テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第16弾が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。今回のマドンナは梅宮アンナ。新ナレーターは津田健次郎です。
お題は中国地方。岡山市の後楽園から3泊4日で岩国市の錦帯橋を目指します。チェックポイントは尾道、出雲大社の2カ所。例によって正解ルートを検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者の推定です。☆はチェックポイントです。
▽1日目
後楽園前08:50→09:09岡山駅10:35→11:40倉敷駅前12:10→12:43倉敷芸術科学大学12:50→13:02新倉敷駅14:40→15:19寄島総合支所前→徒歩3.2km→乗時→徒歩2.9km→大島小学校前→徒歩1.3km→道通下17:44→18:28笠岡駅前
▽2日目
笠岡駅前08:10→09:14福山駅前0930→10:12長江口→徒歩0.1km→千光寺山ロープウェイ山麓駅10:30→10:33千光寺山ロープウェイ山頂駅(☆)10:45→10:48千光寺山ロープウェイ山麓駅→徒歩0.1km→長江口10:59→11:05尾道駅前11:50→12:57甲山営業所13:00→14:09三次駅前15:12→16:00赤名/赤名駅16:10→17:07掛合の里17:50→18:06三刀屋バスセンター19:15→19:58出雲市駅
▽3日目
出雲市駅07:30→08:07出雲大社連絡所→出雲大社(☆)→出雲大社連絡所09:20→09:49出雲市駅10:28→10:41上塩冶車庫11:15→11:30出雲市駅12:21→13:05三刀屋バスセンター13:44→14:00掛合の里15:13→16:15赤名駅/赤名17:40→18:28三次駅前
▽4日目
三次駅前07:37→08:24吉田出張所/広電吉田出張所08:40→10:16広島バスセンター11:40→12:34阿品台西→徒歩1.6km→広電阿品駅13:22→14:19サンランド車庫14:37→14:44玖波駅15:00→15:25大竹駅→徒歩1.9km→和木駅16:13→16:29岩国駅16:45→17:00錦帯橋
ということで、日没前に錦帯橋に到着。田中をして「基本ルートよりも早く着いちゃったんじゃないか」と言わしめるほど、余裕のゴールでした。出演者が胸を張る早着ですので、この乗り継ぎを「正解」と表現して差し障りないかと思いますが、途中、気になるポイントもありました。検証してみましょう。
※Googleマップのルートは概略です。実際の乗り継ぎルートとは異なります。(以下同)
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第16弾 岡山・後楽園~山口・錦帯橋
【放送日】2021年6月5日(土)18時30分~20時48分(テレビ東京系列)
【出演】田中要次、羽田圭介、梅宮アンナ
【ナレーター】津田健次郎
どちらから先に回るか
今回のお題には尾道、出雲大社の2箇所のチェックポイントがあり、どちらを先に回ってもいい、というルールでした。このルールが、番組冒頭、岡山駅で一行を悩ませます。新見方面へ出て出雲大社へ向かうか、倉敷へ出て尾道に向かうか。早くも、大きな選択を迫られました。
案内所で聞き込んで検討した結果、一行は先に尾道へ向かうルートを選択します。出雲大社を先に目指していたらどうなっていたかが気になりますが、それについては後述します。
寄島からの別ルート
岡山駅から倉敷駅へ向かった一行は、倉敷芸術科学大学、新倉敷駅と巧みに乗り継いで寄島総合支所に到達。しかし、そこから先がつながらず、徒歩を余儀なくされます。乗時、大島小学校前とバス停を見つけますが、いずれも時間の合う便がなく、結局、道通下まで計7.3kmを歩いて、笠岡駅行きのバスをようやく捕まえました。
この区間で、もう少しうまく乗り継げる方法はなかったのでしょうか。調べてみると、寄島~里庄線という地元のタクシー会社が運行する路線バスがあり、これに気付いていれば西へアプローチできました。
▽1日目
新倉敷駅14:40→15:19寄島総合支所前16:17→16:26里庄住宅前→徒歩4.8km→笠岡駅17:45→18:15井原バスセンター18:35→19:20福山駅前
