テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」の第5弾が放送されました。リーダー髙木菜那に加え、野口啓代、雛形あきこが参加。女性3人が、和歌山県・那智の滝から、愛知県・犬山城まで、3泊4日のバス旅に挑戦しました。
今回の目標は、和歌山県の那智の滝から愛知県の犬山城まで、路線バスを乗り継いで3泊4日で到達する、というものです。例によって、この正解ルートを検証してみましょう。
いつものことですが、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解のうえ、お読みください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。

「土曜スペシャル ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」第5弾 和歌山県・那智の滝→愛知県・犬山城
【放送日時】2025年5月10日(土) 18時30分~20時54分(テレビ東京系列、見逃し配信あり)
【出演】高木菜那、野口啓代、雛形あきこ
【ナレーション】日野聡
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者による推定です。
▽1日目
那智の滝前09:44→09:59那智駅10:08→10:48新宮駅13:00→13:49熊野市駅前14:33→15:20新宮駅15:55→16:53川湯温泉
▽2日目
川湯温泉06:53→12:24大和八木駅12:41→12:59橿原神宮前駅東口13:06→13:16明日香奥山・飛鳥資料館西13:44→13:59桜井駅南口/北口14:43→15:19天理駅15:47→16:31JR奈良駅/JR奈良駅西口17:17→18:53石打19:03→徒歩10km→21:00ごろ上野市駅
▽3日目
上野市駅06:07→06:46関バスセンタ06:53→徒歩2.5km→07:27工業団地口07:32→07:42亀山駅 08:36→09:18平田町駅10:35→11:18近鉄四日市駅11:36→12:26山城駅前13:10→13:30東員駅→徒歩1.2km→13:45六把野14:15→14:54桑名駅前15:10→15:24伊曽島→徒歩2.4km→16:10松永17:15→17:48近鉄弥富駅→徒歩7.8km→20:16津島駅20:35→21:26名鉄バスセンター
▽4日目
名古屋駅08:51→09:01広小路本町→徒歩0.5km→09:37名古屋栄09:47→10:39航空館boon10:47→10:56小牧市民病院→徒歩1.3km→小牧駅前11:54→12:12味岡駅12:53→13:01田県神社前駅14:06→14:45総合犬山中央病院14:56→15:17犬山駅東口/西口16:17→16:24城前広場
ということで、4日目16時20分ごろに、犬山城近くの城前広場バス停に到達。無事ゴールとなりました。
4日目夕方のゴールとなりましたので、快勝といえるでしょう。ただ、気になる部分もありましたので、全体を振り返っていきましょう。
※Googleマップのルートは概略です。実際とは異なります(以下同)。
※配信先で地図をご覧になれない場合は、こちらをご覧ください。
内陸ルートと沿岸ルート
那智の滝を出発した一行は、新宮駅で大きな選択を迫られます。紀伊半島の内陸部を北上する「内陸ルート」と、沿岸部を進む「沿岸ルート」の、どちらを選ぶかです。
少し前まで、沿岸ルートには「熊野古道ライン」という長距離路線バスがあったのですが、2025年3月末で廃止されました。そのため、沿岸ルートは難しそうです。
一方で、内陸ルートには日本一の長距離路線バス「八木新宮特急」が健在です。しかし、内陸ルートは迂遠にも感じられます。
一行は新宮駅の案内所での情報収集に気を取られ、11時15分発の熊野市行きを見逃してしまいました。一方で、「八木新宮特急」の最終便も出てしまい、翌朝まで便がないことを知ります。
それならばと、13時発の熊野市行きに乗りました。熊野市駅まで行ってみると、案の定、先への見通しが立ちません。仕方なく新宮駅に取って返し、内陸ルートを選択。1日目は川湯温泉に泊まることになりました。
十津川に早めに向かったら
ここで気になるのは、内陸ルートは、本当に翌朝まで便がなかったのか、ということです。
より早く新宮を出発して、少しでも先に進んでいれば、途中からの便を捕まえられたりしないのでしょうか。確認してみると、以下のような乗り継ぎが見つかりました。
▽1日目
新宮駅13:46→14:37本宮大社前15:26→16:03十津川温泉
▽2日目
十津川温泉07:03→09:49五條バスセンター10:18→11:09近鉄大和高田駅→徒歩3km→五位堂駅11:56→12:24王寺駅12:30→12:43法隆寺前13:09→14:07JR奈良駅
