テレビ東京系列で「太川蛭子のバス旅2019」第3弾として「日光東照宮~会津若松」が放送されました。ルイルイこと太川陽介と、蛭子能収がローカル路線バスを乗り継ぐテレビ番組です。木曜日夜のレギュラー番組「太川蛭子の旅バラ」の企画の1つです。
「バス旅2019」第3弾の目標は、栃木県の日光東照宮から福島県の会津若松まで、路線バスを乗り継いで1泊2日で到達するというもの。この正解ルートを検証してみましょう。
なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)
会津若松は鬼門
「太川蛭子のバス旅2019」は、ローカル路線バスだけを乗り継いで目的地を目指す、というルールの旅番組です。ただし、バスが走っていない区間では、1万円までタクシー利用が可能です。
「バス旅2019」第3弾のお題は、日光東照宮から会津若松駅まで、1泊2日で到達するというもの。ゴール到着時刻のリミットは定められておらず、途中のチェックポイントもありませんでした。マドンナは村上佳菜子です。
会津若松は、「ローカル路線バスの旅」オリジナルシリーズで2度発着地となりましたが、いずれも失敗に終わっています。ルイルイ・蛭子コンビにとっては「鬼門」で、どう克服するかがテーマとなりました。
太川蛭子のバス旅2019 栃木県・日光東照宮~福島県・会津若松
【出演】蛭子能収、太川陽介
【マドンナ】村上佳菜子
【ナレーター】バカボン鬼塚
【放送日】2019年7月25日
実際ルート
まずは、一行が実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻を示しています。
▽1日目
大猷院二荒山神社前08:45→08:53東武日光駅09:45→10:15下今市駅11:30→11:53新高徳駅13:55→14:41矢板駅16:14→16:36沢上町→徒歩2.0km→中薄葉公民館前→徒歩6.8km→大田原市役所20:03→20:20那須塩原駅東口
▽2日目
那須塩原駅西口08:00→08:50那須湯本温泉09:56→10:13マウントジーンズ那須→タクシー10.9km、4,240円→ゴルフ場入口→徒歩0.3km→キョロロン村→徒歩1.0km→高原ホテル前→タクシー13.0km、4,470円→南倉沢→徒歩2.2km→お不動さま直売所/杉の沢入口15:34→15:55会津下郷駅16:15→16:40新湯入口16:55→17:05小沼崎→徒歩4.6km→大川発電所前19:15→20:10若松駅前
20時すぎに若松駅前に到着し、成功しました。成功したので、このルートを「正解」としてもいいのですが、番組によると徒歩区間は合計20km近くに達したそうで、「歩く旅でしょ?」との激励を受けるほどの難行でした。もう少しラクなルートもあったのではないか、と思われた方もいるでしょう。検証してみましょう。
湯西川ルート
日光から会津若松へ向かうのなら、会津西街道(国道121号線)に沿って北上するのが最短ルートです。東武日光駅の案内所で、一行もそのルートについて尋ねています。しかし、湯西川温泉駅でバスが途絶え、20km以上もつながらないことを知り、選択肢から外しました。
このルートを「湯西川ルート」としましょう。たどっていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
東武日光駅09:45→10:15下今市駅11:30→12:12鬼怒川公園駅13:13→13:38湯西川温泉駅→タクシー26.9km、推定9,820円→早坂15:05→15:30会津田島駅前
1日目にタクシーを使うことで、会津田島駅まで到達できます。湯西川温泉駅から早坂までのタクシー代が1万円で収まるかは微妙ですが、仮にオーバーして1~2km歩いても、早坂発の最終バスは18時なので、1日目に会津田島に着けることは同じです。