里庄住宅前(上記地図の「国道2号」付近)から笠岡駅まで4.8kmを1時間19分で歩き切れば、笠岡駅から井原経由で福山駅に抜けることができます。ただ、このルートを探し出した上で、きわどい乗り継ぎを成功させるのは、難易度としては高そう。寄島から里庄へのバスを発見して乗ったとしても、笠岡泊まりになっていた可能性が高いでしょう。
仮に、上記乗り継ぎを実現して、1日目の19時すぎに福山駅に着いたとしても、尾道行きの最終バスは終わっていて先に進めません。翌朝の尾道行きは実際ルートと同じ便に収斂しますので、大勢に影響はありません。
浅口市のコミュニティバス
寄島総合支所からは、浅口市のコミュニティバスも出ていて、それに乗れば、一行が歩いたのと同じ方角で、少し西まで行くことができます。
▽1日目
新倉敷駅14:40→15:19寄島総合支所前/寄島総合支所16:13→16:22鏡西→徒歩5km→道通下17:44→18:28笠岡駅前
寄島総合支所で1時間ほど待ち、浅口市のコミュニティバスに鏡西まで乗車すれば、道通下への徒歩距離を減らすことができました。
とはいえ、一行は寄島総合支所にて、3km先の乗時まで歩けばバスがあるという情報を得て歩き始めた、という経緯があります。そのため、上記のように寄島で1時間待つという選択はあり得なかったでしょう。
3.2kmを25分で歩けるか
その乗時までの行程ですが、一行は3.2kmを25分で歩ききれば、15時45分発の最終バスに乗れるという情報を得ていました。これを実現するには平均時速7.7kmでの行軍が必要で、さすがに困難です。したがって、乗れなかったことはミスとは言えません。つまり、寄島総合支所から道通下まで歩いたことはやむを得なかった、という結論になります。
結局のところ、岡山から倉敷へ向かって1日目に到達可能な場所は、普通に乗り継げば笠岡駅で、うまくやったとしても福山駅まででした。1日目に福山駅より先に進む方法もあるにはありますが、現実的ではないので省略します。
そして重要な点として、翌朝の尾道の千光寺山ロープウェイの始発は9時なので、早く行っても意味はありません。2日目、ロープウェイに乗ってから甲山営業所へ向かうには、尾道駅11時50分発までバスがありませんので、1日目にどんなに急いでも、尾道で実際ルートに収斂する仕掛けになっていたわけです。
三次の三択
実際ルートに戻ります。一行は2日目、尾道の千光寺山ロープウェイに乗ってチェックポイントをこなし、甲山営業所を経て三次駅に至りました。
ここはちょっとした分岐点です。赤名、庄原、作木方面の3ルートを候補として案内所で聞き込みをしたものの、決定的な情報は得られません。
結局、一行は確信のないまま、赤名方面へ向かいます。さいわい、この判断は的中し、絶妙の乗り継ぎで出雲市に到達することができました。
仮に、三次で庄原や作木方面へ向かっていたらどうなっていたでしょうか。まず、庄原方面へ向かい、国道432号線を北上するルートを見てみます。
▽2日目
甲山営業所13:00→14:09三次駅前14:43→15:22庄原駅17:25→18:32道の駅たかの
次に、作木方面へ向かった場合のルートも見てみます。
▽2日目
甲山営業所13:00→14:09三次駅前17:41→18:45伊賀和志上
道の駅たかのも、伊賀和志上も、三次を拠点とする備北交通のエリア内です。そこまでは行けるのですが、そこで日没を迎えてしまいます。
つまり、庄原方面、作木方面のいずれも、2日目に島根県に入ることすらできません。その先のバスもつながらず、行き詰まります。要するに、一行が赤名へ向かったのは大正解でした。
大田ルート
実際ルートに戻ります。一行が絶妙な乗り継ぎで出雲市駅に到着したのは2日目の20時頃。羽田は、さらに出雲大社まで歩こうという意気込みを漂わせましたが、梅宮の疲労にも配慮して出雲市駅付近にて宿泊します。
現実問題として、出雲大社までは9km程度離れていて、20時から歩くのは体力的に困難と思われます。そのため、「もし歩いていたら」という検証は省きます。
翌朝、参拝を終えた一行は、出雲市駅で大田方面に向かうか、三次方面に戻るかで悩み抜きます。最終的には、大田方面へ向かう小田行きのバスを「さよなら~♪」の懐かしい歌詞とともに見送ったわけですが、仮にそのバスに乗ったらどうなっていたでしょうか。
▽3日目
出雲市12:05→12:37JR小田駅/小田駅前14:23→14:37口田儀→徒歩0.2km→越堂15:13→15:50大田バスセンター16:00→17:56新庄上市→徒歩0.5km→安芸新庄18:51→20:05可部駅前20:16→20:52広島バスセンター
▽4日目
