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北陸新幹線延伸「第3の案」はあるか。維新・前原氏が米原ルートを撤回

「相当ハードルが高い」

日本維新の会の前原誠司議員は、北陸新幹線新大阪延伸について、米原ルートの実現が難しいという見解を示しました。「第3の案をまとめる」としていますが、どのような内容が考えられるのでしょうか。

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「実現が難しい感触」

北陸新幹線の敦賀~新大阪間の延伸事業については、2016年に「小浜・京都ルート」で建設することが決定しています。ただ、建設費の高騰や、環境問題、沿線である京都府市での反対論といった問題があり、いまだに着工できていません。

2025年7月の参議院選挙区では、米原ルートの再検討を唱えた日本維新の会の議員がトップ当選。これを受け、与党の新幹線整備委員会委員長を務める西田昌司参院議員は、ルートの費用対効果を再試算すると表明しています。

この問題について、日本維新の会の前原誠司顧問は、2025年9月29日、記者団に対し、米原ルートは「実現が難しい」という見解を示しました。

米原ルートは、米原駅で東海道新幹線に接続します。共同通信によれば、東海道新幹線を運営するJR東海について、「彼らには彼らの考えがあり、相当ハードルが高い」と話しました。そのうえで「第3の案をまとめ、提示する取り組みに移りたい」としています。

北陸新幹線白山

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大きな方針転換

前原氏は、2024年の衆議院選挙でも、自身の公約として米原ルートの推進を掲げていました。参議院選挙でも、米原ルートを推す候補者を支援しています。その前原氏が「相当ハードルが高い」と認めたのですから、前原氏にとっても、日本維新の会にとっても、大きな方針転換といえます。

米原ルートには、東海道新幹線と北陸新幹線のシステムの違いや、東海道新幹線のダイヤが過密であることなどの課題が、これまでに数多く指摘されています。

ただ、前原氏は、そうした課題を認識し、解決可能と見込んで、公約として掲げていたはずです。当面は米原駅乗り換え、リニア開業後に東海道新幹線直通を探るといった段階的な手法も考えていたようです。

にもかかわらず、米原ルート推進を撤回するということは、おそらくは、前原氏がJR東海や国交省の担当者と議論し、実現可能性を検討したうえでの、同氏なりの結論とみられます。「彼らには彼らの考えがある」というのは、JR東海やJR西日本が強硬に反対した状況をうかがわせます。

なんであれ、二度の国政選挙で掲げた公約を撤回するのですから、相応の理由があるとみられます。いずれ、議員本人から有権者への説明があるでしょう。

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「第3の案」とは?

では、前原氏のいう「第3の案」とは、どういうものになるのでしょうか。

これまでの議論で明確になったことは、「京都市中心部を通るルートは難しい」「東海道新幹線への乗り入れも難しい」ということです。また、京都府北部の山岳地帯を経由するルートは難工事が予想されるうえに、環境面での反対論も根強く、強行すれば泥沼化するおそれがあります。

他のルートを検討する場合でも、滋賀県は受け入れに難色を示していますので、滋賀県を経由するルートも簡単ではありません。京都府は、新幹線が通ることは拒否していませんが、巨額の費用負担が生じるとなれば、財政的な理由で受け入れられなくなる可能性があります。

京都市内を通らなければ、建設費も下がりますし、建設の難易度も下がります。しかし、特急「サンダーバード」を北陸新幹線に移すのであれば、京都市をルートから外すわけにはいきません。JR西日本としても、京都市内を経由するルートを求めています。

これらをまとめると、北陸新幹線新大阪延伸ルートにかかわる条件は以下の通りです。

・京都市内を経由する
・京都市中心部は経由しない
・京都府北部山地は経由しない
・京都府市の財政負担を最小限にする
・滋賀県を経由しない
・東海道新幹線へ乗り入れない

なかなか難しい条件です。さらに、費用便益比が1を超える程度の費用対効果も求められます。そんなルート案があるのでしょうか。(鎌倉淳)

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