国土交通省は、九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)による全面開業が、当初予定の2022年度より遅れて2025年春以降になることを明らかにしました。2016年2月10日に開かれた与党の検討委員会に示しました。
与党検討委員会で認める
九州新幹線長崎ルートは博多~長崎間を結ぶ路線で、博多~新鳥栖間は現在の九州新幹線と共用し、新鳥栖~武雄温泉間は在来線を走行、武雄温泉~長崎間はフル規格の新幹線を新たに建設します。
これまで2022年度の開業を予定していましたが、国土交通省は2015年12月にフリーゲージトレインの開発が滞っていることを正式に認め、2年程度開発が遅れること明らかにしていました。つまり、そもそも2022年度の全面開業は無理なことは既報なのですが、今回、全面開業を2025年度以降とすることを明確に認めたといえます。
量産車の製造は2022年度以降に
朝日新聞2016年2月12日付によりますと、国交省が新たに示した工程表では、2018年度後半にフリーゲージトレインの量産先行車の設計・製造に着手。2021年度後半から走行試験や訓練運転をし、量産車の設計・製造を2022年度に始めるとのこと。量産車の訓練運転は2024年度末までに終える計画ですが、開発が順調に進んでも全面開業は2025年度にずれ込む見込みです。
ではどうするのでしょうか? その点は明確ではありません。先に製造完了した1~2編成だけで運行する「限定開業」案もありますが、上記の工程表を見る限り、それでも2022年度の開業は難しそう。そもそも、今後、この工程表が守られる保証はどこにもありません。開発状況によっては、さらに開業が後ろ倒しになる可能性も十分にあります。
4、5年ずれこむ?
実際、そうした観測は地元にも広まっているようで、長崎県議会の長崎ルート建設促進議員連盟の八江利春会長は「3年遅れとなると、4、5年ずれ込む可能性も出てくる」と懸念しています。
八江会長は、将来的な全線フル規格での整備を前提に、在来線特急と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」で2022年度までに先行開業させるべきだとの考えを示したそうです。そうなるとそもそもフリーゲージトレインなんて要らない、という話になってしまいます。
このように、長崎県では「フル規格派」が増えている印象です。しかし、フル規格化には佐賀県が建設費負担を嫌って反対しています。
フリーゲージトレインは、長崎以外にも使える技術ですし、ぜひ開発は進めてほしいところ。と言いたいのですが、これだけ遅れてばかりだと、さすがにそんな声も小さくなってしまいそうです。(鎌倉淳)