大井川鐵道が3月ダイヤ改正で普通列車を大減便。観光鉄道の草分けの苦境が物語る「地方鉄道の危機」

大井川鐵道が2014年3月26日にダイヤ改正を実施し、日中の普通列車の運行本数を大幅削減することを明らかにしました。金谷~千頭間の大井川本線の運行本数を現状より約4割削減します。同時に、沿線市町の島田市と川根本町に今後の収支改善策を議論する協議会の設置を要請しました。

大井川本線(金谷~千頭間)では、現在普通列車を14往復運転していますが(金谷~新金谷間運転除く)、3月26日以降は9往復に削減します。9本のうち1本は金谷駅と千頭駅のほぼ中間に位置する家山駅での折り返しとなります。削減する列車は昼間時間帯が中心です。

井川線(千頭~井川駅間)も現行1日4往復と一部折り返しを、3往復と一部折り返しに減らします。SLと接続しない千頭10時台の列車と、その折り返しとなる井川12時台の列車を削減すると思われます。

大井川鉄道

大井川鐵道では、SL列車の乗客を中心とする観光客向けが売上の約9割を占めるそうです。ところが、東日本大震災を機に団体バスツアー客などが減り、2013年も4月から12月までの団体バスツアー予約客が前年同期比46%減となるなど収益が悪化しています。

大井川鐵道は2011年度に7700万円、2012年度に1800万円の最終赤字を計上。2012年度末の借入金は35億円を超えていますが、2013年度も2011年度と同じくらいの最終赤字が続く見込みです。3期連続の最終赤字は会社として健全とは言えない状況で、人件費などの経費削減や不採算事業からの撤退など経営合理化に努める一方、今回の運行本数大削減を決断したようです。

今回のダイヤ改正で2014年度は約2300万円のコスト削減を見込みます。しかし、それだけで劇的な業績改善になるわけではありません。そのため、大井川鐵道では、沿線の島田市と川根本町に協議会設置を要請し、補助金や固定資産税の減免などを求める見通しです。

記者会見した伊藤秀生社長は「不採算部門の電車事業を削減し、SLを中心とした観光鉄道収入を確保することで収益改善につなげたい」と述べました。

協議会設置の要請を受けた島田市と川根本町は静岡県などにも参加を呼び掛けて、早期に設置する方針です。

大井川鐵道は、早くからSL運転をおこない観光客誘致を進めるなど、地方鉄道を観光鉄道として存続させる経営のモデルともいえる会社です。大井川鐵道の手法をまねて各地でSL運転が行われるようになると、近鉄や京阪など大手私鉄を引退した名車を普通列車で運行させたり、アプト式を導入したりと、さまざまな集客の工夫を凝らしてきました。しかし、それでも収支改善ができなかったようです。

観光鉄道の草分けともいえる大井川鐵道の苦境は、日本の地方鉄道の危機が極限に近づきつつあることを示しているのかもしれません。

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