1日目に新宮駅13時46分発のバスに乗れば、十津川温泉まで行けます。2日目、十津川温泉からは、八木新宮特急より早い時間に、福神駅行きの広域コミュニティバスがあります。これに乗ると、五條で乗り継いで近鉄大和高田駅まで先着できます。
大和高田駅から五位堂駅まで歩けば、王寺駅、法隆寺前を経由してJR奈良駅まで、全て奈良交通のバスでつながります。この情報を大和高田駅の案内所で短時間に聞き出すのは難しそうですが、実現できれば、JR奈良駅に14時すぎに到着します。
実際に到着したのは16時半ごろでしたので、2時間半も早く奈良駅に到着できるわけです。新宮駅から熊野市駅に行かず、十津川方面に進めば、奈良駅の到着時刻を前倒しできる可能性があった、ということになります。
ただ、JR奈良駅から石打方面へのバスは17時17分までありませんので、ここで実際ルートに収斂します。また、この乗り継ぎで大和高田駅から大和八木駅方面へ歩いた場合も、大和八木から橿原方面へのバスで実際ルートに収斂します。
結局のところ、1日目にまっすぐ十津川に向かっていたとしても、いずれは実際ルートに追いつかれるということです。言い換えると、新宮から熊野市への往復は、最終的に、後の乗り継ぎに影響を及ぼさなかったようです。
熊野市から先へ進んだら
実際の一行は、新宮駅を13時に出るバスに乗車し、13時49分に熊野市駅に到着しました。しかし、そこからバスがつながらないことを確認し、新宮駅に引き返しました。
仮に、ここで引き返さずに、沿岸部を先に進んでいた場合、どうなっていたでしょうか。確認してみると、バスで行けるのは熊野市内の遊木町までです。
▽1日目
熊野市駅前15:55→16:25新鹿駅前17:10→17:19遊木町里の上
遊木町から尾鷲駅まで30km以上もあります。1日目に尾鷲駅にまで到達できずに終わってしまうわけで、2日目以降も厳しい展開となります。
つまり、熊野市駅に14時頃に着いた時点で、沿岸部ルートを進まなかった判断は、間違っていませんでした。
下北山ルート
ただし、熊野市駅から、沿岸部ではなく内陸部へ転じるルートもありました。以下のような乗り継ぎです。
▽1日目
新宮駅13:00→13:49熊野市駅前14:22→15:02桃崎→徒歩9.4km→下桑原
▽2日目
下桑原06:52→09:52大淀バスセンター10:08→10:36橿原神宮駅東口11:36→11:46明日香奥山・飛鳥資料館西→徒歩4.5km→13:00ころ桜井駅13:34→14:03天理駅14:47→15:21JR奈良駅
熊野市駅から内陸部の桃崎に至り、9.4kmを歩いて奈良県に入り、下北山村の下桑原に泊まります。下桑原近隣には、数は少ないものの、宿泊施設はあります。
すると、2日目は下桑原から吉野の大淀バスセンターまでの長距離バスを捕まえられます。橿原神宮前駅には10時半頃到着。実際ルートの橿原神宮前到着が13時ごろなので、2時間半も早く着くわけです。
熊野市駅での判断は?
ただ、下北山ルートを採っても、JR奈良駅から石打に向かうバスは、実際ルートと同じです。つまり、奈良駅で実際ルートに収斂します。
現実問題として、熊野市から下北山村方面に分け入るには勇気が要りますし、下北山村から大淀へのバスの情報を得てからでないと、決断はしづらいでしょう。
9kmの山越えがあるので、徒歩距離が特段に短いルートでもありません。したがって、下北山村ルートが優れているとはいえません。
長々と書きましたが、新宮駅を13時に出るバスに乗車し、熊野市駅に14時前に着いてから、最終的に引き返したことは間違っていなかったといえます。最初の判断は正しかったことになります。
ただ、新宮駅11時15分発のバスに乗れていれば、別の展開もあったでしょう。それについては長くなるので後述します。
大和八木駅で13時15分発に乗っていたら
実際ルートに戻ります。2日目、一行は八木新宮特急で大和八木駅に至り、短い待ち時間で情報収集をしたうえで、橿原神宮前方面のバスに飛び乗りました。
このとき、案内所では13時15分発のバスを提示されていました。しかし、野口が12時41分発のバスの存在を確認していて、その後の好接続につなげました。
仮に、ここで案内された13時15分発に乗っていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
大和八木駅13:15→13:40橿原神宮前駅東口14:36→14:46明日香奥山・飛鳥資料館西17:38→17:53桜井駅南口
このように、橿原神宮前や明日香での乗り継ぎが非常に悪くなります。現実にはこんなに待たないでしょうから、歩いて桜井駅に向かうことになるでしょう。その場合でも、桜井駅到着は16時頃になりかねません。
仮に、桜井駅に16時に着いたとして、以降の乗り継ぎは以下のようになります。
▽1日目
