いまや、首都圏のLCC拠点空港となった成田空港。その2014年のアクセス調査がまとまりました。調査内容は多岐にわたりますが、興味深いのは格安航空会社LCCとフルサービスキャリアFSCによるアクセス手段の違い。旅慣れた人が多そうなLCC旅客は、格安バス利用が多いかと思いきや、必ずしもそうではないようです。
調査内容からわかった、LCC旅客とFSC旅客のアクセス手段の違いを見てみましょう。
「本線特急」の利用者多し
この調査は、成田国際空港株式会社が行った「平成 25年度成田国際空港アクセス交通等実態調査」です。2014年3月14日(金)に、成田空港への全ての入港者と入港車両を対象にしたカウント調査を行いました。また、主に旅客を対象にアンケート用紙を配布し、成田空港へのアクセス交通に関する意識等について調査を行いました。
この日の全入港者数は 93,073 人で、そのうち出発旅客は全入港者の51%(47,714 人)です。また、アンケート用紙の配布対象者は63,781人で、配布数は16,673票、回収数 は3,175 票で、回収率は 19.0%、サンプル率(回収数/配布対象者)は 5.0%でした。
最初に、空港従業員などを除いた出発旅客に限定して、成田空港のアクセス手段を見てみると、以下のようになっています。
【全出発旅客】
成田エクスプレス 9%
快速エアポート成田など 5%
スカイライナー 9%
アクセス特急など 7%
京成本線 12%
空港直行バス 21%
貸切バス 9%
ホテル送迎バス 6%
自家用車 20%
タクシー 2%
その他 0%
※鉄道42%、バス・自動車57%
全体として鉄道が42%というのは、世界の主要国際空港の中でも高い数字と思われます。鉄道の内訳では、有料特急は成田エクスプレスとスカイライナーがほぼ互角。これを「スカイライナーが健闘している」とみるか、「成田エクスプレスが健闘している」とみるかは、意見が分かれるところでしょう。スカイライナーは速達性、成田エクスプレスは発着地点の多さで、それぞれ棲み分けているといえるかもしれません。ちなみに、「成田エクスプレス」の9%の内訳は、日本人が8%で、外国人13%となっていて、外国人がよく利用していることがうかがえます。
一方、料金不要列車ではアクセス成田(スカイアクセス線)と京成本線を擁する京成がJRを圧倒しています。こちらは速達性の違いもあるでしょうが、運転本数の差がそのまま数字に表れているともいえます。なかでも、京成本線の利用者が多く、「本線特急」の強さがうかがえます。
LCC旅客は成田周辺からが多い
さて、アンケート調査では、LCCとFSCに分けて、出発旅客のアクセス手段を分析しています。調査当日のLCCの利用割合は、出発旅客の15.2%でした。なお、LCCとは、ジェットスター・ジャパン、バニラエア、Peach Aviation、エアプサン、イースター航空、チェジュ航空、スクート、ジェットスター、ヴァージン・オーストラリア、エアベルリンで、コードシェア便を含むようです。
まず、首都圏の地域別に旅客の当日出発地について、LCC の利用状況別にみると、LCC 旅客で最も多かったのは千葉県の成田周辺地域(15.4%)でした。次いで千葉県の東葛地域(12.5%)、東京都区部の中央・北地域(11.9%)、東京都区部の北西地域(11.3%)となっています。
一方、FSC旅客で最も多かったのは、東京都区部の北西地域(12.3%)でした。次いで、東京都区部の南西地域(11.1%)、東京多摩地域(9.0%)となりました。
LCC 旅客と FSC旅客を比較しますと、LCC旅客は FSC旅客に比べて成田近辺を当日出発地としている割合が高くなっています。これは、成田空港発の LCC 便は出発時刻が早朝となっているものが多いため、利用者が成田空港周辺のホテルや旅館に宿泊していることなどが理由と考えられます。また、東葛地域や都内北部の利用者が多いのは、羽田より成田が近いエリアの人が、国内線でも成田空港を選びやすく、成田の国内線はLCCが主体である、という理由が挙げられるでしょう。
格安バスの利用者はFSC旅客?
さて、こうした出発地を前提として、当日のアクセス手段を見てみましょう。
【海外旅行者】
左 LCC(n=134) 右FSC(n=1,630)
成田エクスプレス 14.2% 16.9%
快速エアポート成田など 4.5% 5.9%
スカイライナー 8.2% 10.6%
アクセス特急など 7.5% 8.5%
京成本線 20.1% 10.4%
空港直行バス 14.2% 23.1%
貸切バス 0% 1.0%
ホテルバス 7.5% 5.4%
自家用車 11.9% 10.1%
駐車場送迎車 4.5% 3.4%
タクシー 0% 0.9%
その他 7.5% 3.4%
海外旅行でのLCC利用者では、絶対割合でも対FSCでも京成本線が多いのがわかります。一方、空港直行バスが対FSC比で低いと言えます。
【国内旅行者】
左 LCC(n=235) 右FSC(n=88)
成田エクスプレス 3.8% 10.0%
快速エアポート成田など 6.4% 5.7%
スカイライナー 7.7% 8.0%
アクセス特急など 12.3% 20.5%
京成本線 23.8% 25.0%
空港直行バス 16.2% 15.9%
貸切バス 0% 1.1%
ホテルバス 7.2% 3.4%
自家用車 14.9% 5.7%
駐車場送迎車 6.0% 0%
タクシー 0% 3.4%
その他 1.7% 1.1%
国内旅行の場合は、FSC旅客が多くないうえ、スカイマークもそれに含まれているため、対FSC比較はあまり意味がないかもしれません。それでも比較すると、成田エクスプレスとアクセス特急が対FSCで利用者が少なく、ホテルバスや自家用車の利用者が多くなっています。国内旅行のLCC旅客が自家用車を多く使っているのは、意外といえば意外ですが、成田近辺の居住者利用が多いからでしょうか。
また、京成本線の利用者が海外旅行と比べてやや多くなっています。これについては、早朝のLCC旅客は成田近辺の住民か、成田近辺に当日宿泊したりしている人が多く、その旅客は京成本線が使いやすいからとみられます。
【全体】
左 LCC(n=369) 右FSC(n=1,718)
成田エクスプレス 8% 17%
快速エアポート成田など 6% 6%
スカイライナー 8% 10%
アクセス特急など 11% 9%
京成本線 22% 11%
空港直行バス 15% 23%
貸切バス 0% 1%
ホテルバス 7% 5%
自家用車 19% 13%
タクシー 0% 3%
その他 4% 3%
全体的に、LCC旅客では、空港直行バスの利用者がそれほど多くないことが特徴的です。東京駅からの格安バスを利用しているLCC旅客は、意外と少ないのかもしれません。格安バスの利用者は急増していますが、FSC客が多く利用していることがうかがえます。
スカイライナーを利用しない理由
この調査には、なぜか、スカイライナーにだけ「利用しなかった理由」を尋ねる項目があります。それによると、「バス・車の方が便利だから」(22.0%)が最も多く、次いで「遠回りになるから」(18.1%)、「料金が高いから」(16.4%)「スカイライナーについてよく知らない」(2.8%)「本数が少ないから」(1.9%)の順となりました。
筆者の個人的な感覚では、スカイライナーを利用しないときは時間が合わないときが多いので、「本数が少ないから」がもっと多くていいような気がしましたが、多くの人は本数に不満を持っていないようです。