貨物新幹線、積替基地の構造を公表。JR貨物が駅施設の特許出願

実現に現実味

JR貨物が、貨物新幹線と在来線貨物列車の「積替基地」の構造を公表しました。基地施設に関する機構の出願特許が公開されたものです。貨物新幹線の実現が、現実味を帯びてきました。

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貨物積替基地と移動機構

JR貨物が申請していた、貨物新幹線の積替基地に関する特許出願が公開されました。「異なる線路を走行する車両間にて貨物を容易に積み替えることができる貨物積替基地」と、その移動機構の提供を目的とする内容です。

特許出願の公開により、貨物新幹線と在来線貨物列車間で、どのように貨物を積み替えるのかが明らかになりました。貨物新幹線の実用化を見据え、積替基地の整備の検討が本格化していることを意味します。

H5系北海道新幹線

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貨物積替基地の構成

下図は、特許出願された代表図面です。貨物積替基地の構成を示しています。

上の2本線(12)と、下の2本線(11)が、在来線の線路です。真ん中の2本線(13)が新幹線の線路です。中央に停まっている車両が貨物新幹線です。

貨物積替基地
画像:特開2023-056477

在来線貨物列車と貨物新幹線の間には、荷物の搬送経路があります。在来線貨物列車から、31の搬送経路で積み出し、33の中間搬送経路で前後に移動し、32の搬送経路で新幹線に積み込む、という流れです。

特許申請によれば、「高速線を走行する列車は、有蓋車両を複数連結して構成される。かかる有蓋車両は、新幹線や特急列車等の旅客列車の座席の設置を省略した車両とする他、貨物の輸送専用に構成される車両としてもよい」とあります。

貨物新幹線は、旅客列車の座席を省略した車両か、貨物専用の新幹線車両を使用する、ということです。

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断面図

特許出願には、積替基地の断面図も掲載されています。ご覧の通り、中央の新幹線の両側にホームが設置され、在来線貨物列車と積み替えられるようになっています。

貨物積替基地
画像:特開2023-056477

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パレットで積み込む

貨物をパレットで収容する場合の状況も説明されています。

有蓋パレットまたは無蓋パレットを用い、有蓋パレットは規格化された航空パレットの上に有蓋部を備え、側面に設けられたトビラから貨物を出し入れします。

このパレットはコンテナに収容可能なサイズです。

貨物新幹線の輸送の概略

貨物新幹線を使った輸送の概略図も掲載されています。

貨物積替基地
画像:特開2023-056477

出発地からトラックで貨物駅に着き、在来線貨物列車に積み込みます。それを積替基地で貨物新幹線に積み替えます。

到着地の積替基地で別の在来線貨物列車に積み込み、貨物駅に到着し、トラックに積み替えるというフローです。

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中間駅も設置

貨物新幹線に中間駅を設け、そこから直接トラックに積み替えるという流れも示されています。

中間駅の例として示された平面図です。本線(61、71)の両側に荷役線(62、72)が設けられています。

貨物積替中間駅
画像:特開2023-056477

本線を新幹線車両が通過し、側線で荷物の積み降ろしをする、という構造です。既存の新幹線の途中に、積み降ろし用の貨物駅を設ける計画があることを示しています。

こちらは断面図です。中央が本線です。

貨物積替中間駅
画像:特開2023-056477

上図は在来線と接続していない貨物駅ですが、地上階にホームを設けて在来線の貨物列車を引き込むこともできます。

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ポイントは?

貨物新幹線積替基地の特許出願の内容は多岐にわたりますが、物流の技術的な内容は省略します。貨物新幹線計画全体として読み取れるポイントは、以下の通りです。

・貨物新幹線と在来線貨物を積み替える「積替基地」を新設。
・積替基地は、頭端式(起終点駅)と通過式(中間駅)を想定。
・在来線と接しないトラック積替専用駅も想定。
・車両は旅客車両の座席を撤去したものと、貨物専用車両を想定。
・貨物新幹線には規格化された航空パレットを使用。

東北・北海道新幹線での導入を想定

貨物新幹線は、国交省の「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」の取りまとめで、「新幹線による貨物輸送の拡大に向けた検討の具体化」として課題に挙げられました。具体的には東北・北海道新幹線での導入が想定されています。

JR貨物も国の検討会に参加し、導入に前向きな姿勢を見せています。2023年上半期の決算資料では、貨物新幹線のイメージを掲載しました。

貨物新幹線イメージ
画像:JR貨物決算説明会資料

 

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導入区間は?

今回の特許申請で、貨物新幹線の導入区間は明示されていません。ただ、積替基地を新設できそうな場所は、新幹線と在来線が接していて広い土地が確保できる地区に限定されますので、そう多くないようにも思えます。

既存の貨物ターミナルに隣接して「積替基地」を設けるのが合理的に思えますが、特許の申請内容をみると、必ずしも貨物ターミナルに積替基地を設けるわけではなさそうです。

札幌が有力だが

北海道の発着地は札幌が有力視されますが、札幌駅近辺に積替基地を設けるのは難しそうで、札幌貨物ターミナルが候補地となりそうです。

しかし、北海道新幹線の車両基地が作られる苗穂付近から、札幌貨物ターミナルまで5kmあまりの「新幹線の貨物線」を建設しなけなければなりません。その場合は、100億円規模の建設費が必要になりそうです。

そんな建設費を出せないというのであれば、札幌以南で新在が結節する長万部か、新函館北斗付近が候補地になるでしょう。どちらも、土地を確保するのは難しくなさそうです。

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本州側は仙台?

本州側の終点がどこになるのかは予想しづらいですが、貨物ターミナルと東北新幹線が接しているのは宇都宮貨物ターミナルです。ただ、宇都宮付近まで南下すると、新幹線の線路容量の問題が生じます。

線路容量の心配のない区間までと考えれば、仙台以北にとどめる可能性が高いようにも思えます。

その場合、仙台貨物ターミナルは新幹線から離れているので、新幹線の貨物線を建設しなければなりません。それよりも、新在が接する新利府周辺が作りやすそうな気がします。

また、在来線との積替機能を有しない「中間駅」については、青森付近と盛岡付近が有力でしょう。

特許の出願日は2022年9月7日、公開日は2023年4月19日で、すでに審査請求済みです。

特許を審査請求する段階になったのですから、貨物新幹線が現実味を帯びてきているのは確かなようです。(鎌倉淳)

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