「週末パス」は、関東・甲信越・南東北のJR東日本と14の私鉄線が乗り放題になるきっぷです。2日間有効で8,880円という低価格が魅力。格安旅行のアイテムとして人気です。
JR東日本と14地方私鉄
JRのきっぷに詳しい方なら今さら説明の必要もないほど有名なのが「週末パス」。おおざっぱにいうと、関東地方と山梨県、長野県、新潟県、山形県、福島県、宮城県のJR東日本線と、おもな地方私鉄が乗り放題になるというきっぷです。
土休日に利用でき、2日間有効でおとな8,880円、こども2,600円です。
■「週末パス」の概要
●利用期間:土休日(GW、お盆、年末年始除く)
●有効期間:連続する2日間
●発売期間:利用開始日の前日まで
●価格:おとな8,800円、こども2,600円
●フリーエリア内の普通列車、快速列車が乗り降り自由。
●新幹線・特急列車に乗車する際は特急券などが必要。
フリーエリアは下図の通りです。
フリーエリア内のJR線、山形鉄道線全線、阿武隈急行線全線、福島交通線全線、会津鉄道線(西若松~会津田島間)、北越急行線全線、えちごトキめき鉄道(妙高高原~直江津間)、上田電鉄線全線、しなの鉄道全線、長野電鉄線全線、アルピコ交通線(松本電鉄線)全線、ひたちなか海浜鉄道線全線、鹿島臨海鉄道線全線、富士急行線全線、伊豆急行線全線の普通列車(快速含む)普通車自由席が乗り降り自由です。
買い方、使い方
「週末パス」は上記フリーエリア内のJR東日本の駅の指定席券売機、みどりの窓口、びゅうプラザ、主な旅行会社などで販売しています。駅の窓口に行けば買えますので、簡単です。
利用期間開始の前日までに購入しなければいけません。通常の週末なら金曜日まで、金土日の3連休なら金曜日(土曜日出発)または土曜日(日曜日出発)までに購入する必要があります。
使い方は簡単で、自動改札にきっぷを入れるだけです。自動改札がないエリアでは、有人改札に切符を見せればスタンプを押してくれ、以後は有効期間内にそのまま通れます。
東京~福島往復で元が取れる
「週末パス」の源流は、2000年に発売開始された「土・日きっぷ」。2010年度からの「ウィークエンドパス」を経て、2013年度に「週末パス」となりました。年間34万枚(2018年度)を売り上げる人気の企画きっぷです。
おとなの価格8,800円というのは、片道241km以上のJR線を往復すれば元が取れる価格です。東京を起点にすると、東北新幹線の福島、上越新幹線の長岡、北陸新幹線の飯山、中央線の信濃大町あたりまで単純往復すれば、それだけでお得ということになります。
たとえば東京~仙台間を「はやぶさ号」の普通車指定席で往復する場合、定価が22,820円ですが、「週末パス」を使うと19,520円となります。金券ショップで回数券を買うより安くつくでしょう。
JR東日本の格安チケットといえば「えきねっとトクだ値」がありますが、「トクだ値」は東京~仙台間には「はやぶさ」号には設定されていませんので、「週末パス」は有力な格安旅行アイテムです。
単純往復以外でも
「トクだ値」との比較では、区間や列車によっては「週末パス」のほうが高い場合もあります。ただ、「トクだ値」は発売座席数の制限がありますが、「週末パス」には発売枚数の制限がありません。それもメリットです。
また、単純往復だけでは元が取れない区間であっても、JR線を2日間で何度か乗り降りするなら、お得になります。たとえば東京~横浜間は片道473円しますので、長野から東京を訪れて、横浜まで足を伸ばすといった場合、「週末パス」を使ったほうが、普通運賃よりも安くなります。
地方から上京する場合、首都圏エリアのJR線フリーきっぷも兼ねているわけです。
こども料金が破格
「週末パス」のもう一つの魅力は、こども料金が破格ということです。2,600円というのは、片道141km以上で元が取れる値段です。東京発着で東北新幹線なら那須塩原、上越新幹線なら上毛高原、北陸新幹線なら軽井沢往復で元が取れます。
家族連れには優しい価格設定です。こども用のみでの発売はしないという制限はありませんので、たとえば大人は普通運賃、子どもは「週末パス」を利用するという使い分けもできるでしょう。
私鉄乗り歩きに威力
「週末パス」が威力を発揮するのは、フリーエリアに含まれている地方私鉄に乗る場合です。地方私鉄は運賃が高く、JR線とも運賃が通算されませんが、「週末パス」なら安く利用できるからです。
例を挙げると、伊豆急行(伊東~伊豆急下田)の運賃は片道1,650円。富士急行(大月~河口湖)が1,170円、しなの鉄道・えちごトキめき鉄道(長野~直江津)が1,750円、長野電鉄(長野~湯田中)が1,190円、鹿島臨海鉄道(水戸~鹿島サッカースタジアム)が1,400円です。
「週末パス」のお得さを満喫するには、こうした私鉄線を乗り歩くことでしょう。富士山や湯田中温泉など、地方私鉄沿線の観光地へのお出かけにも使えます。
特急乗り放題ではないが
かつての「土・日きっぷ」は、特急自由席が乗り放題でしたし、「ウィークエンドパス」は当日購入も可能でした。それに比べると「週末パス」は、特急料金は別途かかり、前日までに買わなければならないという制約が加わっています。
それでも、関東・甲信越・南東北を1日あたり4,400円で乗り放題になるきっぷが、毎週末に発売されているというのはありがたい話です。今週末も、「週末パス」を手に、列車の旅に出てみてはいかがでしょうか。