JR西日本が、「昼間特割きっぷ」の販売を2018年9月30日で終了します。同時期に、ICOCAで割引に相当するポイントサービスを開始する予定です。同社では新幹線でも紙の割引きっぷを縮小しており、割引きっぷのネット販売やICカードへの移行が進みそうです。
35年の歴史に幕
京阪神エリアにお住まいなら、JRの「昼特きっぷ」をご存じの方は多いでしょう。正式名称は「昼間特割きっぷ」。京阪神エリアで利用できる割引きっぷで、国鉄時代の1983年に発売開始されました。
平日の日中と土休日に利用でき、おもにJR京都線、JR神戸線、JR宝塚線の57区間に設定されています。6枚1組で有効期間は3カ月。割引率は最大46.9%と格安で、1枚当たりの価格は、大阪-京都間で正規運賃より210円も安い350円、大阪-三宮間で140円安い270円となっています。
京阪神エリアで愛されてきた「昼間特割きっぷ」ですが、JR西日本は、2018年9月末で販売を終了すると発表しました。2018年12月29日で利用期間も終了し、登場から35年でその歴史に幕を閉じます。
ICOCAでポイント還元
JR西日本は、同じ2018年秋に、同社の交通系ICカード「ICOCA」でポイントサービスを開始し、ポイント還元という形で割引を行うことも明らかにしました。
ICOCAの新サービスの詳細は未発表ですが、1カ月間の利用回数、利用区間などに応じて、列車利用や買い物に利用できるポイントを付与するとしています。これまでICOCAでは、こうした還元サービスはありませんでしたが、新サービスでは通勤や通学にJR線を利用する人がポイント還元を受けられるようになります。
各社報道によりますと、ICOCAのポイントサービスで、昼間特割きっぷに相当する割引も行われるようです。一定条件下で、一定区間に乗車した場合、大幅なポイントバックをする、というような形になるのでしょう。
一言でいえば、紙の割引きっぷを廃止して、ICカードでの割引に移行するわけです。
ICOCA利用率が頭打ちに
その背景には、ICOCAの利用率が頭打ちになっているという事情があります。
「昼間特割きっぷ」は、並行私鉄に価格面で対抗するために設定された格安チケットですが、金券ショップでばら売りされるケースも多く、交通系ICカード所持者も該当時間帯は「昼間特割きっぷ」を利用したりしています。その結果、交通系ICカードが普及しても紙のきっぷの利用者が底堅く残ってしまっているわけです。
産経新聞9月7日付によりますと、「JR西管内の改札でのICカード利用率は7割程度で、JR東日本管内の9割超程度に比べて低い」とのこと。JR西日本では、改札業務効率化の視点から、ICカード利用を促すために、「昼間特割きっぷ」を廃止するようです。
新幹線でもIC移行
JR西日本では、新幹線でも紙の割引きっぷを縮小しています。2017年10月には、東海道・山陽新幹線をICOCAなど交通系ICカードで利用できる「スマートEXサービス」を開始し、利用者を対象とした割引きっぷを設定しました。
それと引き替えに、山陽エリアと東京・新横浜間に設定していた「のぞみ早特往復きっぷ」を廃止します。これも紙の割引きっぷから、ICカードへの流れといえます。
「ネット販売移行」も進む
「ICカード移行」と同時に、「ネット販売移行」も進んでいます。
JR西日本では、「スーパー早特きっぷ」というインターネット販売専用の割引きっぷを拡充していますし、JR全体としても、新たに設定される割引きっぷはインターネット販売専用が多くなっています。
新幹線に限って言えば、駅窓口で購入できる紙の割引きっぷは、少数派になりつつあるといえるかもしれません。
JRとすれば、インターネット専用販売やICカード乗車は、駅の出札・改札業務のコストを軽減できます。その見返りに、価格を割り引くというのであれば、たしかに合理性はあります。
それならば、紙のきっぷよりお得な、激安割引きっぷの設定も期待したいところです。(鎌倉淳)