「ローカル路線バスの旅W 第3弾 伊良湖岬→善光寺」の正解ルートを考える【2】選択肢豊富で迷いやすく

言い残したことはないですか

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「ローカル路線バスの旅W 第3弾 伊良湖岬→善光寺」の正解ルートを考える。運命の分かれ道はどこだった?

ローカル路線バスの旅W第3弾
Ⓒテレビ東京

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押山往復をしなければ

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W第3弾」のルート検証、話を押山からの実際ルートに戻します。

押山から引き返した一行は、根羽方面に転じて、飯田に至りました。

押山往復が無駄に感じられましたが、仮にどんぐりの湯から根羽方面に直接向かっていたら、どうなっていたでしょうか。

▽2日目
東岡崎駅06:35→07:45足助08:34→09:16どんぐりの湯前10:18→10:39上郷→徒歩5km→根羽16:30→17:17こまんば17:37→18:05飯田駅前

押山方面行きのバスとほぼ同時に出る10時18分発の根羽方面行きのバスは、途中の上郷止まりです。根羽行きは実際ルートの12時18分発までありません。

上郷から根羽までは約5kmあるので、2時間早く出発しても、根羽到着時刻は実際ルートと大きくは変わりません。その先の飯田への乗り継ぎも同じです。

つまり飯田方面に向かうなら、押山往復による時間的なロスはありませんでした。その点でみれば、どんぐりの湯で、押山方面に「偵察」したこと自体は、間違っていなかったと言えます。

 

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伊那谷ルート

一行は、2日目夕方に飯田駅に到着。バスの営業所へ足を伸ばして情報を収集したところ、その先の乗り継ぎが難しいことを知ります。そのため、飯田に宿泊した後、引き返して南木曽方面に進みました。

飯田から先は伊那谷です。南北の交通機関は飯田線が担っていて、高速道路も整備されています。コミュニティバスは東西に補完的に走る路線がほとんどで、細切れに乗り継いでいかねばなりません。

番組中で、髙木は「飯田は(高速道路が)あるから、長いバスは通らない。飯田は乗り継げはするけど、時間はかかるのではないか」と喝破しましたが、実際その通りの状況で、突き進んだとしても、ルート探しは難航したでしょう。

あえて、机上論でルートを探してみると、たとえば以下のようになるでしょうか。

▽3日目
飯田駅前06:50→07:27北消防センター前07:42→07:50役場→徒歩0.8km→下伊那厚生病院08:05→08:45竜口交差点東→徒歩14.2km→飯島駅13:30→14:00昭和伊南総合病院→徒歩5.5km→赤木駅前16:06→17:18ベルシャイン伊北店前→徒歩6.6km→辰野駅

▽4日目
辰野駅→徒歩3.7km→ヤナ上06:20→06:39岡谷駅08:50→09:46茅野駅10:25→11:09東白樺湖12:10→12:46立科町役場前13:15→13:48大屋駅前14:02→14:32下秋和14:34→15:12苅屋原笄橋堤防→徒歩3.6km→戸倉駅15:53→16:34屋代駅17:00→17:20長野松代総合病院17:28→18:04長野駅18:10→18:17善光寺大門

このルートを実現させるためには、飯島駅から昭和伊南総合病院へのバス(飯島町)と、赤木駅からベルシャイン伊北店前までのバス(伊那市)の存在と時刻を把握したうえで、バスの途切れる区間を無駄なく歩き切らなければなりません。それが実現できれば、3日目に25km以上歩いて辰野駅に到着できます。

4日目に岡谷市内まで歩き、茅野から白樺湖を経て上田に至り、上田駅で降りずに下秋和で2分の絶妙乗り継ぎを実現させるという神業を成し遂げて、ようやく18時台に善光寺に到着できます。

正直なところ、机上論としても難しそうです。他に乗り継ぎがあるのかもしれませんが、ざっとルートを探した限り、伊那谷ルートでのゴールの可能性は限りなくゼロに近いといえるでしょう。実際には、上田市内にたどり着ければいい方ではないでしょうか。

