「四合院」をご存じでしょうか。北方中国の伝統的建築で、方形(四角形)の中庭を4つの建物が囲む形の家屋です。有名なのは北京の四合院。中国版「古民家」建築とでもいうべき存在です。
北京の四合院の多くはすでに取り壊されていますが、残されているものを宿泊施設や商業施設に改造する例が増えているそうです。比較的最近できた四合院ホテルに泊まってみました。
「北京如園四合院酒店」は隠れ家的ホテル
泊まってみたのは、北京如園四合院酒店(Beijing Ruyuan Courtyard)です。オープンは2013年。日本人デザイナーによってリノベーションされたホテルです。
北京市東城区の胡同(細い路地)に立地しています。北京の中心地に近いエリアで、地下鉄駅からも歩いて10分ほどと、交通も便利です。
ここが北京如園四合院酒店の入口。ホテルの看板は一切なく、まったくもって部外者にはわかりません。まさに、隠れ家的ホテルです。
二つの四合院が組み合わさって
小さなフロントでチェックイン。下の写真左がフロントです。
この四合院には、中庭が二つあります。つまり、二組の四合院が組み合わさった建物です。中庭が多いほど豪華な家屋だそうで、ホテルの説明では「清朝時代に宮殿として使われていた」とのこと。王族か貴族か高級官吏でも住んでいたのでしょうか。
中庭では、中国の伝統的な雰囲気を味わうことができます。周囲の建物は、レストランなどに使われています。
コンクリートの建物が増築されており、客室はそちらに配されています。
客室設備は西洋式
筆者が泊まったのはメゾネット形式の「ロフトスイート」。1階にデスクとソファ、2階がベッドルームがあり、あわせて40平米くらいです。トイレは1階と2階の2カ所、バスルームにはバスタブとシャワーブースが配されています。贅沢な作りですね。
客室に関しては、デザインは中国式ですが、設備は西洋式です。使いやすいですが、とことん中国の伝統世界に浸かりたい人には、ちょっと残念かも。
宿泊料金は、日本円で1泊1万8000円程度。定価だともう少し高いようですし、もちろん季節変動もあるでしょう。北京のホテルの相場からすると、それほど高くはありません。
夕食はホテル内で食べませんでしたが、朝食はこんな感じ。
洋食と中華のチョイスしかできませんが、量はしっかりありました。
スタッフはフレンドリー
北京如園四合院酒店に泊まってみた感想としては、客室には一通りのものが揃っていて快適に過ごせますし、昔の北京の古建築の雰囲気を味わうにはいいホテルでしょう。大型ホテルに泊まるのが飽きた方には、おすすめできます。
一方で、いわゆるホテル的便利さを求める人には向いていません。また、場所がわかりにくいので、方向音痴の方も避けた方がいいでしょう。
スタッフはフレンドリーで、これも高級ホテルの慇懃な雰囲気とは違います。英語はそれなりに通じます。
宿泊しているのは中国人ばかりに見えました。香港人や台湾人もいたかもしれませんが、区別は付きません。西洋人や日本人はいませんでした。ヨーロッパや日本では、まだそれほど有名なホテルではないのかもしれません。
これから根強い人気に
日本でも町家や古民家を改造した宿泊施設が増えています。ヨーロッパでも古い家や宮殿を使ったホテルは人気がありますし、北京でも四合院を使ったホテルは、今後も根強い人気となりそうです。
筆者の思い込みかもしれませんが、昔の中国は「でっかいことがいいことだ」的な思想が見え隠れし、大型ホテル至上主義の印象がありました。
四合院を使ったホテルが増えていることは、こうした思想を卒業し、中国の旅行文化が成熟してきたことを示しているのかもしれません。(鎌倉淳)