テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第6回が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。
マドンナは大島麻衣。AKB48のオープニングメンバーの一人です。30歳と若く、今回もしっかり歩けそうな女性の起用となりました。目標は、奈良・東大寺をスタートし、3泊4日で飛騨高山に到達するというものです。
例によって正解ルートを検証してみますが、今回はルートの選択肢がありすぎて、この記事は1万2000字超の長編となりました。お時間のあるときにお読みください。
なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。その場合はご容赦、ご指摘ください。文中は敬称略です。
実際に旅したルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。
▽1日目
東大寺大仏殿・国立博物館0816→0825 JR奈良駅/JR奈良駅西口0911→1033尾山診療所前→徒歩0.6km→梅の郷月ヶ瀬温泉1115→1122月瀬橋→徒歩0.8km→月ノ瀬1236→1311上野市駅1427→1506関バスセンター→徒歩3.0km→工業団地口→徒歩4.0km→亀山駅1825→1904平田町駅
▽2日目
平田町駅0810→0854近鉄四日市/近鉄四日市駅前1006→1049山城駅1100→1119東員駅→徒歩1.0km→六把野1150→1222桑名駅前1240→1258なばなの里→徒歩6.5km→ピアゴ十四山店1447→1506善太橋西1514→1526近鉄蟹江駅前→徒歩1.5km→戸田1613→1657金山 1714→1732栄/名古屋栄1830→1911航空館boon1952→2006小牧市役所前→徒歩1.8km→小牧駅2135→2154岩倉駅2218→2240尾張一宮駅前
▽3日目
名鉄一宮駅前0658→0729川島/川島松倉0830→0909名鉄岐阜バスターミナル0950→1050せき東山→徒歩3.5km→富加駅→徒歩3.2km→木野池北1445→1546美濃太田駅南口/美濃太田駅1730→1805八百津ファミリ→センター前
▽4日目
八百津ファミリーセンタ→前0705→0750下落合→徒歩6.3km→赤河1011→1030白川口駅前1030→1050三掛→徒歩3.9km→飛騨金山駅1210→1217マツオカ前→徒歩8.6km→焼石駅前1523→1551下呂駅前1600→1731高山濃飛バスセンター
ということで、結果は成功です。成功したので、一行がたどったルートは「正解」といえます。
とはいうものの、番組によると徒歩区間は史上最長の45kmに達したとか。さすがに歩きすぎな気もしますし、もう少しラクなルートもありそうです。検証してみましょう。
ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z 第6回 奈良・東大寺~岐阜・飛騨高山 ふれあい珍道中
【出演者】田中要次、羽田圭介、大島麻衣
【ナレーター】キートン山田、太川陽介
名阪国道は一般道?
最初に、一行はJR奈良駅で、京都方面に向かうか、三重方面に向かうの検討をします。バス案内所の係員の勧めもあり、三重方面にあたる月ヶ瀬へ向かいました。
このとき、京都方面へ向かっていたらどうなっていたかも気になりますが、壮大な検証になりそうなので、後述します。結果として、一行の初日の歩みは快調でしたので、奈良駅でのルート選択は間違っていなかったと言えます。
その後、上野市駅の案内所で、名古屋行き高速バスの下道区間利用のアドバイスを受けたのは、クリーンヒットでした。これにより、関バスセンターまで容易に到達できました。
この高速バス「名古屋上野高速線」は、関まで名阪国道を走ります。名阪国道は高速道路のような高規格道路ですが、料金は不要で、分類としては一般国道自動車専用道路です。
