JR東海が新型「ハイブリッド特急車両」投入で、「ひだ」「南紀」はどう変わるか。キハ85系は引退へ

JR東海が、在来線の特急「ひだ」や「南紀」向けに、エンジンと蓄電池を併用したハイブリッド方式の車両を新たに製造すると発表しました。最高速度120km/hの高速運転を目指し、2019年度末までに試験走行車を製造、2022年度に量産車を投入する目標です。

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非電化区間向け特急車両

JR東海の在来線非電化区間を走る特急「ひだ」と「南紀」には、現在キハ85系特急形気動車が使われています。キハ85系はJR東海発足後初の新形式車両で、1989年に営業運転を開始しており、まもなく運転開始30年を迎えます。

そのため、JR東海ではキハ85系の置換え用として、非電化区間向けの新型特急車両を開発すると発表しました。

JR東海ハイブリッド特急車両
画像:JR東海プレスリリース

JR東海ハイブリッド特急車両
画像:JR東海プレスリリース

シリーズハイブリッド方式

新型特急車両は、エンジン発電と蓄電池による電力で、モーターにより走行するハイブリッド方式を採用します。加速時はエンジン発電を主として走行し、状況に応じて蓄電池による補助を行うしくみで、日本のハイブリッド方式の鉄道車両としては最高の営業速度120km/hを目指すとしています。

ブレーキ時は回生ブレーキで発生した電力により、蓄電池を充電します。また、停車時にはアイドリングストップ機能を採用しエンジンを停止します。空調や照明に使う電力は、走行時に生じた電力を蓄電池に貯めて供給します。

JR東海ハイブリッド特急車両
画像:JR東海プレスリリース

JR東海ハイブリッド特急車両
画像:JR東海プレスリリース

こうした駆動方式は、「シリーズハイブリッド方式」と呼ばれます。自動車のハイブリッドのようにエンジンとモーターを動力として併用する方式とは異なり、「エンジンを発電用の動力源として搭載した電車」とでもいうべきものです。「電気式気動車」「ハイブリッド気動車」などとも呼ばれ、JR東日本のHB-E210系などで実用化されています。

JR東海では、ハイブリッド方式の採用により、燃費がキハ85系に比べ約15%向上するとしています。気動車特有のギアチェンジも解消され、乗り心地も改善。エンジン数が1両あたり2台から1台になることや、駅停車時のアイドリングストップ、防音床の採用などにより、静粛性や乗り心地も向上するということです。

「いま考えられる機能をすべて備えた」

新型車両では、車内設備も改善します。外国人旅行者対応として、大型スーツケースも置ける客室内荷物スペースを確保するほか、全座席にコンセントを設置。今後、日本の在来線特急では外国人旅行者の割合が増えるとみられており、それを見据えたのでしょう。トイレは温水洗浄機能付で、オストメイト対応多機能トイレも設けます。

客室はLED照明で、1編成あたり18台の防犯カメラを客室内とデッキに設置します。日本経済新聞東海版2017年6月7日付によりますと、記者会見した柘植康英社長は「いま考えられる機能をすべて備えた」と自信を示したそうです。

まず、試験走行車として4両(4両編成1本)を2019年度末までに製造。1年間をめどに基本性能試験や長期耐久試験などを行います。量産車の導入は2022年度を目指すということです。

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所要時間は大差なさそう

1989年に登場した現行のキハ85系は、カミンズ社の直列6気筒エンジンを搭載し、「電車に匹敵する性能のディーゼルカー」と評されました。最高速度は120km/hで、ハイブリッドとなる新型車両と同じです。そのため、新型車両が導入されても、「ひだ」や「南紀」の所要時間に大きな変化はなさそうです。

キハ85系は広い客室窓で「ワイドビュー」の愛称がつけられ、先頭車両で前面展望が楽しめるのも大きな特徴でした。

新型車両の画像を見ると、前面は貫通扉になっており、運転席の後ろにデッキが配置されるようです。もう一方の先頭車がどうなるのかがわかりませんが、キハ85系のような前面展望を楽しめる車両にはならない可能性もあります。

その他、まだわからない点としては、車体傾斜装置が付くのか、車体はステンレス製かアルミニウム合金製か、といったところでしょうか。紀勢線も高山線も勾配の多い路線ですが、登坂能力も気になります。

2022年度は注目の年に?

2022年度末の営業投入予定ですから、新型車両の開発に5年をかけることになります。鉄道車両の開発期間としては長いほうで、JR東海としては初となるハイブリッド車両にじっくり取り組むようです。

2022年度はJR西日本で「やくも」の新型車両が登場するメドといわれており、JR特急車両としては注目の年となるかもしれません。

一方で、JR最初期の形式であるキハ85系は、退役の可能性が高くなりました。快速列車などへ転用されるかもしれませんが、2022年度となれば車齢30年を超えますので、定期運用からは引退する可能性が高そうです。(鎌倉淳)

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