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木曽谷ルート唯一の乗り継ぎ

実際ルートに戻ります。3日目、一行は飯田から阿智村(こまんば)に引き返し、南木曽へと転じました。南木曽駅からは比較的バスのつながりが良く、16時半過ぎに、木曽町北端の巴淵に到着。歩いて峠を越えて、奈良井宿に泊まりました。

木曽谷には鉄道沿いに長距離のコミュニティバスが走っていますが、本数は少ないです。南木曽駅~巴淵間を歩かずに乗り継ぐには、実際ルートでたどったパターンのほかにありません。

つまり、W一行は木曽谷を切り抜ける1日1回だけの乗り継ぎパターンを利用して、奈良井宿(権兵衛橋)に到達したわけで、効率的な乗り継ぎを実現できたといえます。木曽谷の乗り切り方としては満点でしょう。

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松本ですぐに北上したら

4日目、権兵衛橋を始発のバスで出発した一行は、絶妙な乗り継ぎで10時過ぎに松本バスターミナルに到着します。しかし、ここからゴールのアプローチで逡巡。結局、バスを3時間近く待つことになりました。

乗り込んだのは、13時発の四賀支所方面行きバス。明科駅から国道19号に沿って長野市を目指すものの及ばず、信州新町(さぎり荘)で時間切れとなりました。

ここで気になるのは松本での滞在です。3時間も待たずに、とりあえず北上するバスに乗って、明科駅方面を目指していたらどうなっていたでしょうか。

▽4日目
松本バスターミナル10:35→10:59山城口→徒歩12.3km→明科駅前13:55→14:14関屋下→徒歩5.5km→山清路16:35→16:52さぎり荘→徒歩6km→八幡平19:00→19:55善光寺大門

山城口は、松本市街地でバスが頻繁運行している区間の北端です。市街地の北端までとりあえずバスに乗り、そこから国道19号沿いの路線バスの起点である明科駅まで12kmを急げば、バスを乗り継いでゴールできていました。

この乗り継ぎは、かなり難しいです。それでも、松本バスターミナル到着した時点で、一行にはわずかなチャンスが残されていたことになります。しかし、13時のバスを待ってしまったことで、それを逃してしまいました。

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鹿教湯に向かっていたら

ちなみに、松本を14時すぎに出る鹿教湯温泉行きに乗っていたらどうなっていたかも確認しておきます。

▽4日目
松本バスターミナル14:15→15:04鹿教湯温泉15:31→16:52下秋和→徒歩18km→屋代駅

下秋和は、上田市内の長野市寄りにあるバス停です。そこまでは行けるのですが、その先、隣接する坂城町や千曲市のコミュニティバスの運行時間帯に間に合いません。

すると、長野市内の屋代駅まで歩かなければならず、その距離は約18km。屋代駅到着は21時すぎになると見込まれます。一方、屋代駅から長野駅まで乗り継げる最終バスは19時10分です。したがって、どんなに急いでもゴールには届きません。

実際には、屋代駅発の最終バス(20時20分)にも間に合わず、屋代駅か、その手前でギブアップとなっていたでしょう。

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逆算してみると

ここでゴールへの乗り継ぎを逆算してみましょう。松本市から長野市へは、明科方面と鹿教湯(上田)方面に分かれ、明科方面はさらに信濃大町方面と生坂村方面とに分岐します。

合計3ルートありますが、4日目午前9時頃に松本にいれば、いずれのパターンでもゴールが可能です。

▽信濃大町ルート4日目
松本バスターミナル09:40→10:24四賀支所→徒歩7.8km→明科駅前12:50→13:15正科北/正科15:29→16:01信濃大町駅前16:10→17:35長野駅17:40→17:47善光寺大門

▽生坂ルート4日目
松本バスターミナル09:40→10:24四賀支所13:00→13:20明科駅前13:55→14:14関屋下→徒歩5.5km→山清路16:35→16:52さぎり荘→徒歩6km→八幡平19:00→19:55善光寺大門