「湯西川ルート」の2日目を見てみます。
▽2日目
会津田島駅前06:20→07:00小沼崎→徒歩4.6km→大川発電所前08:05→09:05若松駅前
小沼崎から大川発電所前までの4.6kmを1時間5分で歩ききれば、2日目の朝9時すぎに会津若松に着いてしまいます。歩ききれなかった場合、大川発電所発の次のバスは16時すぎまでありませんが、8時間も待たないでしょうから、以下のようになりそうです。
▽2日目
会津田島駅前06:20→07:00小沼崎→徒歩4.6km→大川発電所前→徒歩0.7km→芦ノ牧中央待合所09:24→10:19若松駅
このように、湯西川ルートでは、どのみち午前中に会津若松に到着できそうです。徒歩距離も、うまくいけば4.6kmだけで済みますので、ルートとして優れています。
中薄葉公民館での乗り逃し
実際の一行は、日光から矢板へ出て、奥州街道(国道4号線)沿いに北上する経路を選択します。ただ、新高徳以降の乗り継ぎは巧くいきません。ルイルイが「矢板に来たことはあってるよね。矢板に来るしかなかったもんね」と弱音を吐くほどでした。
矢板到着前後で、一行は複数の運転手に聞き込みをし、沢上町バス停で降りて野崎駅を目指せば大田原行きのバスに乗れると考えました。ところが中薄葉公民館前まで歩いたところで、大田原市役所行きのバスを目前で乗り逃します。
仮にこのバスに乗れていたら、どうなっていたでしょうか。
▽2日目
中薄葉公民館前17:10→18:03大田原市役所18:23→18:50那須塩原駅東口/西口18:55→19:45那須湯本温泉
那須塩原駅の5分乗り継ぎが微妙ですが、うまくいけば那須湯本温泉まで到達できます。ただ、翌朝のマウントジーンズ那須へのバスは実際ルートと同じ時刻になり、ゴールへの道筋は変わりません。
野崎駅を目指したら
中薄葉公民館前から大田原市役所へのバスは、一行が乗り逃した17時10分が最終でした。そのため、一行はやむなく大田原市役所まで歩きます。その結果、矢板駅から大田原市役所まで、合計9km近くの長距離徒歩となってしまいました。
ただ、思い出してみると、そもそも一行が沢上町から目指していたのは、野崎駅だったはずです。仮に、中薄葉公民館前でバスを乗り逃した後、原点に返って野崎駅を目指していたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
矢板駅16:14→16:36沢上町→徒歩2.0km→中薄葉公民館前→徒歩2.4km→野崎駅17:40→18:03大田原市役所18:23→18:50那須塩原駅東口/西口18:55→19:45那須湯本温泉
このように、歩く距離を短くできました。時間的に野崎駅17時40発のバスに間に合うかは微妙ですが、手前に野崎中学校前というバス停があり、歩いていれば気づくでしょうから、野崎駅を目指していれば、このバスに乗れた可能性が高いでしょう。
ただ、中薄葉公民館前のバス停時刻表を見ると、野崎駅へ行ったとしても最終バスが出てしまっているように感じるでしょう。無駄足は最も避けたいでしょうし、一行が大田原市役所へ歩いたのは、やむを得ません。
佐藤病院で下車していたら
もう少しさかのぼれば、そもそも野崎駅を目指すなら沢上町で降りるより、少し前の佐藤病院前で下車した方が近いです。
佐藤病院前で下車した場合、以下のような乗り継ぎとなります。
▽1日目
矢板駅16:14→16:33佐藤病院前→徒歩1.7km→野崎駅17:40→18:03大田原市役所18:23→18:50那須塩原駅東口
この乗り継ぎが、タクシーを使わずに矢板~大田原間を乗り切るベストルートでしょう。
いくつか乗り継ぎを見てみましたが、どのルートでも、タクシーを使わずに1日目に一行がたどり着けるのは、那須塩原駅か那須湯本温泉、あるいは黒磯駅までです。矢板駅から大田原市役所まで歩いたことは、一行の疲労を増したでしょうが、大勢に影響を及ぼしませんでした。
