北海道新幹線の東京~新函館間の所要時間は最短4時間10分になります。JR北海道が北海道新幹線の概要を発表し、明らかにしました。
北海道新幹線の開業予定は、2016年春。新規開業区間は新青森~新函館(仮称)で、開業後は東京から直通列車が走ります。JR北海道の使用車両はJR東日本の「はやぶさ型」E5系をベースにしたH5系。もちろん、JR東日本のE5 系も直通乗り入れします。その所要時間が最短4時間10分となったのです。
東京~広島間とほぼ同じ距離・時間
東京から新函館の実キロは823キロ。これは東京~広島間とほぼ同じです。東京~広島間は東海道・山陽新幹線で約4時間ですから、大きな違いはないと考えることもできます。
ただ、東海道新幹線は現時点で最高速度270km/h、山陽新幹線は300km/hです。これに対し、東北新幹線は時速320km/hとなっています。停車駅の数は東北新幹線のほうが少ないのですから、東京~新函館が東京~広島よりも時間がかかるというのは残念でしょう。「最速」が4時間10分ですので、多くの列車は4時間20分程度になるとみられます。
これでは、対航空機との競争では苦戦を強いられるかもしれません。広島空港と違い、函館空港は市内まで7km程度と近いのに対し、新函館駅は函館市街地まで17kmもあるからです。新函館~函館間は電化され高速の連絡列車が走りますが、それでも約17分かかる見込みです。
画像 JR北海道
青函トンネルの速度規制
それにしても、なぜ「東北・北海道新幹線」はこんなに遅いのでしょうか。よく知られた話ですが、その理由は途中の速度規制にあります。東北新幹線のうち、最高速度の320km/hで走れるのは宇都宮~盛岡間だけで、盛岡以北は原則260km/h制限。奥津軽(仮称)~木古内間の在来線との共用区間では140km/hに制限されます。この共用区間の長さは82kmにも及びます。
北海道新幹線着工当初は、新青森~新函館間は約40分とされていましたが、この減速運転により、約58分もかかることになりました。これが、所要時間が長くなってしまった一つの理由です。
ただし、それだけではありません。そもそも盛岡以北の東北・北海道新幹線がなぜ260km/h制限なのでしょうか。1970年代に開業した山陽新幹線でさえ300km/h運転を行っているというのに、21世紀がはじまって10年以上も経つ北海道新幹線が260km/h制限というのは理解に苦しむ話です。1964年に開業した東海道新幹線の270km/hよりも遅いのです!
JRが勝手に高速化できない
JRに詳しい関係者に話を聞いてみると、「技術的な話ではなく政治的な話」との答えが返ってきました。簡単にいうと、盛岡以北はJRの保有ではなく鉄道・運輸機構の所有物であり、JRが勝手に高速化することはできないのです。もし、高速化をJRが求めると、その対策などの名目で線路使用料が引き上げられるため、JRが高速化に積極的でない、ということのようです
JRは利潤を追求する民間企業ですから、260km/h運転で得られている利益と、経費を積んで320km/hで得られるであろう利益を天秤にかけます。そこで現状のままのほうが大きな利益が得られる、と判断すれば、260km/h運転を維持していくでしょう。
企業の論理からすれば、それは仕方ありません。一方で、政府としては線路使用料を値上げして、今後の整備新幹線の建設費用に充てたいという思惑もあるようです。JRとしてはその手に乗りたくない。こうした両者の利害と思惑が絡み合い、結局現状維持、というのが盛岡以北の新幹線の姿で、これは、2015年に金沢開業を控えた北陸新幹線でも同じ構図です。
国民全体の利益を考えたら、320km/h運転が可能なら実現したほうがいいに決まっています。技術的に可能にもかかわらず、新幹線建設・所有の枠組みがそれを妨げているとしたら、なんと不幸な話でしょうか。
整備新幹線の不合理な枠組み
現在の整備新幹線建設の枠組みには他にも不合理な点があります。わかりやすいのは「並行在来線問題」で、これも貨物を含めた鉄道全体の利益から考えれば合理的とは思えません。また、2012年に整備新幹線全体の事業期間を大幅に延ばしたために、総工費が従来の2兆 7,500億円から3兆 400億円に増加したという問題もあります。北海道新幹線の札幌開業に20年以上の時間をかけるなどというスキームが、こうした不合理を生んでしまっているのです。
整備新幹線建設の是非については、さまざまな意見があるでしょう。しかし、建設すると決めて、その事業を進めていくのであれば、もう少し合理的な方法があるのではないか、と思わずにはいられません。新幹線は鉄道会社のたんなる所有物ではなく、国民全体の大事なインフラです。全体の利益から、よい解決方法を探し出してほしいものです。