JR東日本が「週末パス」などのお得なきっぷを廃止すると発表しました。きっぷのデジタル化を推進する方向性がさらに進んだ印象で、紙のフリーきっぷの終焉を予感させます。
関東甲信越など乗り放題
「週末パス」は、関東・甲信越・南東北エリアのJR線と14社の地方鉄道会社線が乗り放題となるフリーきっぷです。土休日の連続する2日間有効で、料金券を別途購入すれば、特急なども利用できます。
価格は大人8,880円・小児2,600円で、「えきねっと」や指定席券売機、駅の窓口で購入できます。
土日限定ですが、使いやすい手軽な乗り放題きっぷとして知られてきました。しかし、JR東日本は、2025年6月末限りを有効期限として、販売を終了すると発表しました。
首都圏週末フリー乗車券も廃止
廃止されるのは、「週末パス」だけではありません。「首都圏週末フリー乗車券」と「東京フリー乗車券」も廃止となります。
「首都圏週末フリー乗車券」は、東北や甲信越地方から東京への往復きっぷと、東京フリーエリアの2日間乗り放題がセットになった商品で、週末のみ有効です。
「東京フリー乗車券」は、庄内エリアから東京への往復きっぷと、東京フリーエリアの4日間乗り放題がセットになった商品で、通年有効です。
これらのきっぷも、2025年3月末または6月末を以て、販売が終了します。
販売数が落ち込んで
各社報道によれば、廃止理由は、きっぷの販売数が落ち込んでいることです。背景として、インターネット限定の割引きっぷが普及したことが挙げられます。えきねっとの「トクだ値」を利用する人が増えたということでしょう。
週末パスは、2点間の割引きっぷではありませんが、現実にはそうした使い方をしている人も多かったのでしょう。東京~仙台や、東京~新潟間でも、定価に比べて割安なので、前日まで購入できる割引きっぷの性質を有しています。
しかし、インターネット販売の利便性に慣れると、週末パスと特急券を別々に買って乗車するのは煩わしく、販売数が減少していたとしても不思議ではありません。
週末利用が堅調で
別の理由として、週末の利用状況が相対的に堅調であることも考えられます。新型コロナ禍以降、出張需要に比して、観光需要は回復傾向が明確になっています。
「週末パス」や「首都圏週末フリー乗車券」は、週末の需要を喚起するための商品ですが、現実に需要喚起が必要なのは平日になっているようです。つまり、週末向けの割引きっぷが、JRにとって意義の小さいものになってきているということです。
「チケットレスではない」から
JRでは、販売を終了する告知文で「新幹線eチケット(トクだ値)等の便利でおトクなチケットレス商品やサービスをこれからも展開してまいります」とも記載しています。
この文言からは、「チケットレスではないこと」も廃止の理由であることが推察されます。
裏を返せば、「紙のきっぷである」ということも、廃止理由の一つということです。
磁気券の廃止視野
JR東日本では、今後、近距離乗車券について、磁気乗車券からQR乗車券へ置き換える方針を明らかにしています。また、新幹線では交通系ICカードを中心としたチケットレス乗車に力を入れています。
近い将来に、すべての磁気乗車券が姿を消すわけではないでしょうが、磁気券で販売されているきっぷを、縮小・廃止していく方針であることは確かでしょう。
そうした状況で、「週末パス」や「首都圏週末フリー乗車券」が姿を消すのは必然で、時間の問題だったともいえます。
運賃値上げを控え
さらに、JR東日本では、2026年春に運賃値上げをする予定です。運賃が上がれば、こうしたフリーきっぷの価格改定もすることになります。
近い将来の廃止が避けられないのであれば、値上げは販売終了の一つのタイミングともいえます。
なぜ、26年3月でなく、25年3月でもなく、6月で廃止なのかは定かではありません。外部からはうかがいしれない事情があるのかもしれません。
QRコードかICカードか
JR各社はきっぷのデジタル化を進めています。それにともない、紙のフリーきっぷに終焉の兆しがあるのは確かでしょう。
将来的に、JRのきっぷは全面的にデジタル化され、QRコードと、交通系ICカードに集約されていくとみられます。したがって、今後のフリーきっぷも、基本的には、この2種類のどちらかに対応できる形で販売される形になっていくでしょう。
その点で、「週末パス」や「首都圏週末フリーきっぷ」もデジタルに対応した形で、再販されることを期待したくなります。
ただ、デジタルで紙と同じきっぷが販売されるとは限りません。とくに、複数の地方私鉄にまたがる週末パスのようなきっぷは、各社のデジタルへの対応状況の違いもあることから、設定が難しくなっていくのではないでしょうか。(鎌倉淳)