与党検討委員長が北陸新幹線で「舞鶴・関空ルート」を提案。新大阪駅はスルーで、学研都市、天王寺駅を経由とか

北陸新幹線の敦賀以西ルートを議論する与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の検討委員会の委員長が、独自ルートを提案しました。敦賀から小浜、舞鶴を経て京都を経由し、けいはんな学研都市、天王寺を経て関西空港に至るというルートです。

「舞鶴・関空ルート案」とも呼べるもので、常人の発想の斜め上を行く新ルートです。これが与党の正式提案になるのでしょうか。

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「関西空港までの直結が必要」と

PTの検討委員会は、北陸新幹線延伸に関わる沿線の自民・公明の国会議員で構成されます。10月の内閣改造で高木毅委員長が入閣したことなどを受けてメンバーが入れ替わり、自民党の西田昌司参議委員議員が新委員長に就任しました。西田新委員長は日本経済新聞の取材に対し、北陸新幹線を「関西国際空港まで直結させる必要がある」と語りました。

日本経済新聞近畿版11月20日付によりますと、西田委員長は、「近畿の最大の欠点はインフラの南北軸がないこと」としたうえで、京都府舞鶴市から関西空港までをつなぐ独自の延伸ルート案を明らかにしました。

西田氏は「小浜から舞鶴を経由するルートを提案したい」とし、「京都駅からは進路を南に向けて『けいはんな学研都市』付近を経由し、天王寺駅から関空までを結ぶのが経済効果も大きいのではないか」と述べたそうです。関空までの延伸で「空港から京都が30~40分、北陸とも1時間以内で結ばれる」と、ルートの優位性も強調しました。

関西空港駅

新大阪駅を経由しない「斬新」な発想

要するに、敦賀~小浜~舞鶴~京都~学研都市~天王寺~関空へと至るルートです。新大阪駅にも接続しない「斬新」な発想は、常人には思いつきません。日経では「新大阪駅を終着駅とする現行の整備計画の見直しに取り組む考えを示したもので、PTでの議論を経て計画見直しを国土交通省に求めていく」と解説しています。

こんな斜め上の発想の持ち主の西田委員長とは、どんな方なのでしょうか。経歴を見てみると、京都市出身で滋賀大学経済学部卒。京都府選挙区選出の2期目の参議院議員です。父親も同じ選挙区で参議院議員を3期つとめましたので、親子で5期目の京都の世襲国会議員ということになります。

西田委員長は、関西全域のメリットを考えた上で、今回のルートを提案したのでしょう。京阪間に既存新幹線と併走する新路線を作るくらいなら、京都から学研都市を経たほうが、これまで新幹線のなかった奈良や大阪南部にもメリットがありそうです。関空へ新幹線を引くことに賛同する人は多いでしょうし、舞鶴という日本海側の重要拠点に新幹線を引くことにも意義があるでしょう。そうした意図は理解できないでもありません。

「北陸新幹線」が「京都縦断新幹線」に

とはいえ、西田委員長の経歴を見てしまうと、提案のルートが京都府を縦断するルートになっていることが気になってしまいます。与党PTの検討委員長ともあろう方が、よもや古典的な地元誘導型の提案をしているとは思いたくありませんが、そう見えてしまうのが残念です。

「北陸新幹線」が「京都縦断新幹線」に入れ替わってしまうようなこの構想。さすがに採用されることはないと思います。ただ、一つ意味があるとすれば、北陸新幹線のルート選定において、「小浜」「湖西」「米原」の3ルート案に与党がこだわらなくなっていることを示したことです。

おりしも、関西広域連合の井戸敏三連合長(兵庫県知事)は、JR西日本が示した独自案である「小浜・京都ルート案」について、「議論の俎上に載せざるを得ない」と述べたそうです。

与党が当初の3ルート案にこだわらない姿勢を見せ、関西広域連合もそれを認めたとなると、西田委員長の提案は「小浜・京都ルート案」の援護射撃になるかもしれません。それを西田委員長が意図したかどうかは別として。

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