青春18きっぷの「青函特例」は維持されるのでしょうか。多くの鉄道ファンが気にしているこの問いに、JR北海道の島田修社長が微妙なコメントで応えました。
島田社長は、青春18きっぷの青函特例に関し、「廃止には反対の声が多い」と述べたうえで、「JR各社と協議して判断したい」と付け加ました。青春18きっぷの青函区間での特例存続に、含みを残したといえそうです。
青春18きっぷ初の「新幹線特例」になるか
青春18きっぷは、津軽海峡線の蟹田~木古内間に限り、特急列車の自由席を料金なしで利用できるという特例を設けています。2016年3月に北海道新幹線が開業すると、この区間で在来線列車がなくなることから、新幹線を対象にした新たな特例が設けられるかが注目されています。
青春18きっぷで新幹線に乗れる特例は、これまで一切設けられていません。そのため、もし「青函特例」が存続となり、一定の条件下で青春18きっぷで新幹線に乗車できるルールが作られれば、初めてのことになります。
写真:JR北海道
「JR各社と協議して判断」
これについてのJR各社から公式発表はいまのところありません。しかし、毎日新聞2015年11月28日付北海道版によりますと、2015年11月26日に函館市で開かれた新幹線の特急料金に関する公聴会で、JR北海道の島田修社長は、「青春18きっぷの特例廃止は反対の声が多く、未定。JR各社と協議して判断したい」と述べたそうです。
同じ公聴会で、島田社長は、普通乗車券のみで青函区間の新幹線の普通車自由席に乗ることができる特例については、「設定する予定はない」と断言したそうです。その一方で、青春18きっぷに関しては「JR各社と協議中」と述べたわけで、発言には明らかな温度差があります。そのため、何らかの特例設定に含みを残したと解釈できるのではないでしょうか。
青春18きっぷの2016年の発売予定は、2016年2月までには発表されます。現時点で発表まで3ヶ月を切っているため、JRグループ内である程度の方向性はすでに決められている可能性はあります。ただ、この段階でJR北海道が独自に発表することはできないでしょうから、こうした含みを残す発言になったのかも知れません。
別料金を支払う形に?
では、仮に「新青函特例」ができるとすれば、どういう形になるのでしょうか。筆者が勝手に予想してみましょう(筆者の予想はよく外れます)。
普通乗車券だけで新幹線に乗れる特例が設定されないことが明確になった以上、青春18きっぷ「だけ」で新幹線に乗れるルールが設定されるとは考えにくいです。つまり、現在の特例の仕組みを受け継ぐような「奥津軽いまべつ~木古内間の乗車に限り、青春18きっぷで北海道新幹線に乗車可」といった形にはならないでしょう。
となると、特例が設けられるにしても、別料金を支払う形になる可能性が高そうです。「新青森~新函館北斗間に限り、別途、新幹線特急料金を支払えば新幹線に乗車可」というようなルールです。区間については、「新青森~新函館北斗」ではなく「新青森~木古内」もあり得ます。
4,650円の増収を狙うか
ただ、北海道新幹線開業後、木古内駅にはJR在来線は来なくなります。そのため、特例区間を木古内までにしてしまうと、道南いさりび鉄道にも通過特例を設ける必要が出てきます。それを避けるならば、やはり「新青森~新函館北斗間」を特例区間にせざるを得ません。
青森方には「奥津軽いまべつ」を特例の起点にする案もありそうですが、奥津軽いまべつには公式なJR在来線接続駅がないのがネックです。
新青森~新函館北斗間の指定席特急料金は繁忙期で4,650円もしますので、JR北海道にはいい収入になります。青春18きっぷユーザーに新幹線をシャットアウトするよりも、乗せて4,650円の増収を狙う、という目論見は理にかないます。
北海道新幹線の予想乗車率は3割程度と見込まれており、空気を運ぶくらいなら青春18きっぷ客を運んだほうがいい、という意見も出ていることでしょう。でも、客の立場からすれば、より安いフェリーに流れそうですが。
利用者に使いやすい形を
現段階では何の公式発表もありませんので、上記は全て島田社長の短いコメントから想像しただけの内容です。すでに特例廃止が内定しているものの正式発表できない段階のため、島田社長が「協議中」と言っただけの可能性もあります。最終的には「何の特例も設けられなかった」ということになるかもしれません。
とはいえ、青春18きっぷについて、JR各社で何らかの特例が検討されていることだけでも特筆すべきことではないでしょうか。それだけ青春18きっぷが重要な特別企画乗車券であることがJR各社内で認識されているわけです。
JR東日本の青春18きっぷの売り上げは、2014年度に29万枚を超え、前年度比5%増となりました。同社の青春18きっぷの売り上げが29万枚を超えたのは2008年度以来6年ぶりで、売り上げは好調です。これだけ愛されている企画きっぷですから、これからも利用者に使いやすい形で残してほしいものです。