大手私鉄で有料着席サービスの拡充が続いています。京王と京阪が車両の増備を打ち出しました。
京王は日中時間帯にも設定
京王電鉄は、2023年3月24日に発表した運賃改定申請の資料のなかで、有料座席指定列車を拡充する方針を明らかにしました。
京王はロングシートとクロスシートを転換できるデュアルシートの5000系車両を使用して、2018年から有料座席指定列車「京王ライナー」を運行しています。
当初は新宿発夕方下り列車のみの運行でしたが、徐々に運行時間帯を拡大。現在は、朝時間帯の上り列車や、休日運行の「Mt.TAKAO号」を含め、平日29本、土休日22本を運転しています。
さらに、同社は運賃改定申請の補足資料のなかで、「京王ライナー」の終日運行の検討を明記。5000系を増備し、一部座席指定列車の導入も含め、日中時間帯への運行拡大を目指す方針を明らかにしました。朝夕の通勤時間帯における増発も進めます。
京阪はプレミアムカーを2両へ
京阪電鉄は、2023年3月30日に発表した中期経営計画で、「プレミアムカーの増備」を実施する方針を明らかにしました。
京阪のプレミアムカーは、主に特急として運行している8000系と3000系で提供している有料座席サービスです、2017年に運行を開始。現在は全時間帯で特急や快速急行などに設定されています。
増備をするのは3000系車両で、現在1両のプレミアムカーを2両にします。まずは、2025年秋をめどに、1編成で増備をおこないます。そのほか、沿線エリアへの誘客強化に向けた、観光列車の導入も検討します。
東急東横線にQ SEAT
大手私鉄の有料座席サービスの拡大は、京王、京阪以外でも予定されています。
東急電鉄では、現在、大井町・田園都市線で運行している有料座席指定サービス「Q SEAT(Qシート)」を、2023年度以降、東横線にも導入する方針を明らかにしています。5050系に2両の新製デュアルシート車を組み込んだ10両編成を投入します。
東横線のQシートの詳細は明らかではありませんが、夕方時間帯の渋谷始発の急行が対象になるのでは、と予想します。2023年度中に導入予定とされているので、1年以内に運用が開始される見通しです。
阪急は京都線で
阪急電鉄も2024年に京都線で有料座席指定サービスを導入することを明らかにしています。
こちらの詳細は定かではありません。おそらくは、特急の一部車両を座席指定車に変更すると思われますが、改造か新製かなども含めて、正式発表された情報はありません。
阪神も検討
さらに、阪神電鉄も有料座席指定サービスの検討をしています。
同社は2022年12月と23年1月の金曜夜に、定員制有料列車「らくやんライナー」を大阪梅田~青木間で運行し、着席サービスの実験を行いました。
日本経済新聞2月3日付によると、実験結果は良好だったそうで、同紙のインタビューに応じた久須勇介専務(現社長)は、有料座席サービスの本格導入について検討することを明らかにしています。
利用者ニーズ大きく
大手私鉄各社が有料座席サービスを拡大しているのは、もちろん増収策ですが、利用者ニーズに応える目的も大きいと思われます。多少のお金を払っても、着席して快適に乗車したいと考える層は多いのでしょう。
また、新型コロナを経て、ラッシュ時の混雑率が緩和しているのも大きな要因です。
最近の通勤電車は利用者が回復してだいぶ混雑してきましたが、まだコロナ前には及ばないようです。そのため、有料着席サービスに供する車両やダイヤの余裕がある、ということでしょう。
今後も、ラッシュピークの混雑率がコロナ前に戻らないのであれば、有料着席サービスは各社で拡充していくのではないでしょうか。(鎌倉淳)