京阪電気鉄道が、特急列車に有料座席車を導入します。その名も「京阪特急プレミアムカー(仮称)」。大阪の淀屋橋駅と京都の出町柳駅を結ぶ特急車両のうち、1両を座席指定車とします。2017年上期の導入を目指します。
8000系の6号車を3列1扉車に改造
京阪電鉄の発表によりますと、京阪特急で運用している8000系電車(8両編成)の6号車を「京阪特急プレミアムカー」に改造します。プレミアムカーは現有の8000系10編成すべてに設置されます。
8000系は現在は片側2ドアですが、これを1ドアとします。座席配置を現状の4列(2+2列)から3列(2+1列)に変更。座席そのものも交換し、新開発のリクライニングシートを導入します。新型シートは「快適性とパーソナル空間の演出」にこだわったもので、座席幅と座席間隔が拡大されます。
大型テーブルと電源コンセントも設置される予定で、他社の有料特急以上のプレミアム感がありそうです。座席数は現在の58から40に減ります。
京阪初の座席指定車
京阪電鉄が有料座席を導入するのは初めてです。京阪電鉄によると、同社には、近年、「有料でも特急で確実に座りたい」という意見が、利用者から多数寄せられていたそうです。京阪線は通勤・通学路線であると同時に京都への観光路線の性格も兼ねており、最近は訪日外国人客も増えて着席ニーズが高まっていました。
こうした声に応え、通勤客にも観光客にも対応する「確実に座れる」「上質な移動空間」を実現する新サービスとして、特別車両の導入を決めたとしています。車両改造費の総額は約16億円。8000系は改造が完了するまで、7両編成で運用されます。
「運賃より低い料金」に
「プレミアムカー」には専属アテンダントが乗り込み、乗客への案内も行います。別途料金が必要で、「特別車両料金」が設定されます。具体的な金額は今後検討されますが、「運賃よりは低い額」で、500円を下回る見通しです。
専用のインターネット予約サイトも設けられ、ウェブ上で予約・決済ができるようにするそうです。
毎時6本には車両が足りない
現在、京阪特急には8000系と3000系が使われていますが、京阪電鉄の発表では、「プレミアムカー」は8000系のみに投入されます。8000系は10編成しかありませんので、現状の特急列車の運転間隔(毎時6本)では、車両が足りません。
このため、特急を毎時4本程度に削減するか、プレミアムカーの連結のない特急を混在させるのかの、どちらかの方策がとられると思われます。どちらになるかは、現時点では明らかではありません。
ただ、プレミアムカーのない特急とある特急が混在すると、ダイヤ乱れ時の対応が難しくなります。そのため、「特急」の列車種別は8000系運用のみに限定し、日中15分間隔の運転に戻るのではないか、と想像します。
いずれにせよ、プレミアムカー導入時にはダイヤ改正が行われる可能性が高そうです。
阪急・阪神、JRは追随するか?
現状の京阪特急は、京橋駅や四条駅といった利用者の多い駅で、混雑時に着席チャンスが少ないという欠点があります。座席指定車の登場で、これら京阪の主要駅からの特急利用に座りやすくなるのは、大きなメリットではないかと思います。
それにしても、最近、これまで有料座席車のなかった路線に、有料座席指定車の導入やその検討が相次いでいます。嚆矢となったのが東武東上線の「TJライナー」で、最近は京王電鉄も有料座席車の検討を開始することを明らかにしています。指定席ではありませんが、東京の中央快速線でもグリーン車の導入が決まっています。
京阪のプレミアムカー投入で、関西で有料座席指定車のない大手私鉄は、阪急電鉄と阪神電鉄のみとなりました。阪急は京都線なら有料座席車に適するでしょうし、阪神は近鉄直通特急なら可能性があるでしょう。この両私鉄が座席指定車の投入に踏み切るかも、今後注目したいところです。
また、京阪間で競合するJR新快速も気になります。新快速は混雑が激しく着席需要が高いので、以前からグリーン車が設置されるのではないか、という憶測があります。実際には運用が広域に及ぶためグリーン車設置が難しいともいわれますが、導入されれば利用してみたい方が多いのではないでしょうか。(鎌倉淳)