ゆーバスに乗っていたら
2日目、一行は那須塩原07時50分発のゆーバスで黒磯駅に向かうはずでした。ところが、ゆーバスが出発時刻になっても現れません。隣のバス停に那須ロープウェイ行きのバスが来たため、一行はそれに乗車。黒磯駅で下車する予定でしたが、運転手から情報を得て、那須湯本温泉へ向かうことに決めました。
では、このとき、当初の予定通り、ゆーバスに乗って黒磯駅に向かっていたらどうなっていたでしょうか。
▽2日目
那須塩原駅07:50→08:27黒磯駅11:00→12:03追分→徒歩3.1km→関の森公園16:15→16:47白河駅前
栃木・福島県境となる追分から関の森公園まで3.1kmを歩けば、白河駅までルートは繋がります。しかし、黒磯駅で追分行きバスが2時間半待ちとなります。関の森公園での待ち時間も長く、白河駅到着は17時前。これでは、当日中の会津若松ゴールは無理です。
一行も、白河へ急がなければゴールできないことを知っていましたので、黒磯駅で2時間半も待つはずありません。となると、一行は、黒磯駅からタクシーを使うことになります。
▽2日目
那須塩原駅西口07:50→08:27黒磯駅→タクシー23.7km、推定8,560円→新白河駅東口12:35→13:28石川駅前15:15→16:14須賀川駅前17:14→17:52郡山駅前
18時ごろになんとか郡山駅前に到着しますが、この先、会津若松へ同日着できるバスはなく、ゴールできません。
郡山の必着時刻は
そもそも、何時までに郡山に到着すれば、会津若松へゴールできるのでしょうか。逆算してみると、以下のようになります。
▽2日目
郡山駅15:05→16:17湖南高校前17:35→18:47若松駅前
郡山駅~湖南高校前のバスは月・水・金曜日限定です。火・木曜日の場合は以下のようになり、郡山発「最終」の時間が繰り上がります。
▽2日目
郡山駅12:10→12:53熱海駅13:15→14:05湖南高校前17:35→18:47若松駅前
ロケ日が月・水・金曜日のいずれかと仮定しても、郡山駅に15時くらいに到着していなければなりません。この点は、ルイルイが予期していた通りです。
郡山へ急ぐため、黒磯~白河間でタクシーを使うと、そこで全てのタクシー代を使い切ってしまいます。すると先の展開が苦しくなり、最終的に行き詰まります。
結論を書くと、黒磯駅に2日目午前8時以降に到着し、白河経由でゴールできそうな現実的ルートは見つかりませんでした。
黒磯駅から那須湯本へ転じたら?
話を少し戻します。一行が那須塩原駅から黒磯駅行きのゆーバスに乗ってしまった場合、黒磯駅での待ち時間を嫌い、白河方面をあきらめていた可能性もあります。その場合は、那須湯本方面へ転進するしかありません。以下のようになったでしょう。
▽2日目
那須塩原駅07:50→08:27黒磯駅08:45→09:20那須湯本温泉09:56→10:13マウントジーンズ那須
那須湯本温泉からの「きゅーびー号」に間に合い、実際ルートに収斂します。つまり、朝一番で黒磯駅まで行ってしまっても、すぐに那須湯本方面に向かえばリカバーできるわけです。
ルイルイが実際ルートで乗った那須湯本方面行きバスを、黒磯駅で降りてしまったとしても、同じことがいえます。
いずれにしろ、那須塩原駅で拾ったバスに乗り、黒磯駅で降りなかったルイルイの判断は、正しかったことになります。
塩原ルート
ただ、那須塩原駅からの展開としては、もう少しシンプルなルートもありました。塩原温泉を経由するルートです。「塩原ルート」と呼びましょう。
▽2日目
