埼玉高速鉄道が、年内にも事業再生ADRを申請する方針を固めました。日本経済新聞が報じています。
埼玉高速鉄道は赤羽岩淵~浦和美園間14.6kmを運営する第三セクター鉄道です。東京メトロ南北線と川口市内、さいたま市内を結び、2001年3月に開業しましたが、2014年3月期まで連続して最終赤字が続いています。輸送人員自体は伸びてきていますが、建設時の計画を下回って推移してきました。かつては岩槻への延伸計画もありましたが、すでに実現は絶望的となっています。
JALにも適用された方法
慢性的な赤字で、埼玉高速鉄道の有利子負債額は2014年3月期末で1,161億円に達しました。これに対し、1年間の営業収入は87億円に過ぎず、10億円もの営業損失を計上しています。2014年7月には、自力再建の断念が伝えられ、埼玉県が同社の債務の一部を肩代わりする方針を明らかにしました。
今回、同社が利用する事業再生ADRは私的整理手法の一つで、ADRとは、裁判外紛争解決手続きのことです。経営危機に至った企業が、法的整理に替えて中立な第三者機関によって自主的な整理手続きを行うことで、JALへの適用で知られています。法的整理をすると鉄道運行に支障が出る可能性もあるため、事業再生ADRを使用することになったようです。
自治体丸抱えで再建へ
具体的には、埼玉県やさいたま市は、民間の債務肩代わりのため第三セクター等改革推進債(三セク債)を起債します。起債額は300億~400億円規模に達するようです。三セク債は自治体の借金ですから、民間負債が自治体の債務に移し替えられることになるようです。
一方、埼玉県やさいたま市から同社への融資については、借入金を株式に振り替えるデット・エクイティ・スワップ(DES)を実施する方向とのことです。返済不可能な借入金を株式に振り替えるということは、実質的な返済免除を意味します。2014年3月末時点で埼玉県が約160億円、さいたま市が約16億円、川口市が約65億円を貸し付けており、これらが全て株式に転換されれば、合計で200億円以上が、事実上の公的負担になってしまいます。
このほか、鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの借入金約500億円については、当面は返済猶予を求めるようですが、将来的にはこれも公的負担になるかもしれません。
報道を見る限り、「自治体丸抱え」の再建で、主役の埼玉県は大変そうです。大赤字とはいえ、埼玉高速鉄道は1日9万人もの輸送人員があり、県民の役に立っているのは事実です。とりあえず自治体の力で債務をきれいして、営業黒字を積み重ねられるようになることを願うばかりです。