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西九州新幹線「財政負担の法令改正」を検討。国交次官が表明、北陸新幹線にも適用か

JR九州が負担軽減を要請

西九州新幹線の未整備区間について、国交省の水嶋智事務次官が、法令改正を検討する考えを示しました。整備新幹線の財政負担の枠組み変更を視野に入れたもので、実現すれば北陸新幹線にも適用される可能性があります。新幹線政策の大きな転換点になるかもしれません。

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JR九州社長が国交次官を訪問

西九州新幹線(九州新幹線西九州ルート)は武雄温泉~長崎間が開業済みですが、新鳥栖~武雄温泉間は未整備で、在来線特急とリレー方式での運行が続いています。未整備区間では、財政負担や並行在来線の移管を嫌う佐賀県が建設に消極的で、事業化の見通しは立っていません。

ただ、最近になって、事態打開へ向けた関係者の動きが活発化してきました。2025年10月23日には、JR九州の古宮洋二社長が国土交通省を訪れ、水嶋智事務次官と会談。古宮社長は佐賀県の負担軽減策を要望しました。

西九州新幹線

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「フル規格整備が目標」

注目は、会談後の発言です。水嶋次官は報道陣の取材に対し、「乗り換えが固定化されるのはよくない」「現状を固定化しないで、西九州ルートのフル規格を整備することが目標」などと述べ、フル規格化を国として進める姿勢を明確にしました。

そのうえで、「それぞれが知恵を出して、最大の課題である財源問題を克服していく必要がある」「財源問題を解決するために法令の改正が必要になってくるのであれば、検討する必要もある」と踏み込みました。
 
国交省の事務方のトップが、整備新幹線の財源問題について、法令改正を視野に入れた発言をしたわけです。

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整備法、施行令の改正視野

整備新幹線の建設については、全国新幹線鉄道整備法と施行令に基づき、運行するJR各社が支払う貸付料を整備費に充て、残りの不足分を「国が3分の2」「沿線自治体が3分の1」を負担するという枠組みになっています。

財源問題を正面から法令改正で乗りきるのであれば、この整備法と施行令の改正が視野に入っているのでしょう。事務次官が思いつきで発言をすることはないでしょうから、すでに省内である程度検討が進んでいるとみられます。

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例外条項を追加か

ただ、法令を変えれば、今後の新幹線整備にすべて適用されます。そのため、改正するとなれば、西九州新幹線だけでなく、他の新幹線整備にも対応する形にしなければなりません。

その場合、「2対1」の負担割合の原則を変更すると影響が大きいので、原則はそのままにして、例外的な条項を加える可能性もあるでしょう。

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北陸新幹線延伸にも対応か

具体的には、佐賀県や、北陸新幹線における京都府のように、「新幹線を求めていない自治体」の負担を軽減するような枠組みを検討し、法令に加えるのではないでしょうか。

沿線自治体の財政負担が問題になっているのは、現状では佐賀県だけです。しかし、北陸新幹線新大阪延伸においても、現状ルールで沿線自治体の負担額を定めれば、京都府や大阪府でも大問題になるのは間違いありません。

そのため、法令改正は西九州新幹線だけでなく、北陸新幹線にも対応する形になるのでしょう。実現すれば、整備新幹線に関する政策の大きな転換となる可能性があります。(鎌倉淳)

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