那須塩原駅08:41→09:13西那須野駅西口09:35→10:20塩原温泉バスターミナル10:33→10:55上三依塩原温泉口駅→タクシー13.5km、推定4,960円→早坂12:55→13:20会津田島駅前14:15→14:40会津下郷駅前15:00→15:25新湯入口15:30→15:40小沼崎→タクシー4.6km、推定2,320円→大川発電所前16:59→17:54若松駅前
「塩原ルート」の優れている点は、タクシー代の半分を最終局面まで温存できることです。その結果、小沼崎~大川発電所でタクシーに乗れるので、2日目は徒歩なしでゴールできます。
那須から塩原を経て会津田島に至るルートは国道をたどる道筋なので、道路地図を見ていれば選択肢に入るはずです。那須塩原駅での聞き込みでも情報を得られたでしょう。ただ、オンエアでは、「塩原ルート」を深く検討した場面はありませんでした。
詳細は省略しますが、「塩原ルート」をたどるなら、大田原市役所から那須塩原駅に向かわずに、西那須野駅に向かっていた方がラクです。つまり、判断のポイントは大田原市役所だったわけです。オンエアでも、大田原市役所で「那須塩原か西那須野か」の選択肢を提示していましたが、実のところ、これが結構、重要でした。
大田原市役所では、市役所のバス担当者に話を聞く機会があったのですが、「白河方面」へ向かうと伝えてしまったからか、「塩原ルート」を引き出せませんでした。少しもったいなかった気もします。
2019年4月登場のバス
実際ルートに戻りましょう。一行は那須湯本温泉に到着し、観光案内所で「きゅーびー号レッドLine」の情報を得て、マウントジーンズ那須へ向かいます。
このバスは、「那須つつじ号」「那須もみじ号」の名称で季節運行していたバスルートを、新たに「きゅーびー号レッドLine」の名称で、2019年4月より定期運行を開始したものです。つまり、一行は、誕生したばかりの定期バス路線を掴まえたわけです。
「ルートの枯渇」に悩む番組に新ルートを提供したわけで、演出的にも収穫だったでしょう。
その後は、ゴールまでほぼ一本道です。高原ホテルからタクシーで南倉沢へ。マドンナが「いや~ここは歩けないですよね」と驚いた甲子トンネルは、「Zシリーズ」第9弾で、田中・羽田コンビ一行が、意を決して徒歩で抜けた難所でした。
切り札のタクシー代を、難所の甲子トンネル越えで使ったのは、効果的でした。ただ、最後はお金が足りなくなり、小沼崎から大川発電所まではトンネル歩きを余儀なくされました。蛭子さんには厳しかったと察せられますが、無事ゴールを達成しました。
野崎直行ルート
さて、番組の前半、ルイルイは郡山市を目指す姿勢を見せていました。しかし、郡山市に向かっていたらゴールが困難だったのは、前述した通りです。ルイルイが郡山へのこだわりを捨てた黒磯での判断が、今回の勝因のひとつです。
とはいえ、郡山方面を目指した場合、100%失敗というわけではありません。条件付きですが、成功ルートもあります。
▽1日目
東武日光駅09:45→10:15下今市駅11:30→11:53新高徳駅13:55→14:41矢板駅→タクシー5.7km、推定1,990円→野崎駅15:40→16:06大田原市役所16:18→16:45那須塩原駅東口16:55→17:10黒磯駅17:30→18:33追分→徒歩3.1km→関の森公園
矢板駅から野崎駅までタクシーを使うのがポイントです。これを「野崎直行ルート」と呼びましょう。野崎駅から大田原市役所へのバスが出ていることを、矢板駅で早めに知ることは不可能ではなかったと思われます。情報さえ得られれば、こうした判断もあり得たでしょう。
「野崎直行ルート」では、1日目に追分までバスで到達できます。追分~関の森間はバスが途絶えます。この区間はタクシーを使ってもいいのですが、迎車料金がかかりますし、節約のため徒歩で乗り切ると仮定し、関の森公園泊まり。宿泊はホテルの送迎を仰ぎます。
そうした仮定で、「野崎直行ルート」の2日目は、以下の通りです。
▽2日目
