「北海道全線フリーきっぷ」「みなみ北海道フリーきっぷ」をどう使う? 利用期間が短いので、復路放棄か単純往復に利用価値?

JRから「北海道全線フリーきっぷ」「みなみ北海道フリーきっぷ」が2013年3月1日より発売されます。東京から北海道への旅行用です。同時期に周遊きっぷが廃止されるので、その代替として発表されたのかと思いきや、使い勝手はかなり違います。このきっぷの特徴と、使いこなし方を考えてみましょう。

「北海道全線フリーきっぷ」「みなみ北海道フリーきっぷ」は、東京から北海道までの往復の乗車券と、北海道内のフリーエリアがセットになったきっぷです。フリーエリア内では特急・急行列車の普通車自由席が乗り降り自由。いわゆる「特急乗り放題きっぷ」です。フリーエリアまでの往復は「運賃部分」のみ。つまり普通・快速列車のみ利用可能で、料金部分は含まれていません。ただし、別途特急券などを購入すれば新幹線や寝台特急「あけぼの」なども利用できます。

利用期間は2013年4月から。ゴールデンウィークやお盆、年末年始も利用できる通年型きっぷです。2014年3月までの発売が決まっています。

きっぷの概要は以下の通りです。

■北海道全線フリーきっぷ
・発売期間 2013年3月1日-2014年3月31日(利用開始日の前日まで発売)
・利用期間 2013年4月1日-2014年4月5日
・有効期間 5日間
・価格 おとな29,800円 こども14,900円(東京都区内発)
・フリーエリア JR北海道全線と、津軽線蟹田-中小国間

北海道全線フリーきっぷ

■みなみ北海道フリーきっぷ
・発売期間 2013年3月1日-2014年3月31日(利用開始日の前日まで発売)
・利用期間 2013年4月1日-2014年4月3日
・有効期間 3日間
・価格 おとな23,000円 こども11,500円(東京都区内発)
・フリーエリア 千歳線以南・以西のJR北海道全線と津軽線蟹田ー中小国間

みなみ北海道フリーきっぷ

途中下車に関する制限は明記されていませんので可能なようですが、今後の確認点といえます。

「北海道全線フリーきっぷ」「みなみ北海道フリーきっぷ」の最大の注意点は、盛岡-青森間のIGRいわて銀河鉄道線・青い森鉄道線の運賃が含まれていないこと。これらの第三セクター鉄道を利用する場合は、別途運賃5,330円が必要です。つまり、寝台特急「北斗星」や「カシオペア」を利用する際には別運賃5,330円がかかります。もちろん、普通列車で東北本線を北上していっても、やはりこの区間は別運賃です。

高崎線・上越線・羽越本線・奥羽本線経由での利用は可能ですが、寝台特急「あけぼの」を利用する場合に限られます。要するに、このきっぷのみで普通列車を乗り継いで東京からフリーエリアまでたどり着くことはできません。別途運賃を払いたくなければ、往復には「東北新幹線」か「あけぼの」を使うほかありませんし、特急料金を払いたくなければIGR・青い森鉄道を使うほかないのです。いずれにしろ、別料金か別運賃を払わなければ絶対に使用できないのが、このきっぷの特徴です。

また、往復ともに鉄道を利用しなければならず、片道のみ航空会社を利用することはできません。これは周遊きっぷとの大きな違いです。

そして、利用期間が短いことも注意点。「北海道全線フリーきっぷ」が5日、「みなみ北海道フリーきっぷ」が3日です。これには往復の日程も含まれますので、たとえば「あけぼの」で札幌を目指したら、往路だけで2日分を使い切ってしまいます。「みなみ北海道版」で「あけぼの」利用なら、札幌に着いた翌朝に新幹線利用でとんぼ返りをしなければなりません。往復新幹線を使ったとしても、札幌に滞在できるのは1日だけです。ただし、継続乗車はできますので、最終日に寝台特急で北海道を離れた場合は、翌日に東京まで利用することは可能です。