▽上田ルート4日目
松本バスターミナル09:30→10:19鹿教湯温泉11:01→12:11上田駅前/上田駅13:20→13:51中嶋入口→徒歩2km→ベイシア様前14:18→15:03坂城駅→徒歩3.8km→セブンイレブン戸倉店16:18→16:51屋代駅17:00→17:20長野松代総合病院17:28→18:04長野駅18:10→18:17善光寺大門

3日目に松本に泊まり、4日目朝に四賀支所に向かって出発した場合、四賀支所での2時間半待ちを嫌って明科駅まで歩けば、信濃大町ルートになっていた可能性が高いでしょう。信濃大町から特急バスで一気に長野市内に入るルートです。

四賀支所で2時間半を待つと生坂村ルートになりそうです。犀川に沿って長野市を目指す道のりで、終盤少し手こずりますが、信州新町(八幡平)で長野行きの最終バスに間に合い、感動的なゴールになっていたでしょう。

徒歩距離が短いのは上田ルートです。ただし、坂城町、千曲市のバス路線が複雑なので、机上論のように進めるかはわかりません。

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2日目に恵那に到達できれば

いずれにせよ、3日目に松本市内に入っておけば、なかばゴールしたようなものでした。

となると、気になるのは、3日目に松本市内に入れるにはどのようなルートがあったのか、ということです。逆算してみると、木曽谷ルートや伊那谷ルートでは難しく、飛騨高山ルートが基本となります。

▽飛騨高山ルート3日目
恵那駅前08:50→09:00東鉄恵那車庫10:20→10:50中津川駅前12:12→13:14加子母総合事務所前13:22→13:56白鷺橋14:01→15:29高山濃飛バスセンター15:40→16:38平湯温泉17:00→17:10中の湯18:05→19:23松本ターミナル

この乗り継ぎは、瑞浪ルートで紹介したものと同じです。2日目までに恵那市内にいて、3日目午前中に中津川駅にいれば間に合います。

実際ルートで押山から恵那に歩いた場合、1日で合計16kmくらいの徒歩になると前述しました。ただ、それさえこなしてしまえば、2日目は中津川に至らなくてもゴール可能ということです。

つまり、2日目、押山で折り返さずに、恵那まで歩ききってしまえば、ゴールへの道が開けたわけです。その点で、「押山折り返し」が、今回の乗り継ぎで大きなポイントになっていました。

逆説的ですが、押山で折り返しバスを乗り逃し、やむなく岩村へ進めば、ゴールできた可能性が高まっていたことになります。そう考えると、髙木の走力が結果論としては仇となってしまったともいえるわけで、バス旅の難しさを感じさせる場面でした。

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前作のトラウマ

今回のお題で、もっとも惜しまれるのは、豊橋駅の判断でしょう。繰り返しになりますが、1日目に奥三河に分け入ることを恐れずに、豊橋から田口へ向かうか、岡崎で泊まらずに足助に進んでいれば、2日目以降の展開はかなりラクでした。

言葉を換えれば、宿の心配から岡崎に泊まってしまったことが、自らを追い込んだといえます。

宿の心配をしたのは、前作(第2弾)で、ラブホやスナックに泊まることになった経験があったからのようです。そう考えると、今回は、前回のトラウマを引きずったがゆえの敗戦、ということになりそうです。

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最適解は?

これまでの検討を踏まえて最適解を考えてみます。今回はルートが豊富で迷いますが、徒歩距離の短さと、到着時刻の早さから、「田口・高山・上田ルート」となるでしょうか。以下に示します。

▽1日目
伊良湖岬09:45→10:44渥美病院11:16→12:06豊橋駅前13:15→14:48新城市民病院15:42→16:48田口18:05→18:46どんぐりの湯前

▽2日目
どんぐりの湯前08:07→08:23押山08:49→09:37バロー岩村→徒歩7.6km→小野川11:50→12:00東鉄恵那車庫12:20→12:50中津川駅前13:15→14:17加子母総合事務所前16:43→17:21下呂バスセンター