広島バスセンター07:15→08:09阿品台西→徒歩1.6km→広電阿品駅09:04→10:00サンランド車庫11:17→11:24玖波駅12:00→12:25大竹駅→徒歩1.9km→和木駅13:21→13:36岩国駅前13:45→14:00錦帯橋
この乗り継ぎでは、大田~新庄上市間で高速バス「石見銀山号」の下道区間を利用します。これにより、3日目夜に広島バスセンターに到着できます。4日目は実際と同じルートをたどったと仮定して、14時に錦帯橋にゴールできます。
これを「大田ルート」と表記します。大田ルートは、高速バスの下道を活用した鮮やかな乗り継ぎといえるでしょう。
一行は、上塩冶車庫で「石見銀山号」の存在を認識していましたし、JR出雲市駅で大田バスターミナルまでの乗り継ぎも確認できていましたので、思い切って小田行きに乗ってしまえば、Zシリーズ屈指の完勝を演じられたに違いありません。
大田で乗り遅れたたら
ちなみに、大田へ向かったものの、アクシデントなどで大田バスターミナル16時発の「石見銀山号」に乗り遅れた場合でもゴールは不可能ではありません。3日目を大田市泊とし、以下のように乗り継げます。
▽4日目
大田バスセンター07:30→09:26新庄上市→徒歩0.5km→安芸新庄12:06→13:54広島バスセンター16:00→16:54阿品台西→徒歩1.6km→広電阿品駅17:11→18:02サンランド車庫→徒歩2.3m→玖波駅19:00→19:25大竹駅→徒歩5.8km→岩国駅前21:15→21:34錦帯橋
広島バスセンター16時発のバスに乗り、阿品台と広電阿品駅の1.6kmを17分で乗り継げれば、大竹駅~岩国駅を歩くことでゴール可能です。逆に、阿品乗り継ぎを失敗すればゴールも失敗します。
阿品17分乗り継ぎの難易度はやや高いので、「広島バスセンターを16時のバスに乗ればゴールできる」とまでは表現しませんが、ギリギリでゴール可能性の残る乗り継ぎといえます。
ちなみに、広島から阿品台へのバスは、一行が実際に乗った11時40分発の次が、16時発です。つまり、広島からアプローチする場合、11時40分発に乗れれば余裕でゴール、乗れなければ16時発になり危うい、という設定になっていました。16時発を逃すとゴールは不可能でした。
益田ルート
もう一つ、日本海沿いのルートも検討してみましょう。大田から浜田方面へ進んだ場合を考えてみます。
▽3日目
出雲市12:05→12:37JR小田駅/小田駅前14:23→14:37口田儀→徒歩0.2km→越堂15:13→15:50大田バスセンター17:30→18:48江津駅
▽4日目
江津駅07:20→08:05浜田駅前08:10→09:37益田駅前10:00→11:16六日市13:40→14:05錦町駅15:14→16:21小郷橋16:56→17:10鮎谷17:30→18:06錦帯橋
このように、益田駅まで出た後、岩国方面へ南下することでゴール可能です。
益田~六日市間は「清流ライン高津川号」という高速バスの下道を利用します。六日市~錦帯橋は、岩国市内の生活交通バスを細かく乗り継いで錦帯橋に至るので、乗り継ぎの難易度は高そうです。ただ、運転手からうまくルートを聞き込めばチャンスはあるでしょう。
基本に忠実なプレイ
実際ルートに戻ります。一行は3日目に三次に到達。宿に入る前に翌朝のバス時刻表を見て、甲山方面と吉田方面に早朝の便があることを確認したうえで、翌朝、案内所のオープンを待たずに吉田行きに乗車しました。
ここで案内所が開くのを待っていたら、広島到着はもっと遅くなっていたはずです。前夜に時刻を確認し、始発に乗るという、「ローカル路線バスの旅」の基本に忠実なプレイで、広島バスターミナルに午前中に到着し、ゴールを確実なものにしました。
前述したとおり、今回のお題は広島11時40分発に乗れるかが大きなポイントになっていましたので、三次で始発バスに乗ることが重要でした。その点で、的確な判断だったといえます。
和木で乗り逃していたら
最後に気になった点があるとすれば、和木駅の乗り継ぎでしょうか。大竹駅から1.9kmを歩いて和木駅に到着した一行は、間一髪で岩国行きのバスに間に合いました。このバスは岩国行きの最終便ですので、乗り遅れたら地団駄を踏んでいたことでしょう。
とはいえ、仮に乗り遅れたとしても、岩国駅まで4kmあまりを歩けばゴール可能です。一行の脚には余力がありましたので、大勢に影響はなかったでしょう。
ということで、「尾道→出雲」の順で回る場合において、一行は最速解ではないものの、手堅い乗り継ぎでゴールしたといえます。ミスらしいミスはなかったと表現していいでしょう。