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JR九州、指宿枕崎線と日南線「あり方議論」推進へ。中期経営計画に明記

廃止前提ではないが

JR九州が中期経営計画で、指宿枕崎線と日南線について、あり方の議論を推進すると明記しました。現時点では廃止前提ではなさそうですが、地元との協議の行方によっては、存廃の議論になるかもしれません。

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「将来のあり方議論を推進」

JR九州は、2027年度までの3カ年の中期経営計画を発表しました。2028年3月期の連結営業利益の目標を、2025年3月期見込みから24%増の710億円としました。鉄道事業については、DX化や技術革新による固定費の削減などで、2030年度までに140億円以上の収支改善を目指します。

注目は、ローカル線についての記述です。「サステナブルなモビリティサービスの実現を目指した地域との共創」というキャッチフレーズの下で、「主にローカル線における地域交通の将来のあり方議論を推進」することを掲げました。

具体的な路線名として、「指宿枕崎線(指宿・枕崎間)、日南線(油津・志布志間)」の2路線を示しています。

指宿枕崎線

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約4億円の赤字

JR九州が開示している2023年度の線区別収支によると、指宿枕崎線の指宿~枕崎間の輸送密度は222で、4億6200万円の赤字です。日南線油津~志布志間の輸送密度は179で、4億1800万円の赤字となっています。

いずれも利用者が少ないうえに赤字が多く、鉄道路線の維持が厳しい局面にあるのは確かでしょう。

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「検討会議」の設置を要請済み

指宿枕崎線については、「指宿枕崎線(指宿・枕崎間)の将来のあり方に関する検討会議」を設置して、地元自治体との協議を開始しています。日南線の油津~志布志間についても、同様の検討会議を設置したいという考えを、JR九州が地元自治体に伝えています。

この2線区については、実際に「検討会議」が設置されているか、設置の要請を済ませていることから、中期経営計画に記載されたようです。

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廃止前提ではないが

2024年8月に開催された、指宿枕崎線の検討会議の議事録を見ると、JR九州側は「議論の場を設けていただきたいと言ったのは、このまま何も手を打たずにいると、将来、地域の足を確保する選択肢がなくなってしまうことを恐れたため。まだ今であれば、打てる手があると思う」と述べていて、鉄道廃止を視野に入れた協議とは位置づけていないことを強調しています。

そのうえで、「今後の人口減少や少子化を踏まえれば、現状維持のままでは利用状況はさらに厳しくなることが見込まれ、将来にわたり地域が鉄道を活かしていくには地域の鉄道運営への積極的な関与が重要だと考えている」とも伝えていて、地域自治体の関与を求めています。

この議事録を見る限りでは、現時点で、JR九州は、両路線を近い将来に廃止するという考えではないようです。

ただ、利用者が非常に少ないという現実があり、人口減少を見据えれば、さらに利用者が減少する未来も見えています。それだけに「議論をしても利用者が減るばかりだった」という結果になれば、今後、存廃を検討する局面を迎える可能性もありそうです。(鎌倉淳)

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