▽3日目
下呂バスセンター05:58→07:24高山濃飛バスセンター07:40→08:38平湯温泉09:00→09:10中の湯09:43→10:35新島々駅→徒歩3.6km→波田駅12:10→12:22山形村役場12:36→12:51下今井13:06→13:42松本バスターミナル14:15→15:04鹿教湯温泉15:31→16:41上田駅前

▽4日目
上田駅前08:20→08:28信州上田医療センター08:49→09:05ベイシア様前09:37→09:55力石公民館前10:03→10:12総合観光会館10:26→10:53屋代駅12:05→12:26長野松代総合病院12:33→13:27長野駅13:30→13:37善光寺大門

この乗り継ぎの場合、徒歩区間は計10km程度です。2日目と4日目は全く歩きません。

乗り継ぎ時間にも無理がありません。最後の長野駅の3分乗り換えは微妙ですが、乗り遅れても、善光寺までの区間はバスが頻発しています。

宿が空いていれば、稲武(どんぐりの湯)、下呂と、1、2泊目は温泉を楽しめ、3日目は新幹線駅近くのビジネスホテルに泊まれそう。つまり、宿泊環境も悪くはなかったでしょう。

都市宿泊ルート

とはいえ、1日目に奥三河に分け入るのが不安、という心情も理解できます。山間部での宿の心配は大きいでしょうし、実際に行ってみたら満室で困り果てたかもしれません。

それを踏まえて、都市に泊まることを前提にルートを組んでみると、時刻表上は以下のようになります。

▽1日目
伊良湖岬09:45→10:40田原駅前11:10→12:06豊橋駅前12:45→13:20豊川市民病院13:43→14:09国府駅14:25→14:36御油橋西→徒歩8.4km→16:39本宿駅16:55→17:32美合駅17:38→18:08東岡崎駅

▽2日目
東岡崎駅06:35→07:45足助08:34→09:16どんぐりの湯10:19→10:35押山→徒歩6.9km→本郷口13:58→14:12岩村駅前→徒歩9.3km→小野川16:20→16:30東鉄恵那車庫18:20→18:50中津川駅前

▽3日目
中津川駅前06:45→07:47加子母総合事務所前09:19→09:55下呂駅前10:00→11:27高山濃飛バスセンター11:40→12:38平湯温泉13:00→13:10中の湯15:05→16:23松本バスターミナル

▽4日目
松本バスターミナル09:30→10:19鹿教湯温泉11:01→12:11上田駅前/上田駅13:20→13:51中嶋入口→徒歩2km→ベイシア様前14:18→15:03坂城駅→徒歩3.8km→セブンイレブン戸倉店16:18→16:51屋代駅17:00→17:20長野松代総合病院17:28→18:04長野駅18:10→18:17善光寺大門

いわば、「岡崎・岩村・高山ルート」です。1日目は岡崎市、2日目は中津川市、3日目は松本市と、大きな都市に泊まってもゴールできます。ただし、2日目に約16kmの徒歩を乗り越えなければなりません。

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無理難題ではなかったが

全体をまとめてみると、勝負のポイントは、豊橋、押山の前半2か所に集約されていて、それぞれ「正しい選択」をしていれば、難しいルートではありませんでした。

ただ、途中でルートの選択肢が多いので迷いやすく、伊那谷に入り込んだら絶望的といった具合に、間違えたらリカバーの効きにくい選択も含まれていたことから、平易とまではいえません。

一方で、選択を間違っても、机上論では逆転勝ちの可能性も残していました。こうした点から、難易度は「並」から「やや難」といったところでしょうか。第1弾、第2弾に比べれば難化していますが、無理難題とまではいえません。

髙木菜那の活躍光る

活躍が目立ったのは、髙木菜那でした。スケートで世界を制した体力が抜きんでていただけでなく、地図を読み解く能力も高く、聞き込みのポイントも要点を捉えていました。

最初はゲストのような立ち位置でしたが、いつの間にか画面の中央にいることが多くなり、すっかりリーダー格に収まっていました。次回以降の参加も期待したいところです。(鎌倉淳)

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