JR東日本が、新たなグループ経営ビジョンを公表しました。紙のきっぷからの脱却や、ウォークスルー改札の導入などを目指すほか、エアモビリティ事業への参入も掲げました。
運輸と生活の2軸で成長
JR東日本は新たなグループ経営ビジョン「勇翔2034」を公表しました。
キャッチフレーズは「『当たり前』を超えていく」。その骨格は、運輸事業と生活関連事業の2軸での成長を目指すというものです。
営業収益(売上高)については、2024年度の2兆8000億円から、2031年度に4兆円、2034年度に5兆円とする目標を掲げました。
紙のきっぷからの脱却
鉄道利用者に直接関係しそうな内容をみていきましょう。
まずは、すでに進められていることですが、きっぷのデジタル化を促進していきます。Suicaのセンターサーバー化や、きっぷのクラウド化をすすめ、乗車券類をIC化します。これにより、磁気券を縮小し、紙のきっぷからの脱却を促進します。
また、ウォークスルー改札を導入し、ICカードをタッチすることなく自動で改札口を入出場できるシステムを構築します。
AIやロボットの導入も進めます。販売窓口のAI化のほか、駅構内での案内にロボットを活用します。
エアモビリティ事業に参入
他の交通機関との連携も強化します。デマンド交通で目的地までシームレスに移動できるような「未来のモビリティ」を実現します。
また、バス事業のアライアンスを拡大するほか、空飛ぶクルマの導入などで、交通体制を
強化します。エアモビリティ事業を新しいビジネスとすることを目指します。
鉄道とバス、航空機、ライドシェア、バイクシェア、エアモビリティなど、多様な交通手段をつなぐ立体的なMaaSを構築します。
地方路線については、モーダルミックスを推進し、地域交通のリ・デザインを図ります。日本郵政との連携をすすめ、郵便局と駅とを合わせて地域拠点化していきます。
また、インバウンド需要の取り込みを進め、東北への宿泊を伴う移動を1.5%程度から5%に拡大することを目指します。
Suicaにコード決済も
Suicaの「生活デバイス化」も目指します。コード決済や電子マネーの送受機能、地域限定バリューの機能などを追加します。
地域連携ICカードと統合し、各地域に根差したSuicaを「ご当地Suica」として新設し、公共施設などの利用証としたり、給付金を地域バリューで受け取ることを可能とします。マイナンバーカードとも連携します。
鉄道を中心としたモビリティと、生活ソリューションのサービスを一体化した新たなサブスク商品も考案します。
移動と駅を基軸とした「移動・商業・エンタメ・金融・医療・コミュニティ」を統合するデジタルプラットフォームとして、Suicaを進化させようという試みです。
鉄道プロジェクトに乏しく
新たな鉄道プロジェクトとしては、羽田空港アクセス線が記されたのみです。整備新幹線については、同社内での具体的な建設計画がないからか、まったく触れられていません。
新駅については、沿線まちづくりで、交通ネットワークの強化の手段として記されています。
新経営ビジョンは、JR東日本の将来像の大枠を示したものです。鉄道事業を拡大する構想ではなく、鉄道事業を効率化しながら、生活ソリューション事業を拡大し、収益を伸ばしていく内容といえそうです。(鎌倉淳)