北陸新幹線・京都-新大阪間は、なぜ「南回り」に決まったか? 「松井山手新駅」が優れている理由

北陸新幹線の敦賀以西のルートの京都-新大阪間のルートについて、与党検討委員会は、京田辺市付近を通る「南回り」のルートで建設する方針で最終調整していることがわかりました。報道各社が報じています。

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費用対効果は「北回りと遜色ない」

北陸新幹線の敦賀以西のルートについては、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の検討委員会が、2016年末に、福井県小浜市から南下して京都を経由する「小浜・京都ルート」を採用することで一致し、中間報告をまとめています。ただ、京都-新大阪間のルート決定は持ち越され、継続審議とされていました。

この区間について、検討委は、東海道新幹線の南側を通り、京都府の京田辺市に新駅を設置する「南回り」のルートとする方向で調整を進めていることがわかりました。

京都新聞2017年03月07日付によりますと、南回りルートについて、JR学研都市線の松井山手駅に接続する形で北陸新幹線の新駅を建設することを検討しているとのこと。つまり、京都駅から第二京阪に沿う形で南下し、松井山手を経て南西に向かい、新大阪に至るルートです。

京都新聞によると、「松井山手駅付近を経由した場合、建設費はJR西が主張する北回りと比べて高くなるものの、距離や所要時間は大きく変わらない見込み」とのこと。費用対効果も「北回りと遜色ない数値」になるそうです。

北陸新幹線金沢駅

「京都府内にもう一駅」

北陸新幹線の「小浜・京都ルート」は、京都府の財政負担が大きい経路です。そのため、京都府としては、たんに新幹線が通過するだけでなく、府内にもう一駅を作ることを求めてきました。財政負担を府民に説明するためにも、新駅は不可欠だったと言えます。

京都-新大阪間に東海道新幹線に加えて北陸新幹線の線路を敷くことに関しては、二重投資との批判もあります。その意味でも、この区間に新たに新幹線を作るなら、建設理由として新駅が必要だったのでしょう。

こうした状況を考えると、南回りで京田辺市内に駅を作るのは当然の帰結なのかもしれません。

淀川左岸エリアのアクセス改善

松井山手駅に新幹線の駅ができれば、新幹線アクセスが不便な淀川左岸エリアから京都駅や新大阪駅へのアクセスが改善されます。

そして、松井山手は、京都府といっても大阪府との府境に位置します。そのため、新駅ができれば大阪府民の利便性も上がることから、大阪府の建設費負担の理由付けにもなるでしょう。そう考えると、松井山手駅に新幹線新駅を作るというアイデアは政治的に優れているといえそうです。

ただ、巨費を投じてまで、この区間に新幹線を通す意味はあるのか、と問い直したときに、疑問が残るのも事実です。南ルートは政治的に優れているとは思いますが、それよりも京都-新大阪間で東海道新幹線と線路を共用する技術開発を考えたほうが、経済的には優れているのではないか、と思わなくもありません。(鎌倉淳)

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