一定の影響力を及ぼすのは間違いありません。

スカイマーク

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FDAと補完関係

そこで気になるのは、スカイマークとFDAの関係です。

FDAは静岡と名古屋を拠点とする地域航空会社で、70~80人乗りのリージョナルジェット機を運用して、全国に路線網を広げています。羽田の発着枠はもっておらず、ローカル路線を中心に運航しています。

一方、スカイマークは羽田発着枠を持ち、177人乗りの小型ジェット機を使って、幹線を中心に大手航空会社と競争を繰り広げています。スカイマークとFDAとの間で競合は少なく、補完関係が成り立ちそうです。

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会社の方向性が違いすぎ

ただし、両社は運賃水準が大きく異なります。スカイマークは大手2社(JAL、ANA)に比べて手軽な運賃を提供していますが、FDAの運賃は高めです。

国交省が公表しているイールド(輸送人キロあたり旅客収入)を比較すると、スカイマークの11円に対し、FDAは18.9円に達します。JALやANAは14~15円程度なので、FDAの運賃水準は大手航空会社より高く、スカイマークと比べると1.7倍にも達します。

つまるところ、スカイマークとFDAの間に補完関係が成り立つ余地はあるものの、連携するには会社の方向性が違いすぎる、という気がします。

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共同運航は?

FDAがJALと共同運航をしている点も気になります。FDAは大手航空会社の資本から独立した航空会社ですが、座席の一部をJALに販売してもらっています。

一方、スカイマークはどの会社とも共同運航をおこなっていません。第2位株主はANAですので、ANAと共同運航をしてもよさそうですが、ANAの座席予約システムに取り込まれることなどを避けているようで、座席は全て自社で販売しています。

したがって、鈴与が筆頭株主になったところで、スカイマークがFDAと足並みを揃えて、JALと共同運航をすることは考えにくいでしょう。スカイマークとFDAとの共同運航も、両社のメリットが小さく、現時点では考えづらいです。

となると、スカイマークの筆頭株主がかわっても、両社の運航形態に大きな変化が起こることは考えにくいです。

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なぜ鈴与に売却したか

では、なぜ、インテグラルがスカイマークの株式を鈴与に売却し、鈴与は引き受けたのでしょうか。

まず、インテグラルは投資会社で、スカイマークが経営破綻した際に出資して救済しましたが、投資目的である以上、いずれスカイマークから資金を引き揚げる必要がありました。

そのためスカイマークの株式を再上場し、一部を市場に放出したわけですが、株式が分散して保有されてしまうと、12.93%(2023年3月31日現在)の株式を保有するANAの影響力が強まってしまいます。

インテグラルは、スカイマークの再建途上で、同社の独立性を維持することにこだわってきました。そのため、まとまった株式を、ANAに対抗できる航空会社に譲りたいという意向があったのではないでしょうか。

FDAは、大手2社から資本的に独立している航空会社としては国内最大ですし、JALとも近い関係にあります。その親会社である鈴与は、スカイマークの主要株主としてANAとバランスを取るには最適の企業です。

インテグラル取締役の佐山展生氏は、Xに「鈴与さんが、独立系航空会社としてのスカイマークを更なる上のステージに飛躍させて頂くことを心からお祈りします」と書き込んでいます。短い文章のなかに「独立系航空会社としてのスカイマーク」という文言をわざわざ入れたのは、それが売却先を決めるうえで重要なポイントだったからでしょう。

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鈴与のメリットは?

一方の鈴与は、FDAのほかに、空港のグランドハンドリング業務をおこなう関連会社がグループ内にあり、一部の空港でスカイマークの業務を請け負っています。

筆頭株主になったことで、こうした部門での協業関係を強めることができ、同社の航空事業全般でシナジー効果が得られると判断したようです。

SKY・FDA連合は?

利用者・航空ファンとしては「SKY・FDA連合」という第3極を期待したいところです。

しかし、スカイマークとFDAの連携については、いまのところはっきりしません。FDAとの連携は、スカイマークが志向する「大手からの独立」を侵害しませんので、部分的には成立しうるでしょう。

FDAは近年、神戸空港の拠点化を進めていて、青森、花巻、松本、高知に路線を有しています。神戸空港はスカイマークの拠点でもあるので、こうした拠点での連携を深めることは可能かもしれません。

とはいえ、スカイマークはANAとのバランスにも配慮しなければならない株主構成になっています。したがって、FDAと連携したとしても、ANAと競合しない範囲に限定されそうです。(鎌倉淳)

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