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」において、高速道路と一般道路の区分は明瞭ではありませんが、過去の事例から無料道路は高速道路に分類されないようです。
この名阪国道を「下道というか、高速道路ではありませんので」と表現した案内所係員は、「バス旅」の「ツウ」といえそうです。
本当の「下道」をたどっていたら
仮に、この「名古屋上野高速線」に気づかなかったらどうなっていたでしょうか。本当の「下道」をたどった場合です。番組でも触れられていた汁付方面へのバスに乗ることになったでしょう。
▽1日目
月ノ瀬1236→1311上野市駅1420→1507汁付→徒歩5.0km→平木1702→1802津駅前1820→1852椋本1902→1922亀山駅前1945→2018平田町駅
このように、高速バスに乗らずとも、上手く乗り継げば1日目に平田町駅まで到達することは可能で、実際ルートに追いつけます。ただ、津駅前の接続時間は18分。到着するや椋本方面への乗り継ぎを見つけ出し乗車しなければ間に合わず、現実的には難しそうです。
上手く乗り継げなかった場合、津に一泊することになるかもしれません。その場合の乗り継ぎを見てみましょう。
▽1日目
1311上野市駅1420→1507汁付→徒歩5.0km→平木1702→1802津駅前
▽2日目
津駅前0626→0658椋本0708→0728亀山駅前0745→0826平田町駅0845→0922近鉄四日市/近鉄四日市駅前1006→1049山城駅
山城駅で実際ルートに追いつけます。要するに、上野市駅で名阪国道ルートを知ったのは僥倖でしたが、気づかなくても大勢に影響はなかった、ということです。
工業団地口でバスを待ったら
実際ルートに戻りましょう。関バスターミナルで降りて、徒歩で亀山駅方面に向かった一行。途中「工業団地口」というバス停を見つけます。ここには、シャープ亀山工場方面と亀山駅を結ぶバスが立ち寄ります。
到着したのは16時頃。しかし、次のバスは1時間半先までないので、一行は乗らずに亀山駅まで歩き続けます。このときに、バスを待っていたらどうだったでしょうか。
▽1日目
工業団地口1735→1744亀山駅1825→1904平田町駅
実際ルートに追いつきます。このバスを待っていれば、4kmの徒歩を省略できました。
弥富市のコミュニティバス
2日目も順調で、桑名から「なばなの里」に昼過ぎに到着します。その先、一行は「ピアゴ十四山店」まで歩いて、弥富市のコミュニティバスを掴まえました。
ただ、このバスは少し手前の近鉄弥富駅や弥富市役所も経由します。仮に一行が近鉄弥富駅や弥富市役所からバスに乗っていたら、以下のような乗り継ぎができたかもしれません。
なばなの里→徒歩4.5km→近鉄弥富駅南口1425(弥富市役所1428)→1506善太橋西(以下、実際ルート)
現実の一行は、なばなの里からピアゴ十四山店まで6.5kmも歩いていますので、駅でこのバスを掴まえていたら、2kmの徒歩を省略できたわけです。
一行は、弥富駅や市役所の近くを通っていますので、どちらかに立ち寄っていれば、バスの情報をもっと早い段階で得られたように思えます。市役所はともかく、駅にも立ち寄らなかったのであれば、日頃の田中・羽田コンビには珍しいことで、少し不思議に感じられました。
河合橋で乗り継いだら
その後、一行は、弥富市と飛島村のコミュニティバスを善太橋西で乗り継ぎ、近鉄蟹江駅前に至ります。そこで、先へ行くバスが途絶えてしまいました。
ところが、ここでも「ツウ」ぽい男性から声を掛けられ、名古屋市営バスの発着する戸田バス停の情報を教えられました。
戸田は名古屋市の西端にあたり、バス停はよそ者にはわかりにくい立地です。そんなバス停までの道筋を得られたのですから、これも僥倖といえるでしょう。
ただ、近鉄蟹江駅まで来ないで、もう少し徒歩を減らすルートもありました。次のような形です。
▽2日目
善太橋西1514→1517河合橋→徒歩0.5km→河合小橋1546→1629神宮東門1645→1712栄(以下、実際ルート)
