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茨城空港「大拡張計画」の詳細。ターミナル増築も、TX延伸は記載なし

首都圏第3空港として機能強化

茨城空港が大拡張方針を打ち出しました。ターミナルを増築するほか、誘導路や平行滑走路の新設も視野にいれ、「首都圏第3空港」としての機能を高めていきます。詳細を見てみましょう。

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毎時2便に緩和

茨城空港は、航空自衛隊の百里飛行場を官民共用化し、2010年に開港しました。開港当初は年間20万人程度が利用する小規模な空港でしたが、スカイマークが拠点化したことで利用者は年々増加し、2019年度には年間約78万人が利用するまで成長しています。

2023年10月には、空港運用の弾力化を図ることを決め、航空機の着陸制限を毎時1便から2便に緩和。さらに、国際ビジネスジェットなども受け入れられるようになりました。

こうした状況の変化を背景に、茨城県では、「茨城空港のあり方検討会」を設置。必要な取り組みを、「将来ビジョン(案)」という形でまとめました。

茨城空港

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ターミナルビルを拡張

「将来ビジョン」で新たな取り組みとして最初に掲げられたのが、ターミナルビルの拡張です。現在のターミナルビルは、毎時1便を前提に設計されたので、2便が同時に離発着する場合、保安検査場や待合室が混雑し、手荷物受け取りのターンテーブルも不足します。

現状では、保安検査場は1レーンだけで、手荷物受け取りのターンテーブルも1レーンのみです。待合室は298席分だけで、中型機が2便発着するなら足りなくなります。

ターミナルビルだけでなく、駐機場や給油施設も毎時1便対応で設計されているので、今後、毎時2便を受け入れるなら、すべて拡張や増設が必要です。

ターミナルビルの拡張スペースには、現在の南側臨時駐車場を充当します。拡張規模は未定ですが、下図を見ると、3倍以上に増築することも想定しているようです。

茨城空港拡張
画像:茨城空港将来ビジョン案

 

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誘導路も整備

ターミナルビルだけでなく、駐機場も拡張します。駐機場の拡幅にあわせて、複数機材の離発着がしやすくなるよう、取付誘導路を複線化します。

取付誘導路を複線化すると、複数便の離発着が重なる際に、駐機場から滑走路への出入りで、待ち時間がなくなります。

茨城空港拡張計画
画像:茨城空港将来ビジョン案

 

平行誘導路の整備も視野に入れます。平行誘導路があれば、最大毎時8便の離発着ができるようになります。

当面は毎時2便なので必要はなさそうですが、毎時6~7便が見えてきた段階で、需要を考慮して整備をおこないます。

茨城空港大拡張
画像:茨城空港将来ビジョン案

 

滑走路、誘導路、駐機場の舗装強度も高めます。現状ではボーイング767-300ER(187t)が離発着できる強度がありますが、ボーイング787-9(255t)など、就航ニーズに応じた舗装厚の確保をおこないます。

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ビジネスジェットの受け入れ強化

ビジネスジェットの受け入れ強化は、茨城空港の将来構想の軸の一つです。施策としては、専用待合室や、手続きスペースを確保します。専用動線や機材への接車サービスの導入も目指します。

ビジネスジェットを活用した、観光や医療需要を取り込むため、関係者間での協力も強化します。

茨城空港大拡張
画像:茨城空港将来ビジョン案

 
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アクセス充実も目指す

茨城空港の長所は、駐車場が無料で、3,600台の大容量を誇ることです。ターミナルビルの拡張により、南側臨時駐車場がなくなりますが、他の駐車場を立体化することで補います。

現状で満車になることはありませんが、増便すれば、混雑が予想されます。そのため、事前予約の導入も検討します。あわせて、有料化される可能性もあります。

公共交通に関しては、おもに石岡駅、水戸駅発着のバスがあります。東京駅からの便もわずかですが残されています。発着便数の拡大にあわせて、こうした公共交通アクセスのさらなる充実を目指します。

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国際線就航拡大

茨城空港発着の国内線は、現在のダイヤで、札幌2往復、神戸3往復、福岡1往復、那覇1往復の計7往復があります。

茨城空港国際線
画像:茨城空港将来ビジョン案

国際線は、日により、清州、台北、上海、西安の便が設定されています。

茨城空港国内線
画像:茨城空港将来ビジョン案

現在の茨城空港は、1日最大でも9往復程度です。

毎時1便の離発着では、増便の余地は乏しかったのですが、2便となることで、新たな便や行き先の設定が可能になるでしょう。3月からは、福岡便が1往復増便となりますが、今後は国内線の増便と、国際線の行き先拡大に力を入れるようです。

国際線では、ベトナムやタイ、シンガポールといった東南アジアや、欧米路線の就航を目指します。

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首都圏第3空港として

そのほか、詳細は省きますが、地域のまちづくりとの連携を強化するほか、首都圏の大災害に備えた空港機能の強化も図ります。

将来ビジョンに描かれた整備計画が実現すれば、茨城空港は現状の数倍の設備を備えた、堂々たる空港になりそうです。

茨城空港は、首都圏第3空港ともいわれますが、現状を正直にいえば、北関東の地方空港にとどまります。しかし、平行滑走路も備え、多彩な便が頻繁に発着するようになれば、首都圏第3空港として、より広域の利用者を集めることができるでしょう。

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アクセス鉄道の記載なし

茨城県では、つくばエクスプレス(TX)を土浦まで延伸する方針を決めていて、将来的には茨城空港延伸も視野に入れているようです。利用者としても、空港アクセス鉄道の整備は期待したいところです。

しかし、「将来ビジョン」には、鉄道整備の記載はありません。増枠で利用者が増えたとしても、当面は年間100万人台にとどまりそうで、鉄道新線を議論する段階には至らないということでしょう。

他空港の例をみると、空港アクセス鉄道を敷設するには、少なくとも年間300万人程度の利用者が必要です。現状の4倍程度ですので、実現には国際線の拡大が不可欠でしょう。

その域に達すれば、たとえば、TXの茨城空港延伸も視野に入るかもしれません。しかし、相当先の話になりそうです。(鎌倉淳)

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