JR西日本は、新しいクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(トワイライトエクスプレスみずかぜ)」の運行を2017年6月17日に始めると発表し、料金も明らかにしました。JRのクルーズトレインの運行は、JR九州の「ななつ星in九州」、JR東日本の「四季島」(2017年5月1日運行開始)に続く3列車目。1室2名利用の価格としては最高額となる1人125万円のコースを設定しました。
2泊3日の「ザ・スイート」は125万円
「トワイライトエクスプレス瑞風」は、かつて大阪~札幌駅間を結んでいた寝台列車「トワイライトエクスプレス」から名前の一部を引き継ぎました。「トワイライトエキスプレス」は、日本の豪華寝台列車の草分けともいえる列車ですので、豪華列車の元祖の伝統を引き継ぐ名称です。
今回発表された料金は、1泊2日で2人1室の「ロイヤルツイン」が27万円(1人あたり、以下同)が最低価格。1人1室の「ロイヤルシングル」は1泊2日で33万円~、最も価格の高い「ザ・スイート」は1泊2日で75万円~となりました。2泊3日コースの「ザ・スイート」の最高価格は125万円です。
「四季島」「ななつ星」と比べると
JR東日本の「四季島」は、最低額が1泊2日コースの「スイート」で32万円、2人1室利用時の最高額が3泊4日コースの「四季島スイート」で95万円です。JR九州の「ななつ星in九州」では、最低額が1泊2日コースの「スイート」で30万円、2人1室利用時の最高額が3泊4日コースの「DXスイートA」で95万円です。
比較すると、1泊コースの最低額は「瑞風」が最も安いものの、全体の最高額も「瑞風」です。他社の最高レベルの客室が3泊コースで1人100万円以下の金額なのに対し、「瑞風」は2泊コースで100万円を超えました。
コース内容の異なる旅行なので、単純に金額だけを比較するのはフェアではありませんが、それでも「瑞風」の価格が際立って高いのは、「ザ・スイート」が、1車両1室の超豪華客室であることが理由とみられます。1人1室利用では、「ななつ星」の「DXスイートA」で最高155万円の価格設定がありますが、2人1室利用では「瑞風」が国内最高です。
「ザ・スイート」は4人まで使える
実際、「瑞風」の「ザ・スイート」は、列車の客室としては日本一の豪華さになり、日本の鉄道旅行のフラッグシップ的存在となる可能性があります。そのため、これだけの価格設定でも、おそらくは満室で、予約は困難になるでしょう。
ただ、「ザ・スイート」は、エキストラベッドにより最大4人まで利用可能で、その場合は2泊で1人90万円~、1泊なら56万円~という設定です。それでも十分高いですが、グループで豪華寝台客室を体験するには良さそうです。
割安な長距離列車の導入も検討
さて、これでJR3社でクルーズトレインが揃い踏みすることになります。日程は1泊~3泊、価格帯は1室2名利用で1人約30万円~約100万円というのが「相場」として形成されてきました。一般人がおいそれと乗れる価格帯ではなく、富裕層や外国人、記念日利用が主な客層になりそうです。
JR西日本では、「瑞風」の価格発表と同時に、「より気軽に長距離の旅を楽しみたいというニーズも多い」として、「瑞風」より割安な長距離列車の導入を検討する考えも示しました。詳細は明らかではありませんが、各社報道をみると、JR西日本管内で完結する列車をまずは想定しているようです。
いま、JRで鉄道旅行をしようとすると、青春18きっぷ(普通列車)、新幹線・特急、クルーズトレインという三階層からの選択となります。このうち、新幹線・特急とクルーズトレインの価格差が大きすぎますので、この間を埋める価格帯を狙ってくるのではないでしょうか。
JR3社のクルーズトレインは、たしかに魅力的ですが、「ふつうの旅行者」が気軽に利用できる価格水準ではありません。JR西日本が、「ふつうの旅行者」に向けた、「少しだけ贅沢な列車」を計画しているのだとすれば、そっちのほうが楽しみです。(鎌倉淳)