「北海道全線版」は5日間の利用期間がありますので、まだ余裕があります。ただ、道央以奥の各地へは新幹線を使っても東京から丸1日かかりますので、片道飛行機の設定のないこのきっぷは、やはり使いづらいというほかありません。

お得な使いこなしを考えてみる

あえて使いこなしを考えてみましょう。たとえば、札幌など道央へ往路に「北斗星」か「カシオペア」を使い、帰りを新幹線利用、というモデル的なルートを旅するとします。

この場合の価格は、「みなみ北海道版」なら、23,000円+5,330円=28,330円になります(寝台料金などは別。以下同)。東京-札幌の往復割引運賃は29,330円(往路在来線、復路新幹線11,340円+5,330円+12,660円)ですから、札幌往復するだけで元が取れます。

しかし、このモデルですと、往路に足かけ2日、復路に丸1日かかります。「みなみ北海道版」では、有効期間が3日間しかないので、着いた翌朝に札幌を発たなければなりません。これでは使い勝手が悪いので、5日間有効の「北海道全線版」を使うことにします。

この場合の価格は「全線版+三セク運賃」の合計で35,130円となります。東京-札幌の往復割引運賃は29,330円ですから、フリー区間で5,000円分以上乗らないと元は取れません。復路で札幌-蟹田間を特急自由席特急に乗るだけでは足らず、小樽や旭川に足を伸ばしてようやく元が取れる、という程度です。

こうして検討していきますと、どうもこのきっぷは、一般的な観光客を想定して設計されたきっぷでないことがわかります。「とんぼ帰り」に近いようなあわただしい旅をしなければならない有効期間を設定しているにも関わらず、割引率はそれほど高くないのですから、鉄道に乗りまくる予定のない人が使う理由はありません。

となると、完全に鉄道ファン向けのきっぷと考えられます。朝一番の新幹線で東京を経ち、「北海道全線版」で道内の鉄道をひたすら乗り続けるなら、それなりに元が取れるといえます。

また、「北海道全線版」は、北海道フリーパス(25,500円)と値段がそれほど変わらない、というのはポイントです。北海道フリーパスは7日間有効ですが、そんな長期間は要らない、という人が、往路だけ鉄道利用して、復路は放棄してLCCで帰京する、などという使い方は有効でしょう。

いままでの「周遊きっぷ」との比較もしてみます。周遊きっぷの「北海道ゾーン」は20,000円でしたから、それに「9,800円」をプラスしたら「北海道全線フリーきっぷ」になった、と考えれば、「周遊きっぷ」の「ゆき券+ゾーン券」とそれほど価格は変わりません。復路放棄してLCCで帰っても惜しくはないかもしれません。

いっぽう、「みなみ北海道版」は、有効期間が短すぎて、あまりいい利用方法が思いつきません。前述した、札幌までの単純往復がいちばん利用価値があるかもしれません。東京-札幌は乗車券だけでも14,070円かかります。往復割引を適用したとして25,320円です。この金額を考えれば、新幹線で札幌往復して、蟹田から特急自由席を利用すれば、元が取れるきっぷといえます。

これも周遊きっぷと比較しますと、「札幌・道南ゾーン」が似た性質を持つきっぷでした。ただし、有効期間がゾーン券だけで5日間ありましたので、その点が「みなみ北海道フリーきっぷ」との大きな違いです。この期間の短さを考えれば「復路放棄」をカバーするような乗り放題はできず、復路にLCCを使う方法はお得とはいえません。

ただ、今後、北海道新幹線が新函館まで開業すれば、状況は変わる可能性があります。東京-新函館が4時間で結ばれれば、有効期間3日の「みなみ北海道版」でも、利用価値は大きくなるでしょう。そう考えると、今回のフリーきっぷで往復とも鉄道利用になっているのは、北海道新幹線開業を見据えた設定なのかもしれません。

鉄道で旅する北海道2013

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