関の森公園07:15→07:47白河駅前08:50→09:33石川駅前11:45→12:44須賀川駅前→タクシー13.7km、推定6,010円→郡山駅前15:05→16:17湖南高校前17:35→18:47若松駅前
須賀川駅~郡山駅間でもタクシーを使うことで、郡山駅に15時前に到達することができますので、月・水・金曜日ならゴール可能です。矢板駅~野崎駅間とあわせて、鉄道路線との並行区間でタクシーを使うのが、意外と効果的なわけです。
ただ、今回の番組内、中薄葉公民館前で大田原市役所への道筋を検討中、「バス路線が走っているので、タクシーが使えない」というナレーションがありました。このルールに従うと、須賀川駅~郡山駅間にはバス路線がありますので、タクシーは使えないことになります。そして同区間のバスを待っていたら、ゴールはできません。
「条件付きの成功ルート」と書いたのは、それが理由です。「須賀川駅~郡山駅間でタクシーを使って良いなら」という条件です。
季の郷ルート
「バス路線が走っている」という条件を避けるなら、バス路線の通っていない区間でタクシーを使えばいいわけで、そういう方法もあります。
▽2日目
関の森公園07:15→07:47白河駅前08:50→09:33石川駅前11:45→12:44須賀川駅前→タクシー6.4km、推定3,040円→季の郷14:05→14:39郡山駅前15:05→16:17湖南高校前17:35→18:47若松駅前
タクシー利用区間を須賀川駅~季の郷間にすれば、「バス路線が通ってない区間」に該当しそうなので、ルール上はOKになりそうです。
だんだんルールの抜け穴探しみたいになってきたので、このへんでやめておきます。
長沼ルート
「野崎直行ルート」で須賀川駅まで到達し、郡山駅までタクシーが使えないと判断された場合、勢至堂峠から湖南車庫を目指す方法もあります。「長沼ルート」です。
▽1日目
東武日光駅09:45→10:15下今市駅11:30→11:53新高徳駅13:55→14:41矢板駅→タクシー5.7km、推定1,990円→野崎駅15:40→16:06大田原市役所16:18→16:45那須塩原駅東口16:55→17:10黒磯駅17:30→18:33追分→徒歩3.1km→関の森公園
▽2日目
関の森公園07:15→07:47白河駅前08:50→09:33石川駅前11:45→12:44須賀川駅前14:00→15:19長沼車庫→タクシー20.5km、推定7,350円→湖南高校前17:35→18:47若松駅前
長沼車庫からのタクシーは、小型車で計算しています。中型車の場合は、9,000円超となり、最後の3~4kmでタクシー代が足りなくなりそうで、徒歩で間に合うかは定かではありません。
「長沼ルート」の場合、長沼車庫と湖南高校前を直接結ぶバス路線はありませんが、途中の勢至堂上まではバスが1日1便通っています。そのため、「バス路線があるからタクシー不可」というルールを厳密に適用すれば、「長沼ルート」でもゴール不可能です。
「バス路線のない区間」とは?
そもそも、厳しくルールを適用すれば、「野崎直行ルート」も、矢板駅~佐藤病院間にバスがあると解釈されれば、許されない可能性もあります。
「バス路線のない区間に限りタクシー可」というルールは、明確なようで解釈を考え込むことがあります。発着地がバスと同じなら経路が違ってもダメなのか、バスと同一道路を走るとダメなのか、タクシー経路の一部区間に関係ないバス路線が重なるときはどうなのか、うんと大回りしたらバスがつながる区間でタクシーはダメなのか。
さらにいえば、バス路線の存在を知らずにタクシーに乗ってしまったらどうするのか。
今回、一行がタクシー利用した2区間は、非の打ち所のない「バス路線のない区間」でした。一方、「第2弾」では、バス路線と重なる区間でタクシーに乗車していました。タクシールールの運用は、番組が続けば確認していきたいところです。
最適解は?
