東根室駅、廃止が検討される本当の理由。バス路線新設で通学利用が減少

早ければ25年春にも

日本最東端の駅である東根室駅の廃止が検討されています。新たなバス路線の開設により、おもな利用者だった高校生がバス利用に移ってしまったことが原因のようです。

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3人以上の利用者がいたが

東根室駅はJR根室線(花咲線)の末端部にあり、終点根室駅の一つ手前です。根室線が東へカーブしてから根室駅に入るという線形のため、東根室駅が日本最東端の駅とされてきました。

JR北海道の最新の資料によりますと、2019年~2023年度の駅の平均利用者は「3人~10人」を示す緑マークです。JR北海道は、乗客が1日平均3人以下の駅を廃止の検討対象としてきましたので、東根室駅はその対象外でした。

ところが、8月23日北海道新聞電子版によると、2025年春での廃止が検討されているとのこと。「利用者の増加が見込みにくい中、駅の管理や維持にかかる費用を削減する狙い」で、本当に廃止された場合、日本最東端の駅は根室駅に移ることになります。

東根室駅

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駅利用者は根室高校生

東根室駅から1.5kmの位置に、根室高校があります。そのため、駅利用者の多くは根室高校の生徒です。といっても根室駅方面からの生徒にはJRの利便性は低いので、主な利用者層は落石や厚床方面からの通学生徒です。

ところが、その落石、厚床方面からの通学で、バスの利便性が高まってきました。まず、2023年4月から、根室交通バスの厚床線(厚床~根室)が、根室市内で根室高校方面へのバスと接続を取るようになりました。

厚床線は、厚床駅を起点として根室半島北岸を走る路線なので、JR根室線とは離れています。ただ、厚床駅からの高校生は、厚床線を使うことで、根室高校の校門前まで通学できるようになりました。

以下は、その告知画像です。

厚床線、根高線
画像:根室交通

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落石線の登場

さらに大きな影響を与えたのが、同じ時期に運行を開始した、落石線という新たなバス路線です。JR根室線に沿って走るルートで、23年4月に実証運行を開始し、8月より正式運行となりました。

バス落石線はJR根室線とほぼ並行していながら、落石、昆布盛の市街地や、根室高校前の停留所を経由します。

根室交通落石線
画像:NAVITIMEより

 
JR駅は根室高校から1.5km離れていますし、落石や昆布盛の市街地からも距離があります。それに対して、バスは市街地から乗車でき、根室高校のすぐ近くで降車できます。

落石線は1日1往復のみ(水は1.5往復)ですが、通学時間にあわせて運行されています。JRは上下あわせて11本が停車しますが、通学で使える列車は下り7時台、上り16時台の実質1日1往復なので、本数は同等です。本数が同等で、停留所位置が便利であれば、通学生はバスに移るでしょう。

実際、根室市の資料で確認すると、多くの根室高校生がバスに移ったことが見て取れます。

落石線利用実績
画像:根室市地域公共交通確保対策協議会資料

落石線利用実績
画像:根室市地域公共交通確保対策協議会資料

 
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一気に利用者減少か

上述したように、東根室駅の利用者数は、2019~2023年度で「3~10人」に区分されています。ところが、別の資料で見ると、2018~2022年度は「10.8人」となっています。つまり、2023年度に利用者が激減して、「5年平均で10人以上」の枠から一気に転落したことがうかがえます。

廃止が検討されるということは、2023年度に限れば、3人以下なのでしょう。

バス路線の新設により、厚床以東の根室高校生で、通学に根室線を必要とするのは、別当賀駅付近の居住者だけになってしまいます。

ところが、その別当賀駅の利用者数は平均1名以下で、ほとんど利用されていません。おそらく、別当賀駅も、廃止検討の対象になっているのでしょう。

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バス路線充実により

2023年以降の根室高校の通学事情の変化をみてみると、通学における根室線の役割は大きく低下したようです。

JRの優位性は運賃の安さですが、根室市では市内のバス運賃を18歳以下で無料とする一方、根室高校生のJR定期券は全額補助をしています。つまり、高校生はどちらも無料です。

おそらくは、23年度以降、東根室駅の通学利用者は激減していて、それが廃止検討につながったのでしょう。実際、北海道新聞の記事でも、周辺のバス路線が充実したことによる駅利用者の減少を、廃止の理由として挙げています。

ただし、上記に掲載した根室市の資料をみると、落石線は帰宅便の利用状況が悪く、一部の生徒はJRの19時台の列車を帰宅時に利用しているようです(JRは16時台の次が19時台)。駅廃止をするのであれば、帰宅のための遅いバスの便を増発する必要が生じるかもしれません。

まだ報道ベースの話であり、実際に廃止されるのかは定かではありません。「日本最東端の駅」として知られているので、観光資源として活かせないか、と部外者は考えてしまいますが、現実には難しいのでしょうか。(鎌倉淳)

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