京王電鉄が2022年度の設備投資計画を発表しました。「京王ライナー」向け車両を追加投入し、座席指定列車のサービスを拡大します。また、運賃値上げも検討します。
5000系増備
「京王ライナー」は、京王電鉄が京王線・相模原線系統で運行している座席指定列車です。クロスシートとロングシートの転換機構を備えた5000系車両を使用し、クロスシートの全席指定で運転します。
「京王ライナー」は2018年度に運行を開始し、朝夕の時間帯に拡充してきました。土休日には「Mt.TAKAO号」という愛称で新宿~高尾山口に同様の列車を運行し、登山客の人気を博しています。
京王電鉄は、このほど発表した2022年度の設備投資計画で、主な取り組みとして「座席指定列車の追加導入と運行拡大」を掲げました。具体的には、5000系車両を1編成増備し、「京王ライナー」のサービス拡充を図ります。
新たな5000系では、日本初となるリクライニング機能付きのロング/クロスシート転換座席を搭載します。
終日運行も検討
さらに、「一部座席指定列車」の導入などによる終日運行の検討を進めます。詳細は明らかではありませんが、日中時間帯に5000系運行車両の一部車両を座席指定にする形を検討しているようです。
ライバルとなるJR中央線では、早ければ2025年春にもグリーン車が導入される計画です。京王も対抗して、着席サービスを終日に拡大する取り組みを検討するわけです。
高架化完成は2030年度末
このほか、設備投資計画では、京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業(高架化)の推進や、バリアフリー施設の整備、駅施設リニューアルの方針を示しました。
連続立体化事業は2022年度末が事業完了予定でしたが、2022年3月15日に国土交通省から事業認可の延伸が告示されました。新たな事業完了予定は2030年度末となっています。
完成すれば明大前駅や千歳烏山駅が2面4線化し、大幅なダイヤ改正が実現しそうですが、あと9年近くかかることになります。2022年度は、新たに千歳烏山駅付近で工事に着手します。
バリアフリー施設では、新たに笹塚駅などでホームドア整備をおこない、全駅整備に向けた検討を進めます。また、車いす・ベビーカースペースの全車両への拡大も進めます。
駅施設については、新宿駅新線口改札内のエスカレーターを更新。若葉台駅・府中競馬正門前駅・多摩境駅でトイレのリニューアル工事を実施します。
2023年度にも値上げ
同日発表した2022年3月期連結決算で、京王電鉄は最終損益で55億円の黒字を確保しました。ただ、利益水準は低く、新型コロナ禍前の2019年3月期(272億円)に比べると2割にとどまります。
鉄道事業だけを取り出せば、14億円の赤字を計上しました。鉄道事業の赤字は2期連続で、前年度の97億円に比べれば改善したものの、厳しい状況に変わりありません。
テレワークの定着により、輸送需要は以前の水準には戻らないと想定されています。こうした状況を背景に、京王電鉄は運賃を値上げする方針を示しました。値上げ時期は最短で2023年度後半を見込んでいます。
京王電鉄は1995年を最後に、消費税増税を除く運賃値上げを行っていませんので、実施すれば約28年ぶりとなります。
業界運賃を底上げ
京王の運賃は、鉄道業界最安の水準です。1995年以来値上げしていないだけでなく、1997年には値下げをしているほか、2018年には相模原線の加算運賃を引き下げています。
京王と並ぶ業界最安の運賃水準を誇る東急電鉄も、2023年3月の値上げを予定しています。京王もそれに追随する形になりました。京王の値上げ幅は未定ですが、東急(平均12.9%)に準じれば10%程度になりそうです。
東急、京王両社の値上げにより、鉄道業界全体で運賃水準が「底上げ」されることになります。状況をみればやむを得ませんが、利用者には厳しい話です。(鎌倉淳)