今回のお題で、ひとつだけ「正解」を一つあげるとすれば、「湯西川ルート」になると思います。2日目午前中にゴールできますし、徒歩距離も短いので、文句のつけようがありません。
ただ、現実的に考えて、序盤から20km超のバス途絶区間に突っ込んでタクシーを使うという博打は、打ちづらいでしょう。仮に成功しても、2日目の午前中にゴールしては番組として盛り上がりません。
現実的に選択しうる最適解は「塩原ルート」でしょう。「野崎直行ルート」が認められるなら、それとの組み合わせが、調べた限りで実現可能なベストルートではないか、と筆者は考えます。
▽1日目
東武日光駅09:45→10:15下今市駅11:30→11:53新高徳駅13:55→14:41矢板駅→タクシー5.7km、推定1,990円→野崎駅15:40→16:06大田原市役所17:00→17:35西那須野駅東口/西口18:00→18:45塩原温泉バスターミナル
▽2日目
塩原温泉バスターミナル08:48→09:10上三依塩原温泉口駅→タクシー13.5km、推定4,960円→早坂10:40→11:05会津田島駅前14:15→14:40会津下郷駅前15:00→15:25新湯入口15:30→15:40小沼崎→タクシー4.6km、推定2,320円→大川発電所前16:59→17:54若松駅前
矢板駅~野崎駅間でタクシーを使うことで、大田原市役所の開庁時間に到着できます。そこで情報収集すれば、塩原方面へのルートを確認するのは難しくないでしょう。そして1泊目は塩原温泉に泊まり、2日目は余裕をもって会津西街道をたどれます。
タクシー代もちょうど1万円程度に収まり、歩かずにすみます。実際のタクシー料金は計算通りにいかないかもしれませんが、歩いたとしてもわずかでしょう。
まとめてみると
「バス旅2019」の難しさは、タクシー利用という切り札をどこで使うか、という点です。バスの乗り継ぎだけならルート検証もそれほどややこしくないのですが、タクシー利用という変数が加わると、とても複雑になります。
峠越えでタクシーが必要になるのはわかりきっているので、そこまで温存したいという意識が出演者に働きます。しかし、平地で長時間バスを待ったり大回りをするくらいなら、そこで切り札を使うのも効果的です。
ルイルイは番組中で「タクシーが使えるから、逆に難しくなってる」という発言をしていますが、まったくその通りです。1泊2日という短いお題ながら、パズルを解くような見ごたえがあるのは、タクシーという変数のおかげでしょう。
全体の難易度を考えてみると、複数の成功ルートがありますし、難しくはありません。ただ、郡山方面へ向かうことにこだわると、ぬかるみにはまる可能性もありましたので、ゴールが容易だったとも言えません。適度な難易度、という印象でしょうか。
真剣勝負の雰囲気
第1弾ではマドンナ交代制、第2弾ではマドンナのほかにゲストも呼びましたが、今回はマドンナ1人が最初から最後まで同行するという、オリジナルシリーズと同じ形になりました。
マドンナにはアスリート出身の村上佳菜子を起用し「徒歩を厭わない体制」を敷きました。バラエティ的な演出は抑えめになり、真剣勝負の雰囲気が強くなった印象です。
終了後のクレジットを見ると、チーフプロデューサーが交代しており、オリジナルシリーズを手がける越山進が担当しています。演出など制作メンバーも第2弾から多少入れ替わっていますので、視聴率低迷を受けて局サイドがテコ入れした様子がうかがえます。
新基軸として、成功か失敗かを当てるクイズも導入しました。第1弾、第2弾では、番組終了時視聴率が低かったので、その対策かもしれません。
成果はあったようで、今回は、終了時視聴率はそれほど下がりませんでした。全体の視聴率も「バス旅2019」で最高を記録。激戦の木曜日ゴールデンとしては健闘したといえます。次作も期待できそうです。(鎌倉淳)