飛行機と鉄道のチケットをセットで購入できる。こうした「エア&レール」の取組みが、日本でも始まりました。
JALとJR西日本が、米ロサンゼルスと関西国際空港を結ぶ直行便と、特急「はるか」のきっぷ(関空-京都)のセット販売を開始したのです。航空会社と鉄道会社の提携は、これまで日本では限定的でしたが、今後広まっていくのでしょうか。
ロス発京都行き航空券
JALとJR西日本が提携して発売を開始した商品は「JAL&はるか」。ロサンゼルスから京都までJAL航空券とJR西日本のチケットをセット販売し、JR西日本の「はるか」の運賃・料金が片道2850円から44%引きの1600円になります。発売開始は2016年4月26日です。
このチケットのポイントは、価格が安くなる、という点だけではなさそうです。航空会社にとっては、「京都」という空港のない土地へのチケットを発売できるのが大きなメリットです。つまり、これまでは「ロサンゼルス~大阪(関西)」までの航空券しか販売できなかったのが、これからは「ロサンゼルス~京都」への航空券を販売できるのです。
「エア&レール」はヨーロッパでは一般的
こうした航空券と鉄道乗車券を組み合わせた「エア&レール」は、ヨーロッパでは一般的です。とくに、シャルル・ド・ゴール空港にTGVが乗り入れているフランスでは、TGVと組み合わせた航空券が広く販売されています。
たとえば、エールフランスの発着地にはTGVの駅が広く設定されています。「東京(成田)~シャルル・ド・ゴール~リヨン」などのチケットを実際に買うことができます。この場合、シャルル・ド・ゴール~リヨン間はTGVです。
これを日本にあてはめれば、たとえば「ニューヨーク~成田~横浜」や「バンコク~新千歳~小樽」といったチケットになるでしょう。日本の空港には新幹線が乗り入れていないので空港からの直接の到達地は限られますが、東京駅や新大阪駅での「乗り継ぎ」を加えれば、発着地を広げることは可能でしょう。
改札口の問題
これまでこうした取り組みが日本でほとんど行われていませんでした。機内で南海「ラピート」や京成「スカイライナー」のチケットを販売する程度でしょうか。
日本で「エア&レール」が広まってこなかった理由はいくつもあるでしょうが、とりわけJRと航空会社がライバル関係にあり、あまり連携してこなかったという点があげられそうです。その意味で、今回、JALとJR西日本が提携したことには、画期的です。
今回、提携上の問題となった点として、改札があります。ヨーロッパの鉄道には、改札口というものがありません。そのため、プリントアウトした「Eチケット」を持っていれば鉄道に乗車でき、車内検札で車掌に提示すれば済みます。しかし、日本には改札口があり、しかも自動改札です。
この問題について、JR西日本は、航空券などで採用されている「QRコード」を鉄道のきっぷに初めて採用しました。利用者がウェブサイトで印刷したチケット上のQRコードを、改札機に新たに設置した端末で読み取らせ、自動改札機を通れるようにしたそうです。
これにより、外国からの旅行者も、関空到着後、関西空港駅で乗車券を購入することなく、事前にプリントアウトしたQRコード付きチケットで改札口を通ることができます。飛行機から列車への乗り換えを、あたかも飛行機同士の乗り継ぎのように扱えるのです。
交通需要のパイを増やす
JALにとっては「京都行き」という、他社にはないチケットを発券できるメリットがあることはすでに述べました。一方、JRには「はるか」を利用してもらうメリットがあります。こうしたチケットがなければ、外国人は関空からバスに乗ってしまうかもしれませんが、これにより鉄道に誘導することができる、というわけです。
産経新聞4月29日付によりますと、JR西日本のの堀坂明弘常務執行役員は「インバウンドの増加で交通需要そのもののパイを増やすことが大事で、国際線と国内の鉄道の相互の移動をどうやって増やしていくか、今後とも連携を強めたい」と説明したそうです。
ライバル関係にある航空会社と積極的に連携する姿勢を示したわけで、今後、京都以外の発着地が設定されるかもしれません。すなわち、新大阪乗り換えで山陽新幹線区間への設定などが考えられそうです。
積極的に活用してほしい、と思うのは、JR北海道です。いまや日本有数のインバウンド空港となった新千歳空港に鉄道路線を乗り入れているのですから、こうした施策で旅客をバスから鉄道に誘導できるはずです。
札幌市内はもとより、小樽、ニセコ、トマム、帯広などへの国際線航空券を、航空会社と提携して作ってみてはどうでしょうか。(鎌倉淳)