しなの鉄道が、旧軽井沢駅舎を駅舎として再利用できないか検討しているようです。現在は記念館になっている古い駅舎の「現役復帰」は、実現するのでしょうか。
明治末期の姿を復原
しなの鉄道は、1997年の長野新幹線(現北陸新幹線)開業時にJR信越本線を引き継いで誕生した第三セクター鉄道です。
木造2階建の旧軽井沢駅舎は長野新幹線開業とともに取り壊されましたが、現駅舎に隣接する位置に移され、1910(明治43)年当時の姿に復原されたうえで再築されました。現在は「(旧)軽井沢駅舎記念館」として活用されており、鉄道遺産としても知られています。
(旧)軽井沢駅舎記念館は、1階の展示室が鉄道関連物の展示コーナーで、2階は再現された貴賓室などとなっています。この記念館を駅舎として再利用できないかと、しなの鉄道が軽井沢町に申し入れたそうです。
旧1番ホームは復活するか?
現在の軽井沢駅は橋上駅舎で、しなの鉄道のホームは地上1面2線です。改札階とホームを結ぶ階段は1カ所しかなく、幅が狭いために混雑が問題となっていますが、階段の増設は容易ではありません。そのため、しなの鉄道では、旧駅舎に待合室や改札口を設置し、駅としての機能を復活させ、現ホームと接続させることを計画したようです。
画像:JR東日本ホームページ
軽井沢駅には、現在のしなの鉄道ホームと平行して、使われていない旧1番線ホームがあり、このホームが記念館とつながっています。そのため、このホームも「現役復帰」させれば使いやすそうです。
ただ、旧1番ホームには、機関車などの保存車両が展示されているため、すぐには列車発着に使えません。したがって、旧駅舎を活用する場合でも、旧1番ホームを使うのではなく、通路などにより現ホームと接続が取られるとみられます。
「ろくもん」の待合室に
日本経済新聞2016年8月17日付によりますと、旧駅舎の待合室や改札は、通常の利用客向けのほか、長野~軽井沢間を走る観光列車「ろくもん」の乗降客の利用も想定しているそうです。
また、保存車両の移転やホームの改築が実現すれば、旧1番線を列車の発着に使う可能性もあるそうです。
軽井沢駅構内はJR線としなの鉄道線の改札が分かれているため、改札を増設してもJR側への影響はありません。橋上駅舎にある現在の改札も残され、新幹線との乗り換え利便性は維持されます。
一方、地上から乗り降りする場合は、旧駅舎のほうが便利になりそうです。
開業20周年にあわせた事業
記念館は軽井沢町の施設となっています。そのため、町は年内にも施設の利用条件や活用に向けた条例整備の詳細を詰める予定とのこと。館内の展示品は、場所を移すなどの措置が検討されます。報道を見る限り、旧駅舎の活用に軽井沢町も前向きのようで、「現役復帰」の実現性は高そうです。
しなの鉄道は2017年10月で開業20周年を迎えます。旧駅舎の「現役復帰」も、この20周年にあわせた事業でもある様子。実際には条例改正や整備に時間がかかるため、2017年の「現役復帰」が実現するかは微妙ですが、そう遠くない将来に、伝統ある木造駅舎が駅舎として返り咲きそうです。
歴史的建造物の保存は大切ですが、できることなら「保存」より「活用」がいいでしょう。その意味で、この「現役復帰構想」は素晴らしいと思います。東京駅丸の内駅舎が代表例ですが、古いものをリニューアルしながら使い続けることができるなら、それがいちばんではないでしょうか。(鎌倉淳)