桜井駅南口16:05→16:43天理駅17:02→17:58JR奈良駅
JR奈良駅に到着するのが18時ごろです。奈良駅を17時17分に出る石打行きに間に合いませんので、奈良での宿泊を余儀なくされていたでしょう。後述しますが、奈良に泊まってしまうと、今回はゴールが難しいので、失敗に終わった可能性がきわめて高くなります。
つまり、大和八木駅で12時41分のバスがあることを確認した野口の行動は、今回のゴール成功につながるスーパープレイだったといえそうです。
名張ルート
実際ルートに戻ります。一行は、大和八木駅から巧みにバスを乗り継いで桜井駅に至り、そのまま奈良駅に到達しました。さらに、17時17分のバスで石打まで足を伸ばし、最後は10kmの深夜行軍をこなして、21時過ぎに上野市駅にたどり着きました。
ポイントとなったのは、奈良盆地から上野市方面へのアプローチです。放送では取り上げられませんでしたが、ルートとしては、天理市から名張方面を目指す道筋もありました。
▽2日目
桜井駅南口15:13→15:34野依15:42→15:52榛原駅17:22→17:58室生口大野駅→徒歩8km→赤目口駅→徒歩3.5km→21:00名張駅
▽3日目
名張駅前06:25→07:04上野市駅07:27→08:06関バスセンター→徒歩2.5km→工業団地口09:42→09:52亀山駅前10:05→10:46平田町駅12:35→13:18近鉄四日市14:28→15:09山城駅前15:20→15:42東員駅16:05→16:09鳥取16:13→16:54桑名駅前17:20→17:34伊曽島→徒歩2.4km→松永19:00→19:33近鉄弥富駅→徒歩7.8km→津島駅21:30→22:28栄
桜井駅から名張方面に向かった場合、室生口大野駅まではバスで乗り継げます。そこから11kmを歩けば、2日目のうちに名張駅に到達できます。
3日目名張駅を始発のバスで上野市駅に向かうと、名阪国道を走るバスは実際ルートより1便遅くなりますが、関方面へすすめます。実際ルートに即して進むと、19時半頃に近鉄弥富駅に到達できるでしょう。
実際ルートより、約2時間遅れです。そこからすぐに津島駅に向かえば、なんとかその日のうちに名古屋市内に入れます。
しかし、室生口大野駅から名張駅まで、10km以上も深夜行軍をしなければなりませんし、乗り継ぎとして実際ルートに勝るわけでもありません。したがって、名張ルートが優れているとはいえません。
針ルート
もう一つ、針へ進む道筋も検証してみましょう。以下のようになります。
▽2日目
天理駅18:40→19:13針インター
▽3日目
針インター06:25→07:01榛原駅07:53→08:48曽爾村役場/曽爾役場前09:25→10:08名張駅前10:25→11:09上野市駅
このように、2日目の夜に針インターに到着して、そこで行き詰まります。針インターから上野市駅までは25kmもあるので、深夜に歩くこともできません。やむを得ず、榛原駅へ転じて名張を目指すことになるでしょう。
かつては、針から先に、国道山添まで路線があったのですが、23年4月に廃止されています。また、奈良~名古屋間の高速バスが名阪国道を走り、国道山添まで利用できますが、予約制のため、この番組では利用できません。
したがって、針に行ってしまうと、その後の展開が難しく、かなり厳しい局面が訪れたでしょう。といっても、端から選択肢に入っていなかったようですが。
奈良市内に泊まっていたら
実際ルートに戻ります。一行は天理市から奈良市に至りました。奈良駅到着時刻が16時半頃で、泊まるには早いですが、山間部に分け入るには二の足を踏む時間です。宿の豊富な奈良市内に泊まるという選択肢もありうるでしょう。
では、仮に奈良市内に泊まっていたら、どうなっていたでしょうか。実際ルートと同じルートをたどると、以下のようになります。
▽3日目
JR奈良駅09:11→10:47石打12:46→13:11上野市駅14:27→15:06関バスセンター→徒歩2.5km→工業団地口17:35→17:45亀山駅18:00→18:40平田町駅18:50→19:33近鉄四日市駅19:41→20:24山城駅前
実際ルートに即した乗り継ぎでは、3日目は山城駅前までとなります。後述しますが、3日目は、最低限、桑名駅まで進んでいないと、ゴールは困難です。つまり、2日目に奈良市内で泊まってしまうと、そこでゲームは終わってしまう可能性が高いといえます。
したがって、一行が奈良市内に泊まらずに、石打まで進んだことには大きな価値がありました。石打に宿がないため、最後は上野市まで歩き切ることになってしまいましたが、その深夜行軍が、勝利を引き寄せたといえるわけです。
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「ローカル路線バスの旅W 第5弾 那智の滝→犬山城」の正解ルートを考える【2】小さなミスが重なって