京急電鉄が、同社の駅名を沿線の小中学生から公募することを発表しました。対象は「京急線全駅」。実際に数駅で駅名変更をする可能性があるということで、候補駅を勝手に考えてみました。
「わがまち駅名募集」
このプロジェクトは、京急創立120周年記念事業によるもの。「わがまち駅名募集」と題し、沿線の小中学生から京急線の駅名変更案を募集します。大師線の産業道路駅に関しては、連続立体交差事業により道路との関わりが薄くなるため、実際に駅名を変更します。
それ以外の京急駅に関しても、数駅の駅名変更を検討するということです。
46駅が変更候補
駅名募集の対象駅は京急線全駅(泉岳寺駅を除く72駅)。ただし、品川駅や横浜駅など、他社線との乗り換えの最寄り駅や、川崎大師駅や穴守稲荷駅といった公共施設、神社仏閣、歴史的史跡等の最寄り駅として広く認知されている駅の、あわせて26駅については変更しません。
この26駅は「駅名募集の対象」ですが、「実際に変更はしない」ということです。変更対象外の駅は以下の通りです。
●他社線との乗り換え最寄り駅
品川、京急蒲田、天空橋、羽田空港国際線ターミナル、羽田空港国内線ターミナル、京急川崎、八丁畷、京急鶴見、京急新子安、横浜、上大岡、金沢八景、京急久里浜
●公共施設、神社仏閣、歴史的史跡などの最寄り駅として広く知られている駅
鮫洲、平和島、穴守稲荷、川崎大師、生麦、弘明寺、金沢文庫、神武寺、安針塚、県立大学、浦賀、YRP野比、三浦海岸
これ以外の46駅が、駅名変更の可能性があるということです。変更する場合も、ヒトの名前、企業の名前、団体の名前は使わないとしています。
沿線活性化、難読駅改称が目的
複数駅の駅名を公募により変更するというプロジェクトは、これまでにない試みといえます。日本経済新聞2018年9月18日付によると、京急側は「駅名を変えることにより、沿線への注目を集めるきっかけになれば」と趣旨を説明しています。
京急では、変更可能性のある対象駅を「沿線の活性化につながると思われるものや、読みかたなどがむずかしくお客さまにご不便をおかけしている駅」としています。
つまり、沿線活性化と、難読駅の解消の二つを目的としているわけです。
人口減少も背景に?
京急は戦前に現在の路線網をほぼ構築した鉄道会社です。それだけ駅名にも歴史があるわけですが、現在からみれば、読みにくかったり、わかりにくかったりする名称もあります。そうした駅名を、この機会に変更してみよう、という狙いでしょう。
また、沿線の人口減少問題も背景にあるとみられます。京急は横須賀市や三浦市の人口減少に危機感を募らせており、駅名変更により、沿線イメージを少しでも高めようとしているのでしょう。
一方で、古い駅名には歴史的な重みがあり、親しんで使っている人も大勢いるので、むやみやたらと変更すべきものではありません。
そのため、実際に変更されるのは、「駅名変更の意義が多くの人に認められ、多くの人が受け入れられるネーミングがあらわれた場合」に限られるのではないでしょうか。
候補駅を考えてみる
では、実際にどの駅で、名称変更されるのでしょうか。京急が提示している「難読駅、沿線活性化」の2条件を考慮して、対象になりやすそうな駅を考えてみましょう。以下のような名称の駅が候補になりそうです。
・難読駅
・「新●●」「東●●」「北●●」といった駅
・近隣に利用者の多い施設のある駅
・観光地に近い駅
人口減少問題に対処するための地域活性化が目的なら、金沢文庫以南が対象になりやすそうです。
こうしたことから、筆者が勝手に候補駅を予想してみます。異論・反論は歓迎です。
・北品川=品川駅との位置関係がわかりにくいため。
・新馬場=難読駅。「北馬場」「南馬場」統合時に付けられた駅名を一新。
・大森海岸=近隣に「しながわ区民公園」「しながわ水族館」。
・雑色=難読駅。
・糀谷=難読駅。
・花月園前=「花月園」閉鎖のため。
・仲木戸=「東神奈川」駅に変更し、JR横浜線との乗り換えをわかりやすく。
・日ノ出町=近隣に「野毛山公園」。
・新逗子=「京浜逗子」「逗子海岸」統合時に付けられた駅名を一新。
・追浜=難読駅。
・逸見=難読駅。
・京急田浦=横須賀線田浦駅から離れているため。
・汐入=横須賀市中心部や港に近いイメージに変更。
・新大津=近隣に「大津公園」。
・北久里浜=近隣に「横須賀リーフスタジアム」。
・三崎口=観光的にインパクトのある名称に。
雑色、仲木戸に関しては、朝日新聞9月18日付に駅名変更の候補であることが示唆されています。新逗子に関しては「他社線との乗り換え最寄り駅」に該当しそうですが、「駅名変更の対象外」とされませんでした。となると、京急は駅名変更を真剣に検討しているように感じられます。
納得できる名称に
駅名変更案に応募できるのは小中学生に限定しています。そのため、駅名を変更するにしても、わかりやすいネーミングが多くなりそうです。
昔からある駅名は、近隣の地名をベースにしています。それだけに、大切にしてほしいという声は少なくありません。それがキラキラした駅名になってしまうなら、残念に思う人も多いでしょう。
一方で、利用者にとって便利で親しみやすい名称に変更するのなら、意義はあるでしょう。空港アクセスを担う京急ですから、観光客などの「一見客」が訪れてみたくなるような名称にすることは大切かもしれません。
なんであれ、駅名は鉄道会社だけのものではなく、地域住民との共有物です。変更する場合でも、ぜひ多くの人が納得できる名称にしてほしいところです。(鎌倉淳)