時間的な短縮効果はほとんどありませんが、実際ルートに比べて徒歩を1km程度減らせます。
神宮東門からは、さまざまなコースバリエーションがありそうですが、番組を見ている限り、一行が仮に神宮東門に着いたとしても、栄や名古屋駅方面へ向かっていた可能性が高いでしょう。そのため、神宮東門からのバリエーションルートの検討は省きます。
「とよやまタウンバス」で小牧へ
話を戻します。一行は、多少余分に歩いたとはいえ、名古屋市内までの道のりは順調だったといえます。
名古屋からどの方面に向かうべきか。判断の根拠を求めて、栄に着いた一行は、名古屋駅のバスターミナルに向かおうとしました。ところが、栄のバス停付近にいた「乗り物好き」という男性から、思わぬ情報を得ます。小牧方面へ抜ける「とよやまタウンバス」です。
この男性は、名古屋駅から小牧方面の路線バスが存在しないことも教えてくれました。バス路線に精通している男性のアドバイスに従って、一行は名古屋駅に行かず、「とよやまタウンバス」に乗ることを決断します。
「とよやまタウンバス」は、ルイルイ・蛭子時代の第14弾で登場した路線で、ファンにはおなじみです。岐阜方面へ向かうなら適切な選択でしょう。一行に、このバスを教えた男性もやっぱり「ツウ」といえそうです。
瀬戸・中津川ルート
この男性に出会わなければ、一行はおそらく、名古屋駅のバスセンターまで行ったことでしょう。そうしたら、北東方面へ抜けるルートを教えられたかもしれません。「瀬戸・中津川ルート」です。
仮に名古屋駅で情報を集めて一泊し、翌朝名鉄バスセンターから瀬戸に向かったとして、どういう道順になるのか見てみましょう。
▽3日目
名鉄バスセンター0808→0932瀬戸駅前1000→1013新瀬戸駅1036→1105しなのバスセンター→徒歩5.5km→下半田川口1242→1256多治見駅前1420→1509瑞浪駅前1530→1558釜戸駅前→徒歩5.6km→武並駅前
▽4日目
武並駅前0830→0846恵那駅前1020→1057中津川駅前1212→1314加子母総合事務所前1322→1356下呂駅前1400→1531高山バスセンター
瀬戸から多治見、恵那、中津川を経て下呂に抜けるルートです。瀬戸市内から下半田川には、火・木・土に限りコミュニティバスが運行していますので、タイミングが合えば、しなのバスセンターから下半田川口の5.5kmの徒歩区間をバスに乗って省略できます。
その場合は、名古屋で早起きしなければなりません。以下の乗り継ぎになります。
▽3日目
名鉄バスセンター0620→0739瀬戸駅前0748→0803新瀬戸駅0814→0850下半田川町/下半田川0911→0927多治見駅前0945→1014駄知1021→1041瑞浪駅前1530→1558釜戸駅前→徒歩5.6km→武並駅前
▽4日目
武並駅前0830→0846恵那駅前1020→1057中津川駅前1212→1314加子母総合事務所前1322→1356下呂駅前1400→1531高山バスセンター
いずれにしろ、この「瀬戸・中津川ルート」なら、2日目に名古屋で宿泊しても、高山に到達できることがわかります。
犬山ルート
実際ルートに戻りましょう。一行は小牧に夜遅く着きますが、さらに岩倉方面へのバスがあることがわかり、乗り継いで尾張一宮まで到達します。
とはいえ小牧から一宮方面は、方角的には高山へ向かっていません。夜遅くに一宮に向かうなら、小牧に一泊して、順方向である犬山へ向かったほうがいいのではないか、と思われた方も多いでしょう。
検討してみると、小牧~犬山へのルートも可能です。
▽3日目
小牧駅0717→0753野口勾当田→徒歩2.1km→神尾0913→0934犬山駅東口0943→1012善師野台 →徒歩0.7km→長坂8丁目1028→1035西可児駅1314→1351可児駅1400→1428八百津ファミリーセンター(以下、実際ルート)
