JR九州は、日韓航路に投入する新しい大型高速船として三胴船(トリマラン)を採用し、その建造に向け造船会社と協議を開始すると発表しました。デザインは同社の観光列車を手がけてきた水戸岡鋭治氏に依頼し、2020年の運航開始を目指します。
ジェットフォイルの更新用
JR九州は、現在、博多と韓国・釜山を結ぶ高速船「ビートル」を3隻体制で運航しています。いずれもジェットフォイルですが、この更新用として、80m級の三胴船(トリマラン)を導入する方針を固め、造船会社と協議を開始します。座席数は、現在の席数の2倍以上にあたる、500席前後にする見通しです。
協議をしているのは、オーストラリアの造船会社オースタル(AUSTAL)です。 54ヶ国約100社に対し、アルミ船300隻以上を建造してきた実績のある造船会社です。
新造候補となっているトリマラン(三胴船)は、水と接する下部船体が中央に1つ、左右に2つ平行している船型です。横揺れに強く、甲板面積を広く取れ、燃費性能が良いという長所があります。
しかし、世界の旅客船に広く導入されている船体ではありません。国内では2013年に佐渡汽船による導入構想が報じられましたが、結局双胴船に落ち着いたという経緯があります。未確認ですが、導入されれば国内初のトリマラン航路になるかもしれません。
トリマランの理由
新型高速船では、博多~釜山の運航時間として3時間40分を目指すそうです。トリマランはジェットフォイルに比べると速度が遅く、現行より30分程度、時間がかかることになります。
なぜ、速度の速いジェットフォイルでなく、トリマランにしたのでしょうか。その背景として、ジェットフォイルは高額で、近年は製造実績がほとんどないという点が挙げられそうです。東海汽船が2017年5月にジェットフォイルを川崎重工業に発注しましたが、じつに22年ぶりの国内製造として話題になったほどです。
また、LCCの普及も理由の一つでしょう。速度を求める人は、日韓路線ではLCCを選択する傾向があり、ジェットフォイルで対抗するのは難しくなってきています。
そのため、JR九州は、高速性を追求するよりは、乗る楽しみを提供する航路を目指す方針に変更し、速度が遅くても揺れが少なく快適で、甲板を広く取れる高速船を選択したのでしょう。これまで認められていなかった夜間の航行も可能となるそうです。
実際、日本経済新聞2017年12月8日付によりますと、「観光列車のように乗ること自体を楽しめるようにしたい」と、JR九州の狙いを記しています。「船の外に出て景色を楽しめたり、売店や免税店の充実させたりして船内を楽しめるようにする」そうです。JR九州の「乗る楽しみ」といえば、やはり水戸岡デザイン、ということなのでしょう。
水戸岡デザインのトリマラン日韓航路。対馬海峡に新しい旅を提供してくれそうで、楽しみです。(鎌倉淳)