中国内陸部の宝鶏と蘭州を結ぶ高速鉄道が、2017年7月9日に営業運転を開始しました。これにより、西安からウルムチまで古代のシルクロード沿線を結ぶ2300kmが高速鉄道で結ばれました。上海から高速鉄道のみでの「中国横断」も可能になっています。
世界最高所を走る高速鉄道
今回開通したのは、陝西省宝鶏と甘粛省蘭州間401km。これにより、陝西省西安から新疆ウイグル自治区ウルムチまでの「シルクロード高速鉄道」が全通しました。総延長は2300kmに達します。
蘭州-ウルムチ間は、2014年12月26日に開通済みです。この区間は中国初の標高の高い地域に造られた高速鉄道として知られ、全長1777㎞が一気に開業しました。蘭州からウルムチまでは、開業時に最短11時間50分と報じられました。
西安-宝鶏間もすでに開業しており、今回の宝鶏-蘭州間の開業で西安-ウルムチ間が高速鉄道で結ばれたことになります。現時点では、シルクロード高速鉄道の直通列車はなく、蘭州での乗り継ぎとなります。共同通信2017年7月9日付によりますと、所要時間は最速で14時間とのことです。
西安-ウルムチが同日着
実際に、中国鉄道の予約サイトで検索をしてみると、以下のような接続が見つかりました。
西安北07:42→10:52蘭州西11:20→23:28ウルムチ
所要時間は15時間46分と、報道の「14時間」よりはかかりますが、それでも西安-ウルムチが同日着です。
西安・ウルムチ同日着というのは、1990年前後にこのエリアを旅行したことのある方なら、腰が抜けるほど驚くでしょう。というのも、この区間は、列車2泊かかる道のりだったからです。
上海から3泊4日かかっていた
まったく個人的な経験で申し訳ないのですが、筆者は1988年に上海からウルムチまで鉄道で旅をしました。このとき利用したのは上海・ウルムチ直通の「特快」で、「中国横断特急」とも言われていました。ダイヤは以下の通りです。
上海12:18→11:13(+1)西安11:46→00:01(+2)蘭州0:16→20:28玉門20:47→18:08(+3)ウルムチ
上海を1日目のお昼に出て、ウルムチに着くのが4日目の夕方。77時間50分、3泊4日の長旅です。実際はたいてい遅れるので、もっとかかったでしょう。
当時は、こんなSLで牽引していましたし。
こんな砂漠を走っていたわけです。この風景は、いまもたいして変わらないでしょう。
これを今の中国高速鉄道を利用すると、以下のようになります。
上海虹橋17:05→23:36西安北07:42(+1)→10:52蘭州西11:20→23:28ウルムチ
西安北で一泊し、さらに蘭州西で乗り換えが生じますが、1泊2日で総所要時間は30時間23分。かつての半分以下です。接続時間を減算すると、乗っている時間は22時間程度です。
総延長は2万2000km
かつての「中国横断列車」の77時間と比べると、まさに隔世の感があります。あの広大な中国大陸を、鉄道で30時間、乗車時間だけなら22時間で横断できるというのは、ちょっと驚きました。
インターネットニュースの「中国網」2017年6月19日付によりますと、中国の高速鉄道の総延長は2万2000km以上に達しているそうです。「高速鉄道の空白」はどんどん埋められ、多くの省で、高速列車「和諧号」が利用できるようになりました。
高速鉄道の技術論で日中を比較する論説はよく見ますが、国土に高速鉄道を張り巡らせるという実行力を含めて考えると、中国に軍配が上がる時代になってきたのは、認めざるを得ないのかもしれません。(鎌倉淳)