現実には、西可児駅で2時間半も待つ田中・羽田コンビではないでしょうから、西可児駅から可児駅前まで、5kmほど歩くでしょう。そして可児駅で八百津方面の情報を確認し、八百津へ抜けて、実際ルートに収斂した可能性が高そうです。
つまり、小牧から犬山、可児へ抜ける「犬山ルート」でもゴールは可能でした。
岐阜での選択
実際ルートに戻りましょう。2日目の一行は、栄から小牧を経由してバスを小刻みに繋ぎ、23時近くまで粘って尾張一宮に至ります。翌3日目も順調で、午前中早い時間に名鉄岐阜バスターミナルに至りますが、ここで大きな決断を迫られます。
関から下呂を目指すか、美濃から郡上を目指すか、という選択です。
名鉄岐阜バスターミナルの案内所で情報を得ようとしますが、どちらのルートを取っても、バスで高山まで繋がるという確信が持てません。
大島麻衣は「決め手がないと乗らないんですか?」と田中に迫り、「医療大学の病院に行ったらコミュニティバス絶対通ってますよ」と背中を押します。羽田の賛同もあり、結局、一行は関方面を目指すことを決断しました。
郡上ルート
ここは、大きな決断ポイントでした。仮に郡上を目指していたらどうなっていたでしょうか。たとえば、以下のようなルートが見つかりました。
▽3日目
名鉄岐阜1140→1245ほらどキウイプラザ1259→1324福祉センター→徒歩7.5km→高畑温泉湯之本館
▽4日目
高畑温泉湯之本館→徒歩0.5km→高畑0719→0742郡上八幡駅1120→1157美濃白鳥駅1435→1517ひるがのスキー場→徒歩4.3km→下野々俣公民館前1842→2002高山濃飛バスセンター
ご記憶の方もいるでしょうが、これも「とよやまタウンバス」と同様、ルイルイ・蛭子時代の第14弾と同じルートです。これを「郡上・ひるがのルート」と呼びましょう。
第14弾では、洞戸(ほらど)から福祉センターへバスで着き、神明温泉の送迎バスで宿泊。翌朝に福祉センターから全長約4.5kmのタラガトンネルを抜けて宇留良に至り、郡上八幡に達しています。
4.5kmのトンネルを歩くのは息苦しく、第14弾では番組のハイライトともなりました。
今回の検証ルートでは、神明温泉ではなく、タラガトンネルを抜けた先にある高畑温泉に泊まると仮定しました。福祉センターから宇留良を通過して高畑温泉まで、歩き抜けたという設定です。
その後、第14弾とほぼ同じルート通れば、高山に到達できます。ただし、第14弾当時は、美濃白鳥から牧戸までバスがありましたが、現在は途中のひるがのスキー場止まりになっています。
そのため、上記ルートでは、ひるがの~下野々俣公民館前が徒歩となっています。それでも、岐阜~高山間の総歩行距離は12km程度に収まり、実際ルートに比べれば少なくなっています。
郡上ルートのバリエーション
郡上八幡からひるがの高原を経由しないルートも考えてみましょう。たとえば、以下のコースが見つかりました。
▽4日目
高畑温泉湯之本館→徒歩0.5km→高畑0719→0742郡上八幡駅/郡上八幡駅前1227→1315郡上明山→徒歩7.0km→大原1704→1750清見支所前1755→1811高山濃飛バスターミナル
この「郡上明山ルート」では、夕方の18時すぎに高山に着けます。
あるいは、飛騨金山(マツオカ前)へ抜けて、実際ルートと同じ下呂経由でも到達できます。
▽4日目
高畑温泉湯之本館→徒歩0.5km→高畑0719→0742郡上八幡駅/郡上八幡駅前0903→0945方須下1311→1348マツオカ前→徒歩8.6km→焼石駅前1630→1658下呂駅前1730→1901高山濃飛バスセンター
この「郡上・金山ルート」は、マツオカ前から焼石駅前まで歩くのは実際ルートと同じで、時間も遅いですが、最終バスで高山にたどり着くことができます。
このほかにも、岐阜から郡上経由でゴール可能なルートはありそうです。ただ、バスのみで乗り継げるルートは見つからず、それなりの距離の徒歩を挟むことになります。
せき東山からの別ルート
実際ルートに戻りましょう。岐阜から一行は「せき東山」を経て、美濃太田駅へ向かいます。せき東山の営業所で、白川町を目指すことをアドバイスされた一行は、当面の目標として、美濃加茂市のコミュニティバスのある富加駅を目指すことになりました。
結果的に、せき東山から下呂までが、断続的な徒歩区間となり、一行を苦しめることになります。もう少しラクなルートがなかったか、考えてみましょう。
関市のコミュニティバスの路線図を見てみると、市中心部から北東に向かう関上之保線というバスがあります。これに乗れば、白川方面へ近づけそうです。以下のようにつながります。
▽3日目
1050せき東山1055→1131武儀生涯学習センター1156→1210川合車庫1213→1227小合回転上→徒歩2.5km→袋坂1251→1320マツオカ前→徒歩8.6km→焼石駅前1630→1658下呂駅前1730→1901高山濃飛バスセンター
小合回転場から袋坂までの2.5kmを24分で歩けば、3日目にゴールできます。袋坂で1251のバスに乗れなくても、以下のように4日目にはゴール可能です。
▽3日目
1050せき東山→1131武儀生涯学習センター1156→1210川合車庫1213→1227小合回転上→徒歩2.5km→袋坂1506→1530飛騨金山駅
▽4日目
飛騨金山駅→徒歩9.1km→焼石駅前0702→0748下呂駅前0800→0931高山濃飛バスセンター
この「川合・袋坂ルート」は、八百津を経由するルートより合理的で、徒歩距離も少なく、優れたルートと言えそうです。ただ、上記乗り継ぎではせき東山で5分の接続時間しかなく、現実的には見つけ出すのは難しいとは思いますが。
美濃太田駅案内所の好対応
実際ルートに戻りましょう。一行はせき東山から富加駅へ至り、次のバスまで間があるため美濃太田方面までさらに歩きます。
しかし、結局、木野池北で疲れ果てて断念。美濃太田への到着時刻は、富加駅からのバスに乗ったのと同じ結果となりました。したがって、富加駅から木野池北までの3.2kmは、無駄歩きだったことになります。
それでも苦労して到着した美濃太田駅の案内所では、重要な情報が得られました。八百津から下河原を経て福地峠を越えるルートです。
途中6.3kmの峠道を挟むものの、美濃太田から白川口へ抜けるにあたり、一行が取り得るこれより優れたルートは見当たりません。丁寧に対応してくれた、案内所係員のクリーンヒットでしょう。
加子母ルート
最後の難関となったのは、白川口から下呂までの道のりです。一行は国道41号線・高山本線に沿って下呂を目指すというオーソドックスなルートを取ります。そのため、白川口から焼石まで、合計12.5kmを歩くことになりました。
徒歩を省略する方法も、探せばなくはありません。以下のようなルートがあります。
▽4日目
白川口駅前1110→1146越原小谷→徒歩4.0km→万賀1308→1314加子母総合事務所前1322→1356下呂駅前 1400→1531高山濃飛バスセンター
この「加子母ルート」を見つけられれば、白川口から下呂までの徒歩区間は4kmだけで済みます。分水嶺はなく、川沿いに下る道のりです。万賀では、中津川からのバスをつかまえられます。
あるいは、次のようなルートもあります。
白川口駅前1030→1112 JA佐見支店→徒歩5.0km→芋沢上1255→1323下呂駅前1400→1531高山濃飛バスセンター
この「佐見ルート」も徒歩距離は5kmにとどまりますが、佐見と芋沢上の間に松坂峠があり、標高200m程度の上り下りがあります。それでも、国道41号線ルートよりはラクだったでしょう。
薄氷の勝利
要するに、白川口から下呂へは、もう少しラクなルートが複数あったわけです。白川口駅で、しっかり情報を得られればと悔やまれますが、乗り継ぎ時間がほとんどなく、状況的に難しかったでしょう。
最終日ということもあり、歩行距離は長くなっても修正が効きやすい、手堅いルートを選ばなければならないという事情もあるでしょう。結果として、一行は主要街道沿いのルートをたどったわけです。
そして一行は最終日の夕方、なんとか焼石駅まで歩き通し、コミュニティバスで下呂駅に16時頃に到着します。
下呂から高山まで残り約50km。時間的にゴールは難しいかな、と思ったところ、下呂・高山間を一気につなぐバスがあることが判明。無事、高山にゴールとなりました。
「大逆転」というほどのドラマではありませんでしたが、「成功」を意外な結末と捉えた視聴者も多かったでしょう。薄氷の勝利をもぎ取った、という印象です。
三重県と岐阜県は接している
さて、「バス旅」攻略のポイントとなるのが県境です。県境をまたいで走行するバスが少ないため、そこで長距離の徒歩が生じやすいからです。言葉を換えれば、「バス旅」において、通過する県境は少なければ少ないほどいいわけです。
今回、一行が通過したのは、奈良、三重、愛知、岐阜の4県。しかし、三重県と岐阜県は接していますので、経路によっては愛知県を通らなくても済むはずです。ならば三重県から直接、岐阜県を目指すという考え方もあったのではないでしょうか。
三重県内の実際ルートで、もっとも岐阜県に近づいたのは、東員町付近です。ここから岐阜市を目指したらどうなるか、考えてみましょう。
▽2日目
平田町駅0810→0854近鉄四日市/近鉄四日市駅前0906→0956山城駅前1000→1019東員駅→徒歩1.0km→六把野1037→1102阿下喜/阿下喜駅1142→1219古田→徒歩3.1km→時1436→1545大垣駅前1615→1645岐阜聖徳学園大学1707→1739名鉄岐阜
このように、六把野から桑名方面ではなく阿下喜を経て岐阜方面へ向かえば、3kmほどの徒歩を挟むだけで、2日目の夕方に難なく岐阜市に着けます。
桑名から岐阜を目指せるか
このルートを一行が実際にとり得たか。それは何とも言えません。ただ、四日市付近において、当面の目標を「岐阜市」に置いていれば、たどれる可能性はあったのではないでしょうか。
番組を見る限り、一行は、当面の目標を名古屋方面に置いていたように見受けられます。そのため、三重県と岐阜県を直結するルートの優先順位を低く見ていたのかもしれません。
あるいは、先が見えにくくなった桑名から、北を目指すという選択肢もあったはずです。検討したところ、岐阜市へたどり着けなくはありません。
▽2日目
六把野1150→1222桑名駅前1340→1410上深谷町→徒歩1.0km→下野代1600→1616多度駅前→徒歩5.0km→石津南1832→1916岐阜羽島駅1954→2020大垣駅前2056→2118墨俣2148→2215名鉄岐阜
現実論としては、桑名という名古屋を目前にした場所で、こんな難しそうなルートは選択しづらいでしょう。一行が、バスの豊富そうな大都市・名古屋へ向かったのは、自然の成り行きといえるかもしれません。
岐阜直結ルートで進んだら
仮に一行が三重県から直接岐阜県に入る「岐阜直結ルート」を選び、2日目に岐阜市まで着いていたら、どうなったでしょうか。もう少し見てみましょう。
実際ルートをたどったとして、以下のような形が考えられます。
▽3日目
名鉄岐阜バスターミナル0635→0735せき東山→徒歩3.4km→わらべ村0946→1030美濃太田駅南口/美濃太田駅1205→1140八百津ファミリーセンタ→前1450→1535下落合→徒歩6.3km→赤河(以下実際ルート)
赤河から白川口への最終バスに間に合わないので、翌4日目に、赤河で実際ルートに追いつかれます。
ベストルートを考える
では、岐阜市に2日目に到達し、第14弾ルートをたどったとすればどうなるでしょうか。1日目の亀山界隈の徒歩の無駄を省いたと仮定して、まとめて記載してみましょう。
▽1日目
東大寺大仏殿・国立博物館0816→0825JR奈良駅/JR奈良駅西口0911→1033尾山診療所前→徒歩0.6km→梅の郷月ヶ瀬温泉1115→1122月瀬橋→徒歩0.8km→月ノ瀬1236→1311上野市駅1427→1506関バスセンター→徒歩3.0km→工業団地口1735→1744亀山駅1825→1904平田町駅
▽2日目
平田町駅0810→0854近鉄四日市/近鉄四日市駅前0906→0956山城駅前1000→1019東員駅→徒歩1.0km→六把野1037→1102阿下喜/阿下喜駅1142→1219古田→徒歩3.1km→時1436→1545大垣駅前1615→1645岐阜聖徳学園大学1707→1739名鉄岐阜
▽3日目
名鉄岐阜0817→0925ほらどキウイプラザ0940→1005福祉センター→徒歩5.1km→宇留良1300→1327郡上八幡駅1330→1416美濃白鳥駅1435→1517ひるがのスキー場→徒歩4.3km→下野々俣公民館前1842→2002高山濃飛バスセンター
このように、3日目の夜に高山に到達できます。徒歩距離は約17.9kmで、短くはありませんが、「Zシリーズ」としては標準的でしょう。
一行が現実的に取り得るルートで、ベストを一つ選ぶとすれば、この「三重・岐阜・郡上ルート」ではないか、と筆者には感じられました。
京都方面へ向かっていたら
では、最初の宿題に戻りましょう。番組の冒頭で大きな選択肢の一つとして提示された、奈良市から京都方面へ向かうルートです。
検討し始めるとキリがなさそうなので、試しに一つのルートをたどってみました。
▽1日目
東大寺大仏殿・国立博物館0816→0825JR奈良駅0851→0924高の原駅0934→0957木津駅1018→1041渋川西→徒歩2.6km→三山木駅1136→1143同志社大学正門1149→1158新田辺駅1255→1328長山口→徒歩4.8km→小田原1549→1558大石小学校1609→1632石山駅1700→1726浜大津1805→1855草津駅西口
▽2日目
草津駅西口0730→0825守山駅東口→徒歩4.3km→野洲駅0938→0959村田製作所1005→1035近江八幡駅/近江八幡駅北口1055→1125石寺栢尾→徒歩1.5km→国道石塚1145→1204能登川駅→徒歩8.7km→河瀬駅北口1440→1510彦根駅前→徒歩6.0km→米原駅西口1655→1723長浜駅1800→1842近江長岡駅
▽3日目
近江長岡駅0742→0753柏原→徒歩7.1km→関ヶ原0935→0945牧田上野1058→1144大垣駅前1210→1232墨俣1245→1314名鉄岐阜1333→1431せき東山→徒歩3.4km→わらべ村1654→1728美濃太田駅南口/美濃太田駅1730→1805八百津ファミリーセンター
ということで、3日目になんとか実際ルートに追いつきます。上記ルートは歩きすぎな気もしますし、これより早いルートもあるでしょうが、詳細な検討はしていません。京都・滋賀経由でも、ゴールできる可能性はあったということだけです。
僥倖とクリーンヒット
全体を通してみると、ゴールできるルートは豊富にありますし、奈良~高山間の絶対的な距離も長くはありませんから、今回のお題の難易度は低かったと思います。
振り返れば、今回の一行は、「ツウ」に導かれる僥倖と、案内所係員のクリーンヒットに恵まれました。上野市で名阪国道ルートを教えられ、蟹田で戸田バス停を教えられ、名古屋で「とよやまタウンバス」を教えられ、美濃太田で福地峠越えを教えられました。
逆に考えれば、栄で乗り物好きの男性に出会わず、名古屋のバスターミナルへ行っていたら、瀬戸市方面へ向かっていた可能性もあるでしょう。岐阜の案内所係員が郡上方面に詳しければ、そのルートを教えてくれたかもしれません。
つまり、今回、一行がたどったルートは、出会いによってもたらされた偶然で構成されたわけです。
正解ルートを探すのは
今回は、「これが正解」と明確に表現できそうなルートがない一方で、ゴール可能なルートは多数ありました。その意味で、「出会い」に左右される要素が、とりわけ大きな回だったと思います。
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」は「ふれあい」をサブタイトルに入れているくらい、出会いをテーマにしてきました。それだけに、出会いによって変わりうるゴールへの道筋を取り上げて、「想定ルート」や「正解ルート」を探すことは、無粋なのかも知